マイントピア別子 砂金採集記

 

 平成23年8月13日(土)、マイントピア別子の「砂金採り」を初めて体験しました。今まで数え切れないくらい訪れている施設ですが、人工的な砂金と言う先入観もあって、いつもその横を素通りしていただけでした。ところが、銅山川の砂金採集で有名な香川県丸亀市のM氏に連れられて2回ほど(「愛媛石の会」巡検を含めると3回)、新宮村の現地でご指導いただいたにもかかわらず小生だけが1粒も採集できていないことを憂えた同氏から、この夏休みにマイントピアで直接、特訓を受けることになった次第です。(いやはや恥ずかしい・・)・・調べてみると、「砂金採り体験」ができる場所は、全国でも10ヶ所程度しかなく、そのほとんどが金山のあった場所に設置されています。別子銅山は金山ではありませんが、キースラガー鉱床には微量の金銀が含まれていて、鉱山稼行中には金1700kg、銀33000kg(昭和30年現在)ほどが年間生産されていました。それに加えて愛媛では、奈良時代に「金集史(かねあつめのふひと)」によって砂金が採掘されたという記録が残り、中世から近世にかけて銅山川や吉野川でさかんに砂金が採集され、明治時代に入るとその絶頂期を迎えて鉱区が指定されるほどになっていました。かのナウマンも、明治16年に調査に訪れ、「此ノ産金地方ハ特ニ注意スベキ枢要ノ区域トイフベシ。」(山城谷村史)と報告しています。残念ながら鉱山税や海外からの金流入などで戦後全く廃れてしまい今それを伝える方々もほとんどおられませんが、マイントピア別子でそうした体験パークが作られたのは誠にリーズナブルで有意義なことだと思うのです。もちろん四国ではここが唯一の体験パークとなっています。施設は平成23年4月にリニューアルされ、金ブーム到来ということもあって非常に好評を博しており、「東洋のマチュピチュ」とともにマスコミに取り上げられテレビでも放映・紹介されています。リピーターが多いと言うことも此処の特質のひとつです。今後、M氏を始めとする有志の方々のご活躍で、四国の砂金やその歴史が再び脚光を浴びることを願いつつ、この体験記を作成いたしました。ぜひご覧いただき、皆様も実際に体験してみてください!・・結構ハマりますよ!!

 

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マイントピア正面です。夏休み中ということもあって、大層な賑わいでした。新居浜市も銅山をモチーフにした駅前の整備計画や別子銅山に関するプロジェクトが進行中で、市民側からの盛り上がりを、とても頼もしく感じます、

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今回は、四国河川における天然砂金採集家として有名なM氏のご指導の下、「砂金採り体験パーク」でパンニングの特訓です。砂金を採集できていないのは小生だけ・・ということもあって自らに一喝して気合いを入れつつ入場です。

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受付に置いてあるパンフレットです。「あなたは、今日から億万長者?砂の中からパン(皿)で金を採ってください。採った金は、お持ち帰り自由!記念カードにもできます。」とあります。1回30分、600円です!

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「砂金採り体験パーク」は本館の裏手にあります。鉱山が稼行中は、削岩機やビットの修理工場のあった場所です。一応、屋根がありますので夏は快適ですが、冬は側面が吹きさらしでちょっと寒そう・・でも、冬場は温水だそうです。

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会場の内部はこんな感じです。細長い大きな水槽が4槽あって、係の人から採集の水槽を指定されます。まだ午前10時でしたが右手の奥に人集りが出来ているのがおわかりでしょうか?小生達もそこに行くように促されました。

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さあ、いよいよ採集開始!まず、M氏(左)がパン皿の使い方を指導してくれます。金は重いので底に沈んでいます。砂を深く掬って、回転を繰り返しながら淘汰してゆきます。コツは会場のビデオでも放映中ですが実際はそう簡単ではありません。

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手前が小生です。最近はド近眼に老眼が重なって小さな金も同定するのが大変です。金を見つけても、それを小さな容器に移すのがまた大変・・指にくっつけるのですが、それがまたどこかに行ってしまって・・四苦八苦です。

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おまけに、この姿勢で15分もすると次第に“腰”にきて、こんな放屁腰の不様な姿となりました。以前に水槽の隅が狙い目と聞いていたので、同じ場所で粘るのですが思ったほどは採れません。右はM氏のお知り合いのH氏です。

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さすがにM氏のお弟子さんだけあって、次々と場所を変えながら力強いパンニングで金を獲っていきます。その動きを惚れ惚れと見ている内に30分はあっという間に終了!いつの間にか他の水槽も満員となっていました。

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小生が獲った金の様子です。パン皿の中央、やや右に白く光っているのがそれです。多いときには一掬いで数個以上採れることもあるそうです。水槽には砂金の外に、銀粒や小さな水晶、色とりどりの天然石も撒かれていてお子様に大人気です!

