三ツ足山

[所在地]愛媛県宇摩郡新宮村、伊予三島市

[登山日]2000年6月17日

[参加数]3人

[概要]カガマシ山の北側に位置するピラミダルな山容が魅力的な山である。三傍示山から見るその尖峰は特に優れ、万人の登高欲をかき立てる。平成元年に「自然観察教育林」に認定されてはいるが、遊歩道や登山道は特に整備されていない。大正年間に岩城鉱業の「三足鉱山」があったと言うが詳しい記録も残っていないようである。山の北を流れる「和田小屋川」もなかなか意味深な名前ではあるが、今はほとんど無人の流域で由来を尋ねる術もない。ないないずくしの無名峰に近い寂しさだが、「三ツ足」は、「石立」あるいは「石神」を意味するアイヌ語の「ピツアシ」に由来するとも思われ、悠久の歴史を語りかけている。和田小屋川に沿って走る林道のどん詰まりから、道無き道を直登して頂上に至ると、カガマシ山から佐々連尾山に続く四国の脊梁が、まさにカムイの如く雲間に現れてくる。

[コ−スタイム]

  登山口(12:00)―頂上(13:40)

[登山手記]朝から、どしゃぶりの雨。今日は、三ツ足山から稜線を伝ってカガマシ山に至るアドベンチャ−コ−スの予定ですが、最初から気後れがしてしまいました。しかし、元気のいいK君が同行していますので、「中止!」という一声を期待しているようなH女史の目を無視して出発しました。高知自動車道を「新宮」で降り、まず「辺地床」方面に向かいます。「辺地床」は「へっとこ」と読み、昔はスコップの柄に使う木が多かったと言うことです。山中二男先生の「山と林への招待」には次のような話が伝えられています。・・「おっさん、どこへ行く?」、「へっとこ」、「何しに?」、「スコップ」。何度聞いても、へっとこスコップの繰り返しで、尋ねている人は、馬鹿にされていると思い、とうとう怒りだしたという・・。そこを過ぎ、なおも行くと、最近有名になりつつある「ブナの活き水」があります。馬立川に面したきれいな小公園でおいしい水を飲めば気分一新です。その付近に立派な橋があり材木置き場が認められるはずです。そこが登山口だ、と役場から教えられていましたので、準備して登り始めました。しかし、林道もすぐに終点で付近は雑草が生い茂り、登山道がわかりません。適当に斜面を少し強引に登ってみましたが、地図をみても東斜面はずっと急斜面が続いているようなので、道がなければ、とても登って行けそうになく、すごすごと車まで引き返してきました。仕方ないので「辺地床」まで引き返し、民家で尋ねると「登山口は、そこに間違いないが、道も不明瞭で沢を何回も渡るので山師でなければ無理だろう。」との話で諦めるしかありませんでした。再度、地図を見て、三ツ足山の北側を捲く和田小屋川沿いの林道に入り、山の西側まで行くと緩斜面が拡がりなんとか登れそうです。時間もすでに11時を過ぎているので縦走はもう無理で、せめて三ツ足山だけでも制覇しようと和田小屋川沿いをさかのぼって行きました。林道は思ったより状態が良く、快適に終点に立ち至りました。付近にあった「和田小屋」集落も「嵯峨野」集落もとっくの昔に廃村で人の気配はありません。うっとうしい雨の中、車を捨てて登山開始。12:00。あまりにも遅い出発です。林道のどん詰まりからは道らしきものも無く、適当に斜面を這い上がって行きます。地図の緩斜面とはうらはらに急な植林帯の直登の連続でアキレス腱が軋んできます。息のあがるのを何度も何度も立ち止まりながら整えつつ耐えてゆくしかありません。途中、けもの道のようなみちの痕跡が散見されますが、すぐに途絶えてしまったり、あらぬ方向に分岐していたりして、当てにはなりません。一時間あまり悪戦苦闘して、やっと小さな山上の尾根の一角に取り付きました。小さな境界標があり、もうすぐ頂上だろうと気を良くしながら進むと鬱蒼と繁る灌木帯の馬鹿尾根に突入です。帰りが不安なので、赤テ−プをしながら慎重に前進。周囲の木々の高さが低くなってくると道も明瞭になってきましたが、相変わらずまっすぐな斜面の登りで、いい加減、辟易してきました。周囲に視界がないので、余計、登りが長く感じます。「どこまで行っても切りがないじゃないか。こんなに頂上が遠いとは思わなかった。」と叫びながら座り込んでしまいましたが、そこは頂上から、わずか5,6分の場所でした。13:40、頂上着。山頂といっても灌木に覆われ、標柱も記念プレ−トも展望も何もない寂しい頂きですが、それがまた愛おしく感ぜられるのは不思議です。陰鬱なガスの中で、ゆっくりと記念撮影して、カガマシ山への縦走を夢見ながら、名残惜しく山頂を後にしました。

 少し下った木陰でチャ−ハンの昼食。雨が激しくなってきましたが、3人で楽しいひとときを持つことが出来ました。14:50、下山開始。粛々と下りながらフッと南を見ると、一面の雲間からカガマシ山が神の如く音もなく雄大な姿を現し始めました。アレヨアレヨという内に、カガマシ山から佐々連尾〜大森山に続く大稜線が毅然と聳えているのが眼前に見え、尾根を越えてゆく雲が弓なりにたわみながら静かに流れています。感動的な眺めで,しばらく3人で立ちつくしてしまいました。絶望的な雨の一日でしたが、山の神様が私たちのために、ほんの一瞬だけ山々の姿を見せてくれたようで嬉しくてたまりませんでした。そして、全ては、再びゆっくりと白いベ−ルの彼方に消えていってしまいましたが、合掌しながら、その神秘的な姿を見送りました。・・・後は、コンパスに従って、まっすぐ西に駆け下りていきます。途中から登りと違う斜面となりましたが、気にせずドンドン下っていくと、沢の音が近づき、16:00、林道に飛び出しました。そこは、車デポ手前の、道路脇にある小さな滝の傍らで、豊かな水流が和田小屋川に流れ込んでいます。次回は、絶対にカガマシ山に縦走するぞ!と誓いながら、すでに薄暗くなった林道を引き返して行きました。