TECH CHIPS 

ちょっとテックなマル得情報コーナーです。

mailto:marukawa@shikoku.ne.jp

ON ANY SUNDAY IN AMAMI ISLAND 1989

PART1手でかかる(?)ビッグシングルの始動法

  (これは必見!誇り高きXR600のオーナー達に捧ぐ。)


最近のオフときたら、皆どれもセル付きときてる。これがないと売れないらしい。
おかげで肝心のキックさえロクに出来ない、それこそウイスキーの入っていないハイボールのような薄口オフローダーが近頃、随分増えてきたような気がする。
嗚呼、この軟弱・・・度が過ぎた便利はやはり、ひとを堕落させる。実に嘆かわしいことである。一方、かような世の風潮に昂然と背を向け、ハードコアな選択を遂行したXR600オーナーの貴方は、セル付きなんぞには目もくれず、ひたすら今日も愛車の手入れに余念がないことだろう。そして貴方は想う。「車検がなんだ、リヤタイヤの減りの早さがなんだ、このXR600のコンチネンタルなライディングフィールをひとたび味わったなら、浮き世の大抵の憂さなど吹っ飛んでしまうし、まったくコイツときたら、アクセルの一捻りで地球が逆回転するくらいなんだぜ!」
そうです!600だと日本のフィールドには合わないとか、レースで好結果を残せないとか、そんなことを嘆いてはいかんのです。ましてや2ストのニーゴーにあっさり抜かれたくらいで気落ちしてはならんのだしたまゆらの、そんなちっぽけな敗北なんぞ気にしちゃいけません。速い、遅いなんて単なる相対でしかないのです。それよりも、このマシンが与えてくれる豪快無比と圧倒的なそのパワー、その信頼、空冷RFVCが醸し出す、えも知れぬ陶酔の低中速ビッグトルク、そのアンビリーバブル、そのハードボイルド、無駄を排し熟成を極めた末に到達しえた、その精緻。言い方を換えれば、それはまるで 草原に放たれた獅子のように猛々しく、反面、ボルドーのワインのように深く、芳醇で繊細な味わいだ・・・。この辺が何よりも、たまらんはずです。そうですよね!?
う〜ん、さすが貴方は溢れるほどの感性豊かなおひとで、違いがわかるラマンチャの男じゃなくて、「XR600の男」だ。そうこなくちゃあいけない!
さて、そんな貴方も時として、600のキックにてこずってしまう事が、結構あるかもしれない。そして、ちょっと気弱になったりするかもしれない。「やはりセル付きが良かったかナァ」それだけは言っちゃイケマセン!しょうがない!それでは、ここらへんで私がスーパーテクニックを披露し、貴方をホンマもんの「XR600のオ・ト・コ!」にしてさしあげましょう。日増しに募る甘い誘惑を、貴方はこれで完全に断ち切れるはずだ!?

ちなみに、このテックは、手動デコンプ付きのシングルモデルすべてに適用可能である
DRILL
1:デコンプレバーを握ったままクランキング(空キック)を5、6回やる。冷寒時はチョークを忘れないこと。
2:デコンプレバーを離したまま再び軽くクランキング。すると圧縮行程でキックが降りなくなるから一端キックアームを上に戻す。
3:ここからが肝心。デコンプレバーを遊びの引きしろを除いて、約5MM程引いたまま、(引きすぎるとダメ)「霜が降りるが如く」キックアームをゆっくり降ろしていく。するとエンジンの右の排気バルブ側のプッシュアームに、排気のカム山が当たる感触がデコンプレバーにコクンと伝わってくる。と同時にキックアームを止める。
4:この時点でクランク角度(ピストン位置)は、排気工程の下死点後22度付近にあり(注:参照)排気バルブは約5mm程開いた状態になっている。デコンプレバーを離しもう一度キックアームを上に戻す。
5:キックアームを軽く最後まで踏み込む。(この最後までというところが肝心!)

