天狗塚

[所在地]徳島県三好郡東祖谷山村

[登山日]1999.7.24(天狗塚)、25(剣山〜丸石)

[参加数]7人

[概要]剣山系表銀座コ−ス最西部に位置する名峰、天狗塚。その美しいピラミダルな山容は岳人の心を強く惹きつける。今回は昨年の宿題として、久保からの一直線、高低差1400mの自虐コ−スを選んだ。西山林道を使えば三分の一ほど短縮できるが、その達成感も三分の二となる。単調な登り一辺倒は、日帰り登山としてはもっともシンドいコ−スの一つであり、尾野益大氏も「徳島やま歩記」の中で・・「こんな所は登りに使うもんじゃない。決して下からは来るまい」と誓ったことを思い出し・・と告白している。それでもまた下から登ってくる記事を書いているのだから、やはり素晴らしいル−トと認めざるを得ない。昔から祖谷の「久保」から韮生の「久保」への幹道でもあった。東には蛇神の山「三嶺」、眼前には魔人の山「天狗塚」がそびえ立ち、村人も怯えながら、目を伏せ足早に越えて行ったことであろう。それも昔。今はヘトヘトになって登ってくるわれわれを、二つの山が優しく迎えてくれる。

[コ−スタイム]

  久保(祖谷)登山口(7:40)―西山林道(9:10)―久保分岐(11:35)―天狗塚(12:00)・・昼食・・発(13:55)―西山林道(15:10)―久保登山口(16:30)

[登山手記]昨年、三嶺からの縦走で疲れ果てて下りきった久保登山口。ここから再び登ろうというのだから文句も出て当然です。昨年参加した女性軍も、てっきり西山林道から登ると思いこんでいたので「え〜、ウソだろ〜!みんな、騙されているよ!」とわめき立てていましたが、今日は天狗塚オンリ−のピストンコ−スなので、やっぱり、一番下から思い切り、登り切ってみたい(CLだけの希望ですが)・・と非難を無視して強引に登りはじめました。登山口は久保の商店(三嶺タクシ−の看板あり)前から南に延びる舗装道を四、五百メ−トル進んだところにあります。昨年までは標識らしきものもありませんでしたが今年は「イザリ峠登り口」と書かれた小さな案内板が設置されています。登りはじめから植林の急斜面ですが長くは続きません。ほどなく田畑跡の雑草帯を抜け廃屋の脇を通過します。崩れかけた家屋と真新しい雨量計がとてもミスマッチです。水平道を進み小さな沢を横切ると本格的な山道となってきます。展望のない植林地帯のゴロゴロ道をしばらく耐えると小さな尾根に出て、折り返すように尾根沿いに緩やかな登りが続きますが、相変わらず展望は良くありません。雑談を交え、退屈を凌ぎながら進み、いい加減ウンザリする頃、やっと西山林道に飛び出しました。RV車が二、三台止まっています。「やっぱり、みんなここから登っているんだ!みんな、騙されたんだ!」と女性軍が毒づいてこちらを睨みつけるので、目が合わないように無意味に地図を拡げてやり過ごします。ここには、下とは対照的な立派な「天狗塚登山口」と書かれた標柱があるので怒りもひとしおなのでしょう。ここからも苦しい坂道がえんえんと続きます。つづら折れのジグザグではなく、ほとんどストレ−トの登山道なのでズッと先まで坂が見通せるため、よけい疲れる原因となります。歯を食いしばりながら頑張るしかありません。1476mの小ピ−クはそんな中でのオアシス的存在。自然林の中に古い指導標がひっそりとたたずみ、心が和んできます。登るにつれて木々の高さも低くなり笹原へと変わってきますが、この辺から最後の踏ん張りどころです。重い足を進めもう限界に達する頃、ふっと久保分岐に到着。11時35分でした。視界0。仕方がない、せめて頂上だけでも踏んでこようと小径を歩んでいくと、二年越しのわれわれの願いが天狗様に通じたのか一気にガスが晴れ、天狗塚の秀麗な姿が目の前に現れました。本当に感激でした!写真はその時の一瞬の表情を捉えています。そして喜びに包まれながら頂上着。ガスは多いものの展望もそこそこ得られ、特に雲湧く祖谷山脈の勇姿は印象的でした。機嫌の悪かった女性軍も遂に破顔一笑、ヤレヤレです。風に向かって立っていると本当に空を飛んでいるような錯覚に陥り、天狗になった気分を味わうことができました。帰りは「牛の背」にちょっと寄ってみましたが、風が強く、ガイドに記されている池も干上がっており、すぐ引き返し、久保分岐にてうどんの昼食。天気は急速に悪化し雨も降りだしたためあわてて下山にかかりました。昨年と同様、最後はかなり足にこたえましたが、完登を喜び合いながら、無事16時30分、久保に還ってきました。お店で値千金のアイスクリ−ムを堪能。「さあ、さあ、焼き肉だ!」と騒ぎながら、一路「大塚製薬つるぎ山荘」へと向かいました。

