人気の市川海老蔵は、2部の演目「壽曽我対面」で、曽我五郎に扮した。顔は父の団十郎よりも歌舞伎役者らしく、華やかなオーラを発散している。見るには、何の申し分もない。 花道の登場から、荒事の歩調でどんどんと進んでくる。見栄を切り、睨みをきかせて、荒事のお約束を進める海老蔵は、まるで怪獣のように見えてくる。十郎役の尾上菊之助の演技が自然なためか、どこかアンバランスだと感じた。28日の出来はよくなかったのか、三宝を壊すシーンでは失笑もこぼれていた。 柔軟性はないものの、理知的な団十郎の芝居とは異なり、派手さは申し分ない。ただ、ひとりの舞台ならいいのだが、多くの人が登場しての舞台だと、アンサンブルの魅力が感じられないのである。荒事だから、これでいいと割り切って見るべきなのだろうか? 歌舞伎初心者の田舎者には、よく分からない。