石鎚山

[所在地]愛媛県西条市

[登山日]1999.10.23

[参加数]3人

[概要]我々の象徴の山「石鎚」。西日本最高峰にして日本七霊山の一つで、まさに霊峰の名に相応しい。役の行者を開祖に戴き、寂仙、上仙、光定大師(日本文徳天皇実録、日本霊異記)、弘法大師(三教指帰)などそうそうたる高僧の当山修行が実際に古典に記されているのは大きな誇りである。今は無き成就社本殿(明治22年焼失。再建されるも再度、昭和55年焼失)は豊臣秀頼公寄進の素晴らしいものであったという。そして4ヶ所の鉄鎖を手繰って頂上に登ることを許される者は、水垢離と禁欲など厳しい戒律をクリアした敬虔な信者だけであったが、それもほとんど過去のものとなりつつある。今、頂上は造景岩を用いた岩体安定工事の真っ最中。小型パワ−ショベルが人混みの中を動き回り、黒靴にネクタイ姿の添乗員に先導された登山者が次から次へと押し寄せ、足の踏み場もない。これも時代の流れか?石鎚大神もさぞ呆れ返っていることであろうが、それでも寛大な神は、登ってくる者の願いはすべて聞き入れてくださることになっている。

[コ−スタイム]

 成就社(9:00)―試し鎖(10:20)―弥山頂上(12:00)―天狗岳(12:30)―

  弥山(13:00)・・昼食・・発(13:30)―成就社(15:30)

[登山手記]毎年、一度は実行している石鎚登山。病院に来られる先生(若い先生は1,2年で転勤してゆきます)のための、思い出作りの番外山行なのでHPには記載していませんでしたが、今年は、特別な収穫がありましたので興味ある方のために項目を設けました。その収穫とは「水晶」です。三角点のある1921m峰に突き上げる尾根を「水晶尾根」と言い、「愛媛体育史」の明治24年の項に「石鎚神社参拝の思い出(池内団左氏)」と題して「・・今井先達は今日は上天気だといって、これ(成就社)から上の路上には水晶の露出があるから気を付けて拾いなさいと教えてくれました。私も二〜三個見付けて登山記念に拾いました。・・」とあり、かなり昔から知られていることがわかります。さらに愛媛県地質図を調べると、成就社付近は第三紀層の礫岩、八丁坂より上は安山岩で、八丁坂に凝灰岩の狭い層が横切っています。この凝灰岩こそが、いわゆる天狗岳火砕流の遺残物で水晶の結晶を包埋しているのです。いつもは足早に下ってしまう八丁坂を、今日は足下に注意しながらゆっくりと歩いてゆきます。そして、なんと登山道上の石に、小さな水晶の晶洞があるのを発見しました。上の写真の鳥居がヒントです。この辺りをお探しください。晶洞にはギッシリと小さな水晶が充満しているのですが堅くて簡単には取り出せません。仕方なくヴィクトリノックスのコルク栓抜き部分で剥ぎ取りましたが、栓抜きはもう使いものにならなくなってしまいました。そんなことをしなくても注意深く路上を観察するとキラキラ光る六角柱の小さな結晶があちこちに散乱しています。

時間の過ぎるのも忘れて、しばらくは水晶拾いに熱中してしまいました。他の登山者が怪訝そうな顔つきで通り過ぎて行きましたが、なかには「水晶でしょう!」とご存じの方もおられました。後で知ったことですが地元の小中学校では自然学習として、ここに水晶を拾いに来ることもあるそうで、いままで知らなかった我々の方が不勉強なのかもしれません。しかし、自分で拾った鉱物は、やはり何者にも代えがたい宝物です。水晶などはデパ−トや土産物屋(近くは、新居浜の愛媛県総合科学博物館やマイントピア別子の売店)などでも、かなり立派なものが何百円単位で売られていますが、石鎚山の水晶は、やはり石鎚山だけのものであって、土産物の水晶とは本質的に違うと思います。一生、大事にしてゆきたいお守りだと思います。登山道を離れても晶洞は続いています。薮の中を探せばもっと美しい大きな結晶が手に入るかもしれません・・。しかし、欲の出しすぎは却って災いを招きかねませんので、ほどほどに切り上げて登山を続けることにしました。

 さて、八丁坂から試し鎖までは急登の連続です。木の階段が整備され、マイペ−スで進んで順調に試し鎖着。このあたりの岩質はすでに安山岩で、これより上で水晶を期待することは、もうできません。登山に神経を集中します。私はここで登山靴から地下足袋に履き替えました。堅い登山靴は、鎖のわっかの中に足先を入れることができないので(特に三の鎖)腕力に頼らなければならなくなるからです。(以前、登山靴で登って、後で腕が抜けそうに痛んで懲りましたので・・スニ−カ−やキャラバン系の軽登山靴は特に問題ありません)少々足裏が痛いですが、さすがに快適に登攀できます。鎖を登り切ると、そこは前社ヶ森の岩峯の上で、三十六王子が祀られています。紅葉の山腹はさすがに見事でお互い記念撮影してゆきました。下りの鎖はちょっと注意が必要。滑らないように慎重に下りましょう。下れば小屋の横に飛び出します。力あめ湯が飲みたかったのですが、あいにく閉まっていて残念でした。ワンピッチで夜明かし峠。石鎚山頂が姿を現しましたがガスをかぶり気味です。一の鎖はなんなくクリア。二の鎖手前で土小屋ル−トと合流すると一気に人の数が増えます。しかし、二の鎖で渋滞ができるほどではなく、順調に二の鎖に取り付きました。しかし、前に慣れない人が居るとなかなか進みません。「早く登れよ〜。」とは思いますが、石鎚大神も見ているので、ここは我慢、我慢。仲間の、鎖にへばりついている写真など撮りながら余裕のあるところを見せます?(こんな、ちょっと鎖に慣れた頃が一番、危険なのでしょうネ。兼好法師の「木登りの教訓」のように気の緩みは事故に繋がるので決して鎖も侮れません)反省しながら登り切って、三の鎖着。少々手足を休めて攀じ登りはじめましたが、さすがに70m余りの直登はキツく、喘ぎながらやっと弥山に到着。なんと、勿体なくも神殿まで休憩する登山者で埋まっていました。ゆっくりとお参りしてから、人をかき分けかき分け天狗岳に向かい、12:30無事、天狗岳に到着。あいにくのガスで視界は得られませんでしたが、記念撮影のあと足早に弥山に引き返してラ−メンの昼食。しかし、次から次へと押し寄せる登山者で、もう唖然です。山で「人酔い」してしまったのは、これが初めてです。本当に最近の中高年登山ブ−ムのすさまじさを目の当たりにすることができました。(まあ、私もその一人なので、大きなことは言えませんが・・)休憩もそこそこで、うんざりしながら下山開始。夜明かし峠くらいからは、ふたたび静寂の世界が戻って、ホッとすると同時に、山頂もガスの彼方に隠れてしまい、今までの喧噪が夢の中のように感じました。あとは、のんびりとロ−プウェイまで下山してゆきましたが、「水晶」を得た歓びもあって、今年も石鎚に登ってよかったな〜、としみじみと幸せを感じることができました。・・・本当にお調子者ですネ!(この一文は、他の会員が付け加えました!)