なんてことはない。これでエンジンは実に簡単に始動する。
もう貴方は今までのように始動の際に、ステップの上に仁王立ちになったり、力まかせの連続キックで脚を痛めることもなくなるだろう。シートに座ったままの体勢でも充分いける。「林道ツーリングで再始動にてこずり、仲間達から置いてけぼりをくらった、あの頃が懐かしいナァ」なんてしみじみと思える日は近い。このテックが完全に身についてくると、あまりのイージ−さにやがて遊心雲のごとく沸き起こり、「手でもかかるんじゃないか?」という気がしてくる。私は決してお勧めしませんが、私を含め(あくまでもノーマル)エンジンで運良くこれをやってのけたチャレンジャー(単なるお調子者)が数人生存しております。まあ、これはなんといいましょうか、つまり人間というものは情熱と理知の力によって、不可能を可能にしようとする、偉大な生き物であるということのサンプルとでもいえましょうか・・・。ま、そんな訳で、どうです?あなたも一丁、やってみますか?ナニ?、やってみる!?と、と、とにかく、貴殿の成功を祈る。南無阿弥陀佛。
P.S.
このテックは私がひょんな事から編み出したものの、非常に有効である。もう目からウロコが落ちる。とにかく、マスターしたら自分だけの裏ワザにしないで、お友達にもどんどん教えてあげましょう。そしてみんなで、幸せになりましょう!

(注)XR600の排気側カムのプロフィールははOPENがBDC(下死点前)45°CLOSE側がTDC(上死点後)5°であるから、公式によってバルブの最大リフト時であるロブセンターは 上死点前110°に規定される。したがってここからXR600の最大バルブリフト量=8,5MMをもとに割り出すと、デコンプレバーを5MM引いた時点で(=バルブのリフト量も5MMとして)右排気側のカム山がデコンプのプッシュアームに接触した時のピストン位置は、あくまでも概算ではあるが下死点後の約22°前後にあると算出できる。


PART 2   我慢強いYZ400/WR400のオーナーに捧げる

yz400f1.jpg (89884 バイト)

先日,国産初の4ストロークMXER、YZ400’98を試乗して、非常に驚いたことが二つあった。ひとつは、とにかく「よく走る」こと。特に低中速のツキの良さには驚いた。
これは400というより、いわば500のそれに近い。例えるなら、あの、名車「XR500」か。高回転のほうも申し分なく、125の2ストロークのMXマシンさえ、たじろぐほどである。かくして、試乗前に私が抱いていた稚拙な予想は、根底からことごとく覆され、
まさに、木っ端微塵、春の空の藻屑と消えた。私は這々のていでマシンから降り、へなへなとその場に座り込んだ。そしてしばらくの間、脳梗塞の発作に見舞われた老人のような、放心と虚脱と、恍惚状態に陥った。人は真に驚愕したり、感動したりすると、かくのごとき甘美なる、脳ホルモンの分泌をタダで享受できるのだ。人生捨てたもんじゃないナ。
海外のオフ誌によると、このYZ400は、あのデーモンヒル操る、ティレルヤマハの
F1マシンに搭載された、5バルブエンジンをそのままベースにしているということである。そのためか、この二つのエンジンはボアストローク比が同一で、Shiohara san(原文のまま)をプロジェクトリーダーとする、F1のエンジニア達がこのニューエンジンの開発に深く関わり、大きな役割を果たした、とも記されていた。
しかもシャシーを含めたプロジェクトの全完了期間が、なんと僅か6ヶ月であったというから凄まじい。これは、三度の飯を二度に減らしても、なかなか出来ることではない。
天からの声を聞いた仕掛け人が、一体誰であるか、私には知る由もないが、とにかく、ヤマハ恐るべし!である。

