VANのステッカーを鞄に貼るのが、中学生の間で流行った。シールをVANでは「ステッカー」と呼んだ。その新鮮な響きは少年の心を魅了した。VANのロゴタイプは、ステンシル体という輸送用の木箱に刷り込まれた文字がモチーフになっている。
「ヤツヅカ」では、服を買うとステッカーをおまけにくれる。おそらく、中学生の鞄に貼られたステッカーは、兄や親戚からもらったものを使ったのだろう。中学生で「ヤツヅカ」で服を買うのは、少数の人間に限られていた。
丸い「VAN」のステッカーには「for the young and the young-at-heart」というスローガンが書かれている。社名は「VAN JACKET INC」だが「VAN ヂャケット」と日本語で書く。もちろん「VAN」は「ヴァン」と書いた。
しばらくすると、「JUN」のステッカーも人気となった。「ヤツヅカ」は、JUN製品も販売していた。のちには、ヨーロピアンのデザインとして知られるようになるファッションブランドだが、今から40年近く前には、アイビーのデザインも出していた。JUNのボタンダウンシャツを買ったこともある。ただ、脇は少しばかりシェイプして、身体にフィットするようにつくられていた。
平べったい鞄に貼ったVANの文字
7月3日(水)
VANは、多くのノベルティを用意していた。特定の期間に服を買うとキーホルダーやマグカップがもらえた。キャンペーンのロゴが入ったトレーナーをワゴンで販売していたこともあった。
よく貰うのは、スポーツの写真をレイアウトしたB1版の大きなポスターである。「Come on Sportsman」というキャッチフレーズが入っていた。壁に貼るととても迫力があり、その部分からアメリカンテイストが発散させていた。
「ヤツヅカ」は、VANだけではなく、他のファッションブランドも扱っていた。印象に残っているのは「EDWERD'S」の伊坂芳太良のポスターだ。サイケデリック調の服に身を包んだ人物の髪を一本ずつていねいに描いていた。題材は当時の最先端ファッションなのに、どこか和の雰囲気が漂っていた。一時期、「ビッグコミック」の表紙も担当していたから、懐かしく思い出す人もいるかもしれない。
ウィキペディアを見ると、1970年に42歳で亡くなっている。これからという時期に早世したのは、無念だったろうと想像する。