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会場の事務所前には、“銅山川の砂金”や“栃原鉱山の自然金(山金)”(以上M氏寄贈)を始め、菱刈鉱山やカナダなどの自然金が整然と並べられています。自分が獲った金と見比べると、フランス料理と日の丸弁当ほどの違いを感じます。

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“銅山川の砂金”です。その美しさとボリュームには本当に圧倒されます。「明治工業史」の「農夫が耕耘の余暇を利用して淘洗採集し、一箇年一人平均百円余を採集せり。」という当時の日本版ゴールドラッシュの隆盛が偲ばれます。

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M氏寄贈の「ゆり鉢」です。実際に四国で使われたものの複製品です。パン皿と較べると大きく平たいので利鞘が稼げると思いきや、なかなかその要領が難しいそうです。M氏を紹介した新聞記事や北海道の“ゆり板”なども展示されています。

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戦い終わって玄関に戻ると、マイントピア名物の“鹿の子百合”がたくさん咲いていました。シーボルトによってヨーロッパに紹介され、「宝石に紛うほど美しい」と絶讃されたと伝えられます。砂金と共にマイントピア別子に彩りを添える可憐な花です!

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帰宅してから本日の収穫を確認します。フェルトの上に置くと、さすがに金の高貴さを実感できます。大きさは2×1mm程度。重さは0.004gとのことで、粒状の純金からプレスして作るのだそうです。球形のモノは銀粒です。

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マイントピア別子では、砂金採集をすると、このような保存用の小瓶が付いてきます。別途料金になりますが、金入りカードやペンダントにもできます。右は同じくM氏のご指導で採集できた“銅山川の砂金”。いつまで見ていても飽きません。

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砂金を水中で保存する場合には、カビが生えやすいので、滅菌水などの綺麗な水に交換して保存されることをお奨めします。係の人に頼めば、乾燥させてマイントピア特製のカードに封入してくれます。別子のおみやげとして好評です!

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採集した砂金のボトルを“砂金スタンド”にセットすれば机の上に飾ることもできます。スタンドは体験パークでも販売していますし、1階売店の“銅線細工をしている方”に頼めばイニシャル入りなどのオリジナルのスタンドに仕上げてくれます。

 

以下はM氏提供の“砂金ワールド”です。小生とは次元の違うアウフヘーベンされた別世界をお楽しみください!!

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M氏が2011年10月16日に4回の体験でゲットした砂金です。パン皿の底に、見ただけでも重々しい金銀が眩しく光っています。金が162粒、銀が104粒ということで、金だけでも6000円ほどの価値になります。

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何回かの採集で得た砂金と銀粒でかなりの重量感です。昔はこのような砂金のままで取引がなされていました。“後三年の役”の発端となった清原真衡と吉彦秀武の逸話が蘇ります。今、金相場は未曾有の高騰で、4000円/g 以上となっています。

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水槽の中には“タヌ金”と呼ばれるマイントピアのキャラである銅太君を刻印した大きめの純金も稀に採集できます。大きさは4×1mmで重さは約0.2g 、裏に“K24”と記されていて、これをお目当てのリピーターも多いとのこと。

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“タヌ金”を3ヶ集めると、正真正銘、世界で通用する“住友ゴールド”の5g インゴットと交換してくれます。現在の価値にして20000円余です。別子銅山は住友の象徴でもある訳ですから、何にも勝る賞品と言うこともできるでしょう。

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M氏は、今までに採集したマイントピアの砂金5.5g と銀0.5g を用いてオリジナルの指輪を製作されました。純金の指輪は柔らかで摩耗しやすく実用性に乏しいので、金合金としてK22に仕上げたそうです。奥様とのスィートXリングとして最高の記念品です。

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その工程表が、体験パークの事務所前に掲示されています。これを見ると、砂金を鋳潰した後、細長い板状にしてから丸めていく様子がよくわかります。無垢のリングに細かい彫金を施すと完成ですが、リング状にしたり、彫金したりすると別途に費用がかかるそうです。

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事務所前の様子です。“指輪”の工程表をはじめ、M氏寄贈の数々の品が展示されています。砂金や天然石は、その場でペンダントやピアスなどにも加工出来ますので、M氏のような想像を絶するモノならずとも、自分なりのメモリアルトレジャーを作りましょう!

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こちらは、採集した金を惜しげもなく注ぎ込んで作成した純金“タヌ金バッジ”です。直径2.5cm、厚さ2mm、総重量17.5g の巨大な代物です。背面のピンもK18という贅沢な逸品で、銅太君が誇らしげに光り輝いています。M氏の金にかける意気込みが伝わってきます。

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左の写真は、平成22年10月30日に、「朝日新聞(愛媛版)」に掲載された銅山川で砂金を採集するM氏の写真です。M氏の本領は、四国を中心とした自然金の採集で、マイントピアのコレクションは、ほんの訓練の副産物に過ぎないと豪語しておられます。しかし地道な訓練あってこその達人なのであって、まさに「師は鍛錬の賜物」と言うことが出来るでしょう。後方には高知県で活躍するK氏(M氏のご師匠)の姿も写っています。そうした方々の地道な不断の努力で、古くは奈良時代から記述のある四国の砂金の謎が次第に解明されつつあるのは誠に頼もしい限りです。今後の研究の成果を心から期待してやみません。

 

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