                    TECH CHIP PART 3
どこにも書かれていないサスペンションの話 その1                

アクセルを開けるとリヤサスは、どういった動きをするのか、ご存知でしょうか?
伸びようとするのか、それとも縮もうとするか。伸びようとする?ザッツライトである。
では、「何故、伸びようとするのか?」初めにこの疑問を抱いてから、私はもうかれこれ20年以上も、問題の解決を放棄してきた。しかし何の心境の変化か自分でもわからないが、Y2Kの年が明けてこの3日3晩考えに考え抜いた結果、積年の謎は徐々に氷解を始め、それがここでなんとか説明可能な域に達したようなので、以下、疑問反論、多々あるかもしれないけどもしばらくお付き合いをして下さい。(とはいっても、真実は誰にも否定できないのですぞ!)アクセルを開けると、リヤサスが伸びる・・・何故か?それは、フロントのドライブスプロケットに掛かったトルクがリヤスプロケットを介して、アクスルシャフトに対し、下方向に働くためであります。別の言い方をするとチェーンがリヤスプロケットを下方向に押さえつけようとする訳である。これとは逆にアクセルを閉じた場合は、ドライブスプロケット掛かったエンジンブレーキのトルクによって、リヤスプロケットは上方向に押し上げられる為、リヤサスには縮む方向に力が掛かる。(リヤサスに掛かる力の量は、アクセルの開閉の度合いと、使用するミッションのギヤ位置で変化する)
力学的に言えば、フロントスプロケットのチェーンを介した力点の位置と、リヤスプロケットの作用点の高さ位置が、スイングアームビポット部の支点位置に対し異なる分、斜め前、
下方向のベクトルが発生するという訳だ。これはまったく現実的な話ではないけれども、
仮にフロントのドライブ側に、チェーンラインがスイングアームと平行になるくらい、
巨大なヤツを取り付ければ、リヤスプロケットには、アクスルシャフトを中心軸とした回転方向以外の力が発生しなくなり、リヤサスも純粋に、路面の変化に追従した、本来の働きができるようになるはずである。さて、ここらで急遽、結論。上記に述べた理由で、

「アクセルの開閉は、リヤサスの本来の働きを著しく妨げる」

この点をよく頭に入れて、実際の走りにおいて活用して欲しいのであります。
ギャップの通過時に、ただ「定説」のようにやたらアクセルを開けるだけでは、ちょっと芸がなさすぎる。路面の状況によってはパーシャル状態でやり過ごすか、一速高めのギヤで走る、あるいはクラッチを一瞬切る事だって非常に有効になってくる場合があるはずです。
正であれ負の力であれ、駆動トルクを掛けない時が、リヤサスは最も作動性がいいということになる。また、こういった特性を逆に利用して、ジャンプの着地前にスロットルを開け、リヤサスを伸びる方向に持っていけば、ボトム防止に役立つはずだ。まあ、これはMXをやっている人でなくても、皆よくやってることで、常識だよといわれるかもしれないけど、その理論的な部分がしっかり認識出来ているがどうかで、後々随分と走りも違ってくると思うのだ。話は少し変わるけれども、確か渡辺 明さんが、かのベストテク講座で、後輪が尖ったコブを通過するときにはアクセルを閉じなさいと言っていた。その理由もはじめに述べたセオリーで説明がつきそうだ。つまり、アクセルを開けたままの通過だと、リヤサスは伸びる方向に突っ張ったまま、コブをまともに拾ってしまう事になり、彼の言を借りれば
「前転宙返りモーメント」(?)を発生してしまうからであります。確かに、このアクセルを開けたときのトルクは想像以上に強大で、ジャンプの最中で開け方を間違えれば、ライダーもろともマシンを竿立ちにしてしまう程である。だからリヤサスが、圧側方向に動かなくなるのも無理ない話だ。もう、ホント、ガチガチになるんである。

ところで。
悲しいかな、私もそろそろ、オフロードライダーのなかでは「高齢」の部類に属してきた。
相棒とペアを組むと、歳の数が危うく三桁に達しそうである。今までどうりの、体力と感性の走りだけでは、生きのいい若いモンにはとても歯が立たない。ここらでひとつ、顔だけじゃなくて、前頭葉のシワの方も、も少し増やして、走りをまじめに考えていこうと思っている。ひょっとしたら、まだ付け入る隙があるかもしれない・・・・。
そんな訳で、Y2Kの私のモットーは、「THINK ALWAYS WHEN RIDING!」である。

  TECH CHIPS PART 4  

何処にも書いていないサスペンションの話 その2 

サスエア抜き.jpg (63971 バイト)
専用バルブを取り付け後、エア抜き作業中のリヤショック。バルブの取り付け後、シリンダー内のエアーを上部タンクに100%導いてやる。実は新品のサスでもエアの粒子(直径10分の1ミリ程)が噛みこんでいるケースが非常に多いのだ。走行中にシリンダーが過熱されると、このエアー粒子が膨張し、ダンピング性能を著しく低下させてしまう。俗に言うレース中のヘタリがこれである。マルカワレーシングでは完璧なエア抜きの為に多くの時間をかける。

