松方弘樹や目黒祐樹の父が近衛十四郎だ。剣戟スタートして各社で活躍したが、シベリアに抑留されて、銀幕への復帰が遅れた。1960年に東映入りし、主役となった。テレビ時代劇「素浪人月影兵庫」での品川隆二扮する焼津の半二とのユーモラスな掛け合いを覚えている人もいるかもしれない。 長男の松方弘樹も同時期に主演となり、主演作の「柳生武芸帳」シリーズで共演を果たしている。演じたのはほとんどが剣に生きる豪傑で、迫力のある立ち回りが印象に残る。松山が舞台の「忍者狩り」では、松山藩蒲生家を取り潰そうとする幕府の陰謀に立ち向かうために雇われた外様の残党のリーダーを演じている。 息子たちの顔は、どちらも父親によく似ている。近衛の趣味は釣りだったそうで、これも息子が受け継いでいる。
「十三人の刺客」で、里見浩太朗の面倒を見ている芸者おえんを演じたのは丘さとみである。大友柳太朗主演の「血と砂の血斗」では、もと武家の娘で野武士に襲われて孤独の身となり、遊女となった奈々を演じている。 高校生のときの1953年、ミス・シンデレラとなり、1955年に東映ニューフェイス2期生として芸能界入りし、「東映城のお姫様」と呼ばれている。30歳を前に、次第にふくよかになり、お姫様役を振られることは少なくなったが、愛嬌のある大きな目と笑顔はそのままであった。 「血と砂の血斗」では、二重あごが目立つが、演技に健闘。野武士に襲われる村を武士が救うという「七人の侍」に似たストーリーを、東映らしい映画にするための色を添えている。 この映画のタイトルの「砂」は、砂丘の近くに村があることが示されるものの、ストーリーで関係するわけではない。エレキギターを使った音楽や残酷描写に、マカロニウエスタンの影響が顕著なため、「血」の文字を使ったのだろうか? 娯楽映画として楽しめる一編である。