大学時代は京都に住んでいたが、大文字焼きを見たことがない。この時期は、ほとんど帰郷していて、家でゴロゴロしていた。 大文字焼きは五山送り火というのが正式な名称で、「大文字」「松ヶ崎妙法」「舟形万灯篭」「左大文字」「鳥居型松明」がそれぞれの山で午後8時頃に火がつけられ、死者の霊を送る。 こうした送り火の行事は、日本各地でも行われている。高地の四万十市では「大」の字が十代地山で焚かれ、「一條公ゆかりの火」として多くの人をあつめる。また、内子町小田では、六角山の真下に「山ノ神」の火文字が描かれ、5,000灯のオヒカリが灯される。
この時期には、盆踊りが各地で催される。中央にやぐらを組み、上で太鼓を叩いて、その周りを踊り巡る。『歳時記のコスモロジー』という本には、やぐらは雷神の和魂である太鼓の音を響かせ、その音を通じて人びとは魂の再生をはかるという。また、手拍子は、神社の拝礼と同じく、神の力や加護を願うものだそうだ。 盆踊りの代表というと阿波踊りだが、編み笠をかぶって踊る。そろいの浴衣に手甲脚絆。まるで、水戸黄門に登場する鳥追い姿のお銀のようである。鳥追いといえば、昔は下層の人びとで、家々を回って門付をし、祝儀をもらっていた。その姿に身をやつすということは、自分自身を無一物とし、何も持たない姿で神に近づくということを表すという。 つまり、盆踊りは、現世の地位や名誉をかなぐり捨て、霊場めぐりをする遍路のようになることであり、みんなで平等に、祖先への感謝と心の平安を願うことのようだ。ひと月遅れで、15日の終戦記念日がお盆であることも、何かの因縁なのかもしれない。
盆踊り生命と御霊が競演し