ライダーウェイトとスプリングレートの親密で摩訶不思議な関係

サスペンションセッティングの第一段階は、ライダーの体重にスプリングのバネレートが合っているかをチェックすることである。体重が60KGのライダーと100KGのライダーが同じレートのスプリングのマシンで済むはずがない。どちらかがより多くの不利を背負うことになるか、または両者とも不利のままかのどちらかである。
先ずはマシンの挙動の大半を支配するリヤショックのバネレートとウェイトとの相性チェックから。以下、ホイルトラベルが280MM〜300MM、車重120kg〜130kgのマシンと仮定してのチェック例:

.車体をジャッキアップして後輪を浮かせる。

.リヤのアクスルシャフトの中心点(A)とスウィングアームのピポット部を中心軸にした想定の円周線がリヤフェンダーか、もしくはサイドカバーに接する個所(B)にマジック等で印を付ける。

.メジャーで(A)と(B)の長さを測定した後、ジャッキをはずす。

.レース時の装備(ヘルメット,ブーツなど)で車体にまたがり、直立の状態で助手に支えてもらい「SITTING SAG」もしくは「RACE SAG」のどちらかで全ウェイトを車体にかける。

この状態のまま、上の3.で行った(A)と(B)の長さを再度計測する。

5で計測した長さが3の数値より95〜100MM少なくなるように、マイナスの貫通ドライバーを使ってスプリングアジャスターのテンション位置を調整する。(SAG=95〜100MM)

7.これでSAGの設定完了ということになる。ここまでは従来のSAG設定の方法と同じであ。   問題はこれからである。  

8.今度はマシンに跨らないで、マシン自体の1G状態で、(A)と(B)の長さを計測する。

9.3.で計った数値と8.との差が重要な目安として、25MM以下(注1)であればライダーのウェイトに対して装着    されてるスプリングが「軟すぎる」ということになる。逆に40MM(注2)を越える場合は「硬すぎる」のである。但しMXマシンの場合、車重90kg〜100kgと軽量の為、15MM(注1)〜30MM(注2)の範囲に移行する)
バネレートがウェイトに対して軟らかすぎる場合はSAGを取った後の1Gでは突っ張った状態になり硬すぎる場合は1Gでガクンとリヤが下がった状態になる。

まるで正反対のことを言ってるようだけども断じてそうではありません。
理由はつまりこういうことである。  コイルスプリングのバネの強さ、レートは通常、25MM以上の初期荷重(プリロード)がかかった状態からそのバネの設定された張力が発揮されるようになっている。それ以下ではスプリングは設定よりもかなりソフトでなのである。特にプリロードゼロから5MMあたりは2〜3割以上も下回る程である。だから仮にスプリングが硬すぎる場合で説明すると、SAGの調整時にこの超ソフトなプリロード部分まで
しか締めこめなくなるから、スプリングはこの初期の部分にかかるマシン自体の1Gの状態では必要以上に縮みこんでしまい、結果として大きなサギングが発生してしまう訳である。逆にスプリングがソフトすぎる場合はプリロードの掛け過ぎで、これと反対のことが起こる。どうでしょう、皆さん、これを読んだら、これからはもう「自分のスプリングはどうも硬すぎるようだ・・・」などとファジーな認識に甘んじていてはいけません。メジャー片手に今すぐ愛車の傍に駆けつけなさい。そしてこの1Gのサグを確かめるんです。通りすがりの誰かが貴方のその真摯な眼差しに心打たれ、手を差し伸べてくれるかもしれない。
私の場合は体重が60KGあまりで、愛車XR600で以前、SAGを100MMで設定したところ、なんとこの1GのSAGが50MM以上もあった。ノーマルのレートが実際の測定値で10,5KG/MMであったから迷わず9,5KGのEIBACHに交換してSAGの取り直しを行った。すると1Gのサグは35MMまで回復した。それから早速、私設の コースに乗り入れたわけだが、その時の驚きといったらなかった。リヤショックの作動性ばかりでなく、フロントのステアリング特性までが以前とはうって変わって大幅に改善されていたのである。やはり二輪車というものはリヤが決まらないと始まらない。現在はそれに加えてダンパーの内部変更を施しているから鬼に金棒、サスにリバルビングでほぼ完璧といっていい状態である。
  (リバルビングの劇的変化についてはこの行をクリックして下さい)

