西条市立郷土博物館

  

 

愛媛県西条市明屋敷、西条陣屋跡(現 西条高校敷地内)にある「西条市立郷土博物館」である。場所がちょっとわかりにくいので、西条高校を尋ねる方が早いかもしれない。東京大学の赤門を思わせるような立派な校門の左手の奥まったところに、ひっそりとした佇まいを見せている。玄関には、この博物館設立のため、輝安鉱をはじめ多くの収集品を寄贈した「田中大祐翁」の銅像が鎮座ましまし、おごそかに私たちを迎えてくれる。以前は20円の入場料を徴収していたらしいが、現在は無料である。簡単な入場者アンケート?があるので、せめてそれに協力してから入館するようにしよう。

 

  

 

 展示品は数々あれど、やはり圧巻は「市之川鉱山」のコーナーであろう。博物館の小さな一角ではあるが、それでも「世界重要鉱物標本」に登録されている輝安鉱をはじめ、田中翁が苦労して集めた貴重な大小の標本と、それを取り巻く各種資料や古写真で、「市之川鉱山とはなにか」を知るには十分すぎるほどの量と質である。小生も、少し精神的に疲れた時や、つれづれを慰める折りに幾度となくここを訪れ、訪れる度に何らかの新しい発見があるのがうれしい。少し離れた陳列ケースには、田中翁が好んで収集したと伝えられる水晶コレクションが並んでいる。「輝安鉱入り水晶」などは地元ならではの珍品であろう。また、翁が家を建てるため、輝安鉱と引き替えに手にした大枚を全てつぎ込んで買ったと云われる「孔雀石」も展示されている。当時は、それほどの価値があったかもしれないが、外国産の孔雀石でもあり、小生の値踏みでは「まあ、10万円くらいかな??」と踏んでおり、売ってしまった輝安鉱の方がとても惜しく感じるのだが、さて如何であろうか??ぜひ、貴兄の眼で確認していただきたいと思う。

 

 

当館の鉱物コレクションは、さらに2階にも続いているので、くれぐれも見落とさないようにご注意のほどを!!「松竹鉱山(新居浜市大生院)」産の斑銅鉱、「別子銅山」産の自然銅、鏡肌や吹寄せ標本をはじめ、愛媛県の主だった鉱物類はほとんど揃っているので、とても参考になるだろう。ただ如何せん、施設が古く、空調設備も不十分なため、「別子銅山」産の安四面銅鉱などは、変色して腐ってしまっているのが、かえすがえす残念で惜しまれる。

 

平成17年、西条市は、東予市、小松町、丹原町を吸収合併し、新たに“大”西条市を誕生させた。聞くところによると、その西条にふさわしい新しい「図書館」建設の署名活動が熱心に行われているとのことであるが、それならば、ぜひ、「メモリアル市之川」にふさわしい新しい「郷土博物館」の建設も考慮にいれてほしいと思う。現在、「市之川公民館」が保有している立派な輝安鉱や鉱山資料などと統合できるなら、愛媛県立博物館と並ぶトップクラスの「郷土博物館」となることは間違いない。最近は、やたら建物ばかり立派な公的博物館が目立つが、有り余るほどの貴重な郷土資料を秘蔵する当館の前途は大いに拓けていると言える。これも、やはり田中翁の余慶ということだろう。田中翁のようなすばらしい先賢を持ち、世界一の市之川鉱山を持ち、西日本一の名峰、石鎚山をも有する素晴らしい西条市を、こころから羨ましいと感じるのは、ひとり小生だけではあるまい。