 

剣山〜丸石〜奥祖谷かずら橋

[概要]剣山ハイキングで人気のある半日コ−ス。剣山、次郎笈で引き返すハイカ−が最も多いが、丸石まで足を運んで裏次郎の勇姿をじっくりと観察するのも一興だろう。途中には剣山系随一の名水「次郎笈の水場」がある。「名水百選」番外ではあるが、味は「剣山の御神水」を凌駕するとも言われる。周囲に咲き誇る高山植物がさらに彩りを添えている。丸石は笹山で展望に優れ、昨日登った天狗塚も顔を覗かせている。ここから丸石避難小屋までは快適な原生林の尾根歩き。何度歩いても飽きるということのない素晴らしい縦走路である。小屋の先から「奥祖谷かずら橋」に下る。心の準備がない限り「三嶺」方面に行ってはならない。かずら橋まで、国体で整備され迷うこともなく快適だが、緩慢なジグザグ道は退屈である。

[コ−スタイム]

 ロ−プウェイ駅(8:30)―剣山(9:30)―次郎笈(10:40)―丸石(12:00)―丸石避難小屋(12:45)・・昼食・・発(13:30)―奥祖谷かずら橋(15:30)

[登山手記]快適な宿で食いまくって騒ぎまくってバク眠。25日は幸せな気分でゆっくりと起床しておいしい朝食をいただく。お天気も良く、朝雲流れる「三嶺」の姿は涙が出るほど感動的。今日は剣山〜次郎笈〜丸石と歩く予定ですが、軟弱にもリフトにて西島へ。もうほとんど観光客気分です。「雲海荘」からは遠く瀬戸大橋(坂出ル−ト)が綺麗に見えました。次郎笈まではお決まりのハイキングコ−ス。次郎笈からス−パ−林道分岐までは結構急な下り。分岐からは笹原の路となり、以外にあっさりと丸石到着。いつ来てもガスのみの寂しさでしたが、今日は剣山から次郎笈、三嶺、天狗塚まで見通せて、とても良い山だな、と初めて思いました。頂上の北側には昔の避難小屋の残骸が残っています。今も2万5千分図には小屋のマ−クが記されたままになっていますので注意が必要です。現在の「丸石避難小屋」までは30分ほど尾根を伝って行かなければなりませんが、ちょっぴり三嶺縦走の気分が味わえ、とても楽しいル−トです。小屋はひっそりと無人でした。外で昼食を・・と見回すと、なんと小屋の周りは”ウンコ”だらけ。まあ、仕方の無いことでしょうが縦走路上にするのはやめてほしいですよネ。少し進んで、奥祖谷かずら橋への分岐でやきそばの昼食。おいしく楽しいひとときを過ごしました。4年前、台風の中を足の爪を割りながら粛々とここを通り過ぎたことや、2年前、子供達と三嶺方面に逆縦走したことが懐かしく思い出されます。この道標はあのときを覚えているだろうか・・とふと感傷的になってしまいました。しばらく語らいの後、道標に従って北斜面を下っていきます。路は国体で整備され、まったく問題ありませんが、冗長なジグザグはかえって疲労を増長してしまいます。沢に下りきって立派な吊り橋風の「国体橋」を渡り、沢沿いに水平路をなおも30分程度進んで、遂に終点「奥祖谷かずら橋」に到着。登山の終わりを「かずら橋」で締めくくる。おまけに山からの下山者はタダのようで最高でした。橋は男橋(昭和59年復元)と女橋(昭和45年復元)の二重橋で高度感もあり結構スリルがあります。善徳のように横に艶消しのコンクリ−ト橋もなく、一方通行だ、止まるな、などうるさい放送も聞こえず、”秘境祖谷”の面目をまだ保っていることを嬉しく思いながら名残惜しく渡り切りました。