スプリングレートがウェイトに合ってくると、これだけでもかなりそのマシンが有するホイルトラベルを有効に使うことが出来るようになってくるから、あわよくば目からウロコ状態か、それに近い世界が出現してくることもあるのである。ベストな状態にセッティングされたサスペンションというものは、一見、柔らかすぎるのではと思えるほどしなやかで、かつコシがあり大きな動きをみせる。スコットサマーズのXR600がまさにこれであった。 ハードな走り、イコールハードなスプリングでは決してないのである。パーフェクトワールドへの道のりは長く険しい。多くの労苦と辛酸、ときには涙さえ伴うものである。しかし、もし貴方が少年のような無垢の好奇と探求の心を持って取り組めば、歓喜のその日の到来はさほど遠くないのである。オフを愛し、走りの向上を望むものにとって、このサスペンションのセッティングというもんに、いくら時間を費やしても決して無駄にはならないのです。皆さんも是非トライしてみては如何だろう。いつまでもイノセントではいけません。

追記:
MXやエンデューロライダーで全国的にもハイレベルで好成績を収めている選手達に、この1Gサグの話をすると、皆さん一同に、はじめは首をかしげる事しきりである。がしばらくして彼らの大脳中枢に閃光が炸裂した途端、驚嘆の表情を浮かべ、次に勢いよく両手をパンと打ち鳴らし、「あー、こりゃあいい事を聞いた!」と満面の笑みでおっしゃるのである。やはり知らずに走ってたのか・・・・。天性というものは往々にして理論を超越し、ものともしない。恐ろしいことである。  

 

何処にも書いていないサスペンションの話 その3 

これが正しいSAGの取り方です! 

 もし貴方がエンデューロやMXレースで、全コースをシートに座ったままで、一度もスタンディングポジションをとらない、新しいライディングスタイルのライダーでないならば
(笑)、リヤサスのサグを設定する時、是非とも以下の方法をお奨めします。

1.車体をジャッキアップして後輪を浮かせる。

2.リヤのアクスルシャフトの中心点(A)とスウィングアームのピポット部を中心軸にした想定の円周線がリヤフェンダーと接する個所(B)にマジック等で印を付ける。

3.メジャーで(A)と(B)の長さを測定した後、ジャッキをはずす。

4.レース時の装備(ヘルメット,ブーツなど)で車体にまたがり、倒れないように助手に支えてもらいながらバランスをとり車体を直立させる。

5.さてここからである。シートに跨ったまま沈み込み後のメジャリングをしたら
アウトである。座ってしまってはいけないのだ。立つのである。ハンドルを軽く握り、リヤサスを数回ストロークさせたあと、ステップに全体重をかけたスタンディングポジションを取り、メジャリングをするのです。アメリカンの間では、もうかなり以前から、このやり方を「RACE SAG」と呼び、アウトドアやSXのSAGセティングの常識になっているのだ。
シートにGを架けたままでサグを測っているライダーは、先ずひとりもいないと言っていい。我が国に蔓延している従来のやり方は、「SITTING SAG」、もしくは「TOURING SAG」と呼ばれ、MXレース用のセッティング方法とは完全に区別されているのである。
私もMX的な走りをする時や、ギャップの多いエンデューロコースでは「RACE SAG」でセットしている。この方が断然走りやすくて、疲れない。シッティングサグを基本にセットしてしまうと、スタンディング時にプリロードが架かりすぎて具合が悪い。考えてみれば、座っても走れるような路面では多少SAGが大きくなって、ソフト気味になっても支障がない訳である。それよりもスタンディングポジションを取らなければ、クリアー出来ない路面状況にSAGを合わせた方が賢明というもんだ。ちなみに、このSITTINGとSTANDINGでは6mmから7mm位の差である。大した違いはないと思うかもしれないが、このあたりから丁度リンクのレバー比が強く立ち上がってくるので、リヤサスの挙動に及ぼす影響は軽視できない。
また、フロントのSAG設定に関しても、リヤと同様にスタンディング時での沈み込み量をもとにして、スプリングのプリロード設定をやる訳であるが、これら前後のセッティングがきっちり決まれば効果は絶大、ヘルメットの中で喜色満面のパーフェクトワールドに到達できるのである。アメリカンは大陸的で大雑把なイメージが強いが、速く走ることにかけては別のようである。彼らは何よりも理論的なことが大好きで、研究熱心であり、合理主義に徹している。サスペンション関係のアフターマーケットのパーツを見てもその傾向は一目瞭然。アメリカのマーケットには、プライベーターからプロフェッショラルまでの幅広い要求に応えるために、フロントフォークのスプリングレートは0,01KG刻み、リヤショックにかけては0,2KGのレートで何種類もの選択肢が提供されているのだ。ライダーからの要求、需要があるから供給があるのだ。それに比べ我が国ではどうだろう?
かろうじてソフトとハードの2種類がメーカーから用意されているだけである。(あとは努力と根性でカバーしなさい?)そして4分の1世紀近く、この状況は不動のままだ。勉強不足でライダーが要求しないからか?メーカー側のビジネス上の理由からか?おそらくその両方だろう・・・・・。私のような素人ライダーが言うことではないだろうけど、どうやらこの辺りの底辺の部分での環境の違いが、最終的にアメリカンと日本人ライダーのスキルレベルの差が生じる遠因のひとつになっているのではないかと思ってしまうのだ。 
閑話休題。
さて、話がつまらん方向に逸れてきたから、ここらで結論!
林道ツーリングは「SITTING SAG」に、MX、エンデューロでは「RACE SAG」にこだわれ!

