[所在地]高知県長岡郡大豊町、本山町
[登山日]2001年10月13日
[参加数]4人
[概要]有名な工石山荘から奥工石山に登り、南に延びる長大な尾根を、竜王峠を経て奥白髪山まで縦走する快適な一日コースである。白髪山については昨年12月の山行記録を参考にしていただくとして、ここでは奥工石山について述べる。此の山は「喰石白山権現」と申し奉り、往古、ご神体は九寸余りの裸体の銅仏であったという。祠や石垣を寄進する者があったが神は受け入れず、いつの間にか壊れて、もとの如く素裸にて岩上に立ち尽くしていた。ある時、ご神体が、地元の放蕩息子によって伊予の商人に売られ、さらに讃岐の百姓に売りとばされたが、百姓は毎夜毎夜「久以志(くいし)に返せ、久以志に返せ」とうなされ続け、祈祷してもらったところ、工石権現のご神体と判明し、元のところに返して事なきを得たという。その後、放蕩息子は狂い死にし、伊予の商人は火事で焼け死んだということである。(土陽淵岳志、皆山集)。登山口には、写真のような立派な通夜堂やトイレが整い、今なお地元の人々の熱心な崇拝を集めている。平家伝説の山でもあり敬虔な気持ちで登山したい。
[コ−スタイム]
工石山登山口(8:00)―工石山(9:20)・・休憩・・発(10:00)―
竜王峠(11:30)―白髪山(13:50)・・昼食・・発(14:45)―
白髪山登山口(16:20)―・・林道を歩いて・・―工石山登山口(17:15)
[登山手記]ネイチャーハント指定の、「奥工石山」と「奥白髪山」の2山を結ぶ快適な縦走路が平成12年に完成したので、さっそく辿ってみることにしました。奥工石山は以前から憧れていたのですが、立川から登山口までの13kmのダーティ路を敬遠して、いままで「また今度!」の繰り返しでしたが、縦走路整備とともに、白髪山まで踏破し甲斐のある面白いコースとして「お勧め度NO1」となりました。当日は相変わらずの曇り空でしたが、闘志満々で、5時出発。大豊インターから県道「川之江大豊線」を立川まで北上し、登山口まで長い長い、町道「仁尾ヶ内線」のガタガタ道をひたすら耐えていきます。立川から登山口まで1時間は見ておいたほうが良いでしょう。路面も結構悪いので、普通車ではちょっと苦しいと思います。頑張ってください。立派な工石山荘横の鳥居のところが登山口。ちらっと山荘内を覗くと清潔で囲炉裏もあり、冷蔵庫(電源は入ってないようだけど・・)まで完備!無料で宿泊することができるそうです。キャンプを兼ねて、またゆっくりと来たいものだと思いました。維持管理されている地元の皆さんのご厚意には頭の下がる思いです。
鳥居を過ぎるとしばらくは植林帯のジグザグの登りです。息が上がりますが長くは続きません。稜線に到着すると正面に白髪山の秀麗な姿を拝むことが出来ます。あそこまで行くのかと思うとおのずと気合いが入ってきます。ここからは岩場の混じる斜面が続きますが危険というほどのものはありません。道の辺の岩間に貴重な水場もありますが、うっかりすると見過ごしてしまうほどですので注意してください。ここは縦走路の分岐点でもあります。まず工石山に向かいます。15分ほど進むと眼前に巨大な大岩が覆い被さってきました。これが権現様の鎮座する「ユルギ岩」です。右手から捲くと苦もなく祠のある岩上に立つことができます。写真は岩の上で「四国百山」のポーズを気取ってみたところですが、あまり決まっていませんね・・。昔、素裸で立っていたと言うご神体も今は見あたりません。素直に祠の中に入ってしまったのでしょうか?しかし、なんと行っても、周囲の斜面を埋め尽くす錦繍の素晴らしさは筆舌に尽くし難く、飛来する白雲の神秘さと相まって、さすがは神様の山だ!としばらくは言葉もなく立ちつくしてしまいました。さらに、ふと足元を見ると、岩の一部には素晴らしい赤鉄鉱の脈が露出していて歓声をあげてしまいました。ご神体の岩で削り取る訳にもいかず、泣く泣く観察するだけに留めました。実に残念!・・などとひとしきり遊んだあと工石山山頂に向かいます。しっかりした道を辿ること5分ほどで一等三角点のある山頂に到着。残念ながら展望もない寂しい天辺でしたが、ここを越えてさらに北へ延びる踏み跡だけが四国山脈脊梁縦走への遙かな夢を掻き立ててくれました。写真だけ撮って水場のところの分岐まで引き返しました。下りでは10名以上の登山者とすれ違い、思ったより人気のある山なんだな〜と、改めて認識しました。
