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この頃の現役

S47卒 井手浩一

・この頃の現役には後輩の娘さんが多い。何年か前までは先輩のお嬢さんや同級生の娘だったのに。現在もホルンとクラリネットに私○○の娘です、という奏者がいる。どちらもお母さんに似てチャーミングである。

・この頃の現役は真面目である。授業 ・練習 ・塾 ・模試 ・試験の繰り返しに良く耐えている。今はお盆にも模試があるし、定期試験の後即模試ということもある。モシモシそれは何のモシと尋ねてみても、ピンと来ない。昔みたいに受けたフリをしたり、三者面談の通知を握り潰したりしないのである。

・この頃の現役は元気である。昨年のアンサンブルコンテストの直前、予約した練習場所が手違いで使えないことがあった。あぶれた一年生チームはチューバやトロンボーンを抱えて堀之内から道後公園まで移動したそうである。翌日それを聞き、申し訳なさの余り  「いろは屋」のパンをおごってしまった。

・この頃の現役は女の子が多い。練習風景はまさに百花繚乱で、一瞬女子高へ来たのかと錯覚する程である。ところが、その雰囲気がなかなか音楽に現れない。
 Q.もう少し色っぽい音は出せんかなあ?
 A.色っぽい音ってどう吹くんですか?
 Q.・・(暫し絶句)・・もし君の横にヨン様が居てもそんな音を出すか?
 A.あたし、あの人嫌いです。

・この頃の現役は優秀である。二日酔いの黒蟻のような十二連符を、毎日倦まずたゆまずさらっている。実に真摯である。ダフニスの後ですぐ「マツケンサンバ」を吹く(振り付き)のにも感心する。

・(前述と矛盾するが)この頃の現役は無器用である。特にポップスの初見は後ろで聞いていると爆笑ものである。楽譜に書いてあるリズムを守ろうとする余り、旋律が硬直してしまう。音楽はワン・ツウ・スリーじゃないぞと言いたい。

・この頃の現役は貧乏である。これは高校生の永遠の命題であろう。ということで甘い物など携えて東高へ行くと大変喜ばれます。高い物は不要でポエムのシュークリームで十分ですが、最低六十個は必要です。

・この頃の現役に欲しいのは図太さ。誰が何と言おうがこうするという思い切り。一人一人は大変ユニークである。それが集団の中に入ると表に出て来ない。独房の前のあの弾けるようなエネルギーが本番で出せれば、金賞間違いなし。

・この頃の現役には生徒名簿がない。だから同じクラブに所属してもパートが違えば何処に住んでいるのかも分からないこともある。俄かには信じがたいだろうが本当の話である。「個人情報保護法」(平成15年5月30日公布・法律第57号)が幅を利かせてる昨今では仕方がないと言ってしまえばそれ迄だが、却って社会の活力を削いでいる気がしてならない。




  

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