TECH CHIP その5

HOT-STARTER.jpg (19253 バイト)

ホットスターターの怪・その原理

「当社で販売している”HOT STARTER KIT”に対してよくある質問にお答えして」
4サイクルのシングルエンジンは特にヒート時の再始動が困難になる場合がよくある。
冷間時や通常のエンジン温度では、始動に何の問題もなかったマシンが急に黙りこくって
しまうのだ。(この傾向は排気量が大きくなればより顕著になる)
これはマニフォールドやポート内部に露状に付着したガソリンが原因で、エンジンの加熱によって過度な気化を起こし、あたかもチョークを効かしたような状態になってしまうからである。これではかからないのは当然だ。こんな場合は、ノーマルキャブであれば、とりあえずアクセル全開で何十回かキックを行えば、運良く目覚めてくれる事もあるが、激しい体力の消耗はまぬがれない。これがまたFCRキャブだとこの方法も逆効果になってしまう。
アクセルを開けると加速ポンプが作動する為、さらにガスが送り込まれ、益々始動困難となる。人里離れた林道でこんなことになったら道端にひっくり返って、エンジンが冷えるまで
しばらく空でも眺めてやり過ごすか、それとも小川の水を汲んできて、シリンダーヘッドめがけ何度もブチ撒けるしか他に手立てがない。
しかし、「ホットスターターキット」を装着していればこんなピンチに見舞われることは皆無である。このデバイスは、マニフォールド部に取り付けられた内径3mm程のプラグ穴からホースを介して、適量な新気を送り込むことで、カブリ気味になったエンジンの始動性を飛躍的に向上させるというものだ。アクセルの微妙な操作も必要ない。スターターをONにし、キックをするだけで速やかな再始動が可能だ。その他のケースでは、転倒時にも、ポートやシリンダー内部へオーバーフローしたガスが流れ込み、やはりフルチョークと同じような状態を引き起こしてしまう。この場合もホットスターターをONにすれば、数発のキックで再スタートが可能だ。始動後はスターターのノブをOFFにして通路をカットしてやればいいだけである。
一見、トリッキーなパーツのようにも思えるかもしれないが、効果は絶大である。
余談ではあるが、「YZF400M」の開発当初、TEAM YAMAHA USAのエンジニア達も、
この露状のガスが引き起こす始動不良の原因をなかなか看破出来ず、かなり苦悩した模様である。あの当時、このデバイスが組み込まれていたら、97年のSX最終戦で起きた歴史的なあの大事件、「ダグヘンリー&4ストロークMXマシンの史上初の大勝利!」の快挙の到来は大幅に短縮されていたに違いない・・・。

TECH CHIP その6

A LETTER FROM AMERICAN HONDA

FOR ALL OF XR650R OWNERS

すべてのXR650Rバイヤーに向けてのTECH CHIP 20!