分岐からは、しっかり刈り込まれた快適な縦走路が稜線上に延びています。ブナの大木が、心を大いに和ませてくれます。さすが「ネイチャーハント ガイドブック」で自負している通りで、広く切り開かれ快適そのものです。しばらくゆるやかな下りを楽しむと1292m峰への一寸した登りがあり、頂上直下で、道は二つに別れています。一つは右手に折れて頂上を捲く道。もう一つは、そのまま直登のルートです。迷わず直登を選択し、木の根を掴みつつ道無き道を這い上がると狭いピークに到着。南側は少し岩場になっていて降りれそうにないので、ピークの東側を回り込むと岩の上に出て・・・う〜ん、素晴らしい!実に素晴らしい景色が眼前に展開しました。東には、剣山系の遙かな山並みを背に、鋭い野鹿池山の双耳峰が正面に聳えたっています。手前は深い谷がどこまでも蒼く、白髪山東面の緩斜面はまるで牧場のような大らかさで冬の日に輝いています。今日一日の最高の景色に巡り会えて、しばらく無言で佇んでしまいました。・・・ここを過ぎると「竜王峠」までは下りの連続です。近そうに見えるのですが、なかなか辿り着けません。11:30。やっと林道に飛び出しました。竜王峠はゆったりとした明るい良い峠です。振り返ると、工石山の「ユルギ岩」が白く輝いているのが印象的でした。三叉路を指導標に従って右に取ると、ほどなく「白髪山登山口」に到着。「頂上まで4.2q、約2時間」と記されています。少し休んでいると、工石山で出会った10名ほどのパーティに追いつかれてしまいました。オジサンたちの顔をよく見ていると、どこかで見たことあるような?・・・そうだ、あの顔は、香川県の登山用具店「ベースキャンプ」広報誌「NOASOBI」の頂上写真でよくお目にかかるオジサンだ!・・「わしらの昼飯はいつも豚汁だよ。」と言うのを聞くに及んで「おお、それがあの有名なベーキャン鍋か!!」と心の中で叫んだのですが、ここはゆかしく「頑張って下さい!」とだけ言って先を急ぎました。
登山道に入ると、すぐ鉄塔があり、ここからはしばらくゆるやかなアップダウンの連続です。展望は、ほとんど望めないのですが、明るい自然林をゆっくりと進んでいくと、全山紅葉に彩られた、この世のものとも思われない美しい風情にこころを奪われ、疲れも吹き飛んでしまいました。あたりは過ぎゆく風の音以外、なにも聞こえません。やがて白髪山東北に延びる長い稜線に取り付くと、90゜方向転換して最終目的地まではもう一息です。ここまで来れば、のんびり行けば良いものを、H女史は「あのオジサンたちに追い越されるのはイヤだ!負けたくない!」と妙な闘争心を起こしてムキになってハイピッチで進むので、可哀想に・・初参加のT君は、最後、遂にへばってしまいました。・・ごめんネ!・・それでも頂上一帯の檜の原生林は太古の姿を残し幽玄な雰囲気で、考古学が趣味というT君も疲れながらも「すごい!すごい!」を連発しながら写真を撮りまくっていました。そして13時50分、遂に白髪山に到着。一年前と同じ感動が心に蘇ります。遙かにあの「きびす山」を俯瞰し、遠く国見山、笹ヶ峯の山並みを眺めながら、「よく頑張ったね!」とお互いの健闘を称え合いました。
ゆっくりとカップラーメンを食べていると、かのオジサンたちも到着。「お疲れさま!」・・「わしらは、行川登山口にバスが待っているから、もう少し下るだけだよ。」と言いながら足早に下って行ってしまいました。・・「いいな〜。こっちは工石山荘のところまで、また戻らなければいけないのにな〜。」とぼやいた途端に、重い気持ちとなり、ドッと溜まった疲れが押し寄せてきました。