輝安鉱4

 

 これも海外からの里帰り品である。市場によく出回る標本は、このタイプが多いのではないだろうか?頭は失われているが、多くの結晶がさまざまな方向に延び、小さな水晶がまとわりつく様は、いつまで見ていても飽きない。「母岩付」と説明される標本をよく見るが、多くはこのような水晶の付着を示しているもので、「輝安鉱2」の如く、市ノ川礫岩や結晶片岩の共存を示すものではないので妥当な表現ではない。市ノ川の水晶は、その色彩、透明度とも優れていて、現在も河原を探せばいくらでも採集することができる。水晶だけでも価値ある標本といえる。

 海外で保存されている輝安鉱は、前にも述べたように保存状態が非常によく、「いぶし銀」のような黒ずみもなく銀白色に光り輝いている。これが何十年も保存されていたものかと猜疑の念が起こるのも無理はない。現に、最近は中国産の大きな結晶が出回るようになったのでなおさらである。以前は、中国産の輝安鉱は質が悪いと言われていたが、なかなかどうして。市ノ川ばりの大きな柱状結晶や頭付き結晶標本は、ちょっと見ただけでは見分けがつかないくらいだ。美しい標本を購入される場合は、慎重な見極めと産地の確認を充分していただきたい。