By BRUCE OGILVIE

ブルースオグビー。元アメリカホンダのプロフェッショナルライダーであり、SCORE BAJA1000で、7度に及ぶ優勝を達成。また彼は70年代、80年代、そして90年代の3世代を通して総合優勝を成し遂げた僅か2人のライダーの中の一人に数え上げられる、といった輝かしい経歴を持つ。ブルースは現在、アメリカンホンダ-R&Dの重要な一員としてマシン開発とレースサポートに従事。昨年デビューしたXR650Rは、彼が長年に渡る豊富なレース経験を基に、そのノウハウのすべてを注ぎ込み苦難の末、新世紀へ向けて送り出した、いわば虎の子の一台である。故アルベーカーと同じく、XRに魅せられXRと共に人生を歩んできたブルースが今後どのような変遷と進化を我らのXRに展開してくれるのか、とても楽しみである。(写真上)86年のBAJA1000で勝利を飾ったXR600RG。彼は昨年、デビューから15年を経たこのツインキャブXR(BIG-FINNED)でネバダラリーに参戦。全盛の往時と変わらぬ速さでトップクラスの若手ライダー達を瞠目させた。
 

フルレース仕様のプロフェッショナルレベルのライダーに向けて

 
その1)
右側のフットステップのブラケットの取付けボルトが緩みやすいため、500KM毎に
締め付けの確認を行うこと。
その2)
BAJA1000等のSCOREイベントレースでは2次側のギヤ比はフロント14T,リヤ45T
もしくは15-47Tの設定を推薦したい。スムーズなパワー特性とリヤホイルを前側に移動
できるためである。また14-52Tの設定はウッズなどで非常に扱いやすい低速トルクを発揮できる。(USAモデルのノーマルギヤ比は14−48)
その3)
燃料コックをはずし、真鍮製のリザーブパイプを取り外し”ON”の状態でレースを行うこと。(訳者:注)ガスが予備近くまで減ってくると供給が不安定になるためと推察。
その4)
ムースタイヤは使用しないこと。ムースはサスペンションやフレームへの負担が大きくなりすぎる。ヘビーチューブを推薦する。
その5)
ノーマルタンクでのレース参加の場合は、タンクキャップ部内側の白いプラスチック製の
インナーをはずしておくこと。HONDAのピットでクイックチャージャーのサービスが受けられる。
 

すべてのXR650Rバイヤーに向けてのアドバイス

 
その1)
エアーフィルターが左側サイドパネルによって、しっかり押さえられている事を常時確認する。特に前部のロア側のクリップに充分なテンションがあるか、チェックする事。
ブーツやその他のインパクトでダメージを受けるとテンションが落ちて、カバーの押さえが甘くなり、その部分からダストの吸い込みを起こしやすい。”B TO V”(注:バーストツーベガス)のレースで、ジョニーキャンベルはこの左のサイドカバーの落下に気付かず走行を続け、HONDAピットで初めてそれを知らされるといったハプニングに見舞われた。
その2)
規定のオイル容量を保つことに注意を払う事。例えばXR650Rの場合、0,5L少ないとそれは全容量の25%以上に値する。計り方はエンジン停止後、20〜30秒以内にディップスティックでの目盛りに準じて速やかに行う。またレース中は、アイドリング状態でスティックを差し込み、計量してもOKである。(訳者:注)間違っても一晩置いた状態で計らないこと。
その3)
XR650Rのパワーを引き出すためにはレギュラーガスを入れること。ハイオクタンガスは
圧縮比が高く設定されたエンジンにのみ有効である。ホンダピットでは、オクタン価92〜93のVP製ガスをチャージしている。
その4)
スウィングアームとのクリヤランスが許す限り、リヤホイルを前に位置するように
ギヤ比を設定すること。コーナリングの旋回性が向上し、ハンドリングもよりベターで、作動がより安定する。
その5)
XR650Rはビッグトルクを発生するので、チェーンは必ずノーマルと同じのエンドレスタイプを使用すること。クリップタイプは必然的にトラブルの発生を招く。
その6)
HONDAではD.I.Dの「520 ERV2」というOリングタイプのエンドレスを純正部品として
販売している。(部番:DID520ERV2-120)。AMERICAN HONDAでは1994のレースから、このグレードのチェーンを採用している。また、ノーマルのXR650のチェーンは通常のERV2と同等かそれ以上の耐久性と強度を保持している。
その7)リヤフェンダーの取付けボルトが緩みやすいので要チェック。アンチロックの溶剤で再度締め直すこと。
その8)キャブレターのチョークプレートの取付けスプリングをチェックすること。これが金属疲労等で破損している場合、スプリング及びプレートがインテークポートに吸い込まれ、重大なトラブルを引き起こすことになる。現在、直ちに施せる適切な処置としてはプレートとスプリングを取り外してしまうという方法がある。それでも冷間時、エンジンは3回のキックで目覚めてくれるはずだ。またホンダが把握したところの、この破損を招く最大の原因として考えられるのが、ハーフチョークの状態のまま、エンジンを比較的ながくかけておくという使い方を繰り返した場合である。
その9)
オーナズマニュアルの予備タンク容量には誤りがある。0.53ガロンが実際的に正しい数値である。
その10)
リヤホイルにビートストッパーを1個付け足すこと。1気圧程度の空気圧ではXR650Rの強大なトルク発生によってリムとタイヤのズレを起こす。
その11)
初期のゆるみ修正を調整した後、ステンレスワイヤーでスポークがクロスした箇所を前後ホイルともロックアップすること。
その12)
使用中にラジエター液をボイルさせたことがあるユーザーはノーマルラジエターキャップ
(1,1kg/Cu)からKAWASAKIのKX80に使われているキャップ(1,6kg/Cu)への交換を推薦したい。(訳者注:液体は加圧されるほどその沸点が高くなる)この変更のマイナス面としてはホース部やフィッティング部分に多少の負担が増える事であるが、水冷エンジンはもともと冷却フィン部に通風がない状態では、ボイルするように設計されているので、心配はいらない。そのためにリザーバータンクがある。ボイルは水冷エンジンにおける、エンジンが決定的なダメージを受ける前の予兆というより水冷特有の 単なる現象であると認識してほしい。一般的によくある誤解であるが、決してエンジンのオーバーヒートと混同してはいけない。
(訳者注1:当社で調べたところ、このキャップの部番は49085−1059です。実はKMX125用 。
 KX80用とか、ホンダさんに注文したりしないこと!)
(訳者注2;空冷エンジンにはこのボイルのサインがないので油温計などの装備が必要)

