納骨のときである。突然、姪が母の骨が入った骨壷をわかるようにしてほしいと言い出した。「たくさんの骨壺があるから、母と父が隣りになるようにしてほしい。おばちゃんの隣りに置きたくない」というのである。すると、別の姪の旦那が「間違えないよう、壷の裏にマジックで名前を書いておけばいい」と言いだした。 蓋の裏に名前が書かれた骨壺が墓の中に入るのを確認した末姉は「なんてやさしい娘だろう」と娘の言葉に満足しているかのようだ。 姪は出産のため実家に戻った時、母を何度も訪れていた。その際、叔母からいじめられた話を聞いたようなのである。振り返れば、姪はお婆ちゃん子ではなかったはずである。その証拠に、母は姪の名前を思い出せないことが、幾度もあった。姪の行為に、パフォーマンスの香りが少しばかり漂うと考えるのは、不謹慎だろうか。 仏教では、人は亡くなると「空」に帰すると考えられている。魂は極楽浄土に向かう。残された骨は「抜け殻」になり、墓や仏壇は、あの世にいる故人と通じるための場所である。骨壺を気にするのは現世への未練につながり、仏の教えにそむくことになる。