エクロジャイト(瀬場)

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 愛媛が世界に誇るエクロジャイト。その中でも、もっとも美しくエクロジャイトの代表格とされる「瀬場帯」の標本である。エクロジャイトの特徴は、オンファス輝石の眼の醒めるようなグリーンと高圧下で生成される完全12面体の鉄礬ザクロ石の晶出で、他の結晶片岩などの変成岩とは明らかに一線を画している。エクロジャイトには、この他に、単斜輝石やグラニュライトなど多くの種類があり、それが赤石から峨蔵山系にかけてきれいに並んで分布しているのも面白い。地下数百km、マントルを形成するような岩石がどのような作用を受けて地表に現れ出たのであろうか?それには未だ定説がなく、百家争鳴の状態であるという。

 2001年、新居浜に世界の研究者が集まり、「第6回 世界エクロジャイト会議」が開催された。このような機会はまたとないであろうと思い、年休を取って赤石山系の巡検に参加させてもらった。そのときの記事を「愛媛労災病院山の会」のHPに記載してあるのでご高覧いただければ幸いである。とにかく興奮の連続で、お邪魔であったであろうに島根大学の高須先生や名古屋大学の榎並先生、京都大学の平島先生をはじめ、若い研究者の方々に、ひとつひとつ標本を手に取りながら親切に教えていただいた思い出は、わたしの一生の宝である。このときの記念碑が瀬場に建立されているが、石碑自体もエクロジャイトでできており、その片割れこそが、写真のエクロジャイト標本なのである。会議に参加された世界中の研究者にも記念品として配布された。

 「別子山村史」に、「瀬場と床鍋の地境に地蔵岳という所がある。・・但しこの岩石は地質学上、日本でも他にない岩石で先年、鍵山村長時代(昭和5年頃)筏津主任桧垣喜代吉係長時代にアメリカから土質鉱物学者が数人来りて、この石の破片を持ち帰った。是等の技術者は日本で只一ヶ所のこの岩石を誇りとしたのである。」とあるのは、おそらくエクロジャイトのことであろう。75年も前にすでにこの岩石の重要性に気づいていたとは驚きであり、さすがアメリカと言わざるをえない。

 

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