その13)
BAJA1000のレースでHONDAチームは、このラジエターキャップの装着と軽量化を兼ねてリザーバータンクを取り外し、また冷却水の流れをよくするため、サーモスタットも使っていない。これによってより本格的なアグレッシブ走行が可能になる。しかしアベレージライダーにはあまりお薦めできない方法であるかもしれない。
その14)
HRCのパワーアップキットはカムシャフトとハイコンプピストン、強化されたカムチェン
によって10馬力以上の出力アップを発揮している。これはJOHNNY CAMBELLのマシンと同じ設定である
その15)
ホンダチームはチェンガイドに手を加えていない。何故ならポリプロピレンは衝撃をしなやかに吸収し、金属製のガイドのように折れ曲がったりしないからだ。
(訳者注:では何故、CRとかCRFにはアルミ製のガードが付いているんだろう?
 私は冬場に林道を走行中、このポリプロが突然折れ、ガイドごとチェーンの上を半周したあとフロントのスプロケットでロックした(笑)ことがあるのです。しなやかなのは気
候が温暖なCA.だけ?)

HOW TO RE-START YOUR ENZINE  QUICKLY !! 

レース中の思わぬエンスト。キック一発で、速やかに再スタートするには?

.
1)ニュートラルポジションは探さない。タイムロスになるだけである。ギヤが入ったままでOK。 先ずクラッチレバーをグリップの根元まで、わし掴みでフルに握る。
2)次に、跨ったままマシンを前後に30CM程、一度、押し引きする。この動作がポイントだ。
3)クラッチを切っても、オイルで僅かに密着していたクラッチプレートとフリクションプレートが、これで切り離されて ニュートラルと同じような状態になる。4)エンジンがヒートしている場合はホットスターターのレバーを引きながら、勢いよくキックを踏みおろす。 (オートデコンプがついていないモデルは、このページの最初で説明した「PART−1」のテックを応用する)4サイクルの圧縮比や排気量が大きいモデルはこのテックを使わなければ、ギヤが入ったままでは 先ず素早い再スタートは困難だ。完全に切れていない重いクラッチのせいで、始動に必要なキックスピードが どうしても得られなくなるからである。2サイクルの場合はミッションが独立しており油温も低い為、 このテックなしでも再始動が可能だが、より簡単で確実になものになる。 以上、スコットサマーズご推薦のテックチップである。 慣れてくると驚くほど素早い再スタートが可能だ。何事も精進あるのみ。是非、一度お試しあれ。