突発性発疹症→ウイルスの感染症です


    生後4カ月頃から多くは1歳半頃までの赤ちゃんが、急に比較的高めの熱をだして3から4日持続します。熱以外の症状はほとんどなく、熱が下がると、体から全身にひろがる発疹がでます。そして便が少しゆるくなります。特別な合併症(中耳炎や髄膜炎)がなければこれで病気は終わりです。


 注意:発疹がでるまでは「突発性発疹らしい」としか言えません。経過を観察して診断する病気です。発疹がでてはじめて「突発性発疹症です」と診断できます。2種類のウイルスが発症に関係します。このため2度発症することがあります。



RSウイルスの感染症です

 RSウイルスの感染による呼吸器感染症です。何度も感染と発症を繰り返すことが分かっています。
生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児が少なくとも1度は感染するとされています( 国立感染症研究所 ホームページ:IDWR2013年第36号<注目すべき感染症>RSウイルス感染症参照 )。



 乳児期での感染は、気管支炎や呼吸困難を伴う細気管支炎そして肺炎など、重症化する病気のため入院治療になることが多い疾患であります。また気管支炎については充分な経過観察が必要となります。


ヒトメタニューモウイルスの感染症です

 ヒトメタニューモウイルスの感染による呼吸器感染症です。
 3月から6月に流行すると言われています。通常の風邪と同じような症状で発症しますが、インフルエンザの流行時期にあたり、病気の初期にはインフルエンザとの鑑別が必要になります。



 通常の風邪とは異なり、発熱が持続し、咳や鼻汁がどんどん強くなります。そして気管支炎や細気管支炎、肺炎などを引き起こします。






麻疹(はしか)→ウイルスの感染症です

    はしかはたいへんおもい病気です。はじめの2〜3日は、熱・咳き・鼻みず・目ヤニなど、ふつうのかぜと同じ症状です。この時期にはしかを診断するのはむずかしいものです。3〜4日にかけて熱がさらに上がるとともに全身に発疹がでます。この時点でほぼ診断が確定します。その後、咳はさらに強くなり・高い熱が続き重症感がでてきます。発疹が現れてからも4〜5日高い熱が続きます。肺炎や脳炎を引き起こすことがあります。このため治るまで特別な注意が必要です。「予防接種」の中の「予防接種と予防接種ををうけたあとの注意」のところに、麻疹の経過についての説明があります。参考にしてください。

 注意:伝染力もたいへん強い病気です。感染を広げないためにも医療機関と連絡をとり、指示された日時に受診して診てもらってください。また接触した可能性がある方には早めに知らせてあげてください。予防の第一は、予防接種です。予防接種を受けていない子が、はしかの方と接触した場合は、接触後72時間以内では「麻疹または麻疹・風疹混合ワクチンの緊急接種」を行うと軽症化できます。感染に弱くどうしても発症を防ぐためには4〜5日以内にガンマグロブリンの注射をうければ、発病を防いだり、発病しても軽症化することができますが、これは血液製剤でもあるため主治医とよく相談してください。

風疹(ふうしん)→ウイルスの感染症です。


 

    熱がでて(軽い発熱が多いです)、そして少しかゆみのある発疹がでて、目が充血して、首のリンパ節が腫れます。3日ほどで治ります。このため「3日ばしか」とも呼ばれますが、小児にとって「はしか」とは比較にならないほど軽い病気です。まれに、紫斑病、脳炎、関節炎が起こることがあります。


 注意:妊娠初期に風疹にかかると、生まれてくる赤ちゃんの目や耳や心臓に障害をきたすことがあります。風疹の子を妊婦や妊娠しているかもしれない人に近づけないでください。このため流行を防ぐ目的で、小児でも予防接種が勧められています。



 

水痘(みずぼうそう)→ウイルスの感染症です。

 

    はじめは虫刺され様の発疹ではじまります。発熱を伴うこともありますが数日間のことが多いです。。その後赤い発疹は中央に水疱を伴うようになり全身に広がります。頭の中、口の中、陰部どこでもでます。3日目ぐらいがピークで、水疱はやぶれて固まって黒いかさぶたになります。平均して1週間ぐらいで治ります。他の病気で免疫が落ちている時は症状が重くなることがあります。また、成人がかかると重くなることがあります。


 注意:水疱の部分に細菌の二次感染が起こることがあります。全身に傷がある状態ですので、たった一つの傷の化膿が全身の傷の化膿になってしまう心配があります。きれいなかさぶたにならない時はたいへん注意が必要になります。予防には、予防接種があります。なお、水痘(みずぼうそう)と帯状疱疹(たいじょうほうしん)の原因ウイルスは同じウイルスです。




流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプスともいいます)→ウイルスの感染症です。


 
    耳の下(耳下腺)が腫れて痛がります。あごの下(顎下腺)も腫れることがあります。ふつうは左右とも腫れますが、片側だけのこともあります。腫れはやく1週間で治ります。非常に高率に(10〜65%)髄膜炎の合併がみられます。熱が続いたり、頭痛が強く、何度も吐くときは髄膜炎の心配がありますので診察を受けてください。睾丸が腫れて痛がることもあります。やはり診察してもらって下さい。


 注意:片側の時は、おたふくかぜではなく、反復性または化膿性耳下腺炎であることがあります。最後まで経過を追って確実な診断をしてもらってください。おたふくかぜと区別がつかない時は、血液検査で区別することができます。予防には、予防接種が勧められます。



ヘルペス歯肉口内炎→ウイルスの感染症です。


 

    単純ヘルペスウイルスの初感染の大部分がこの病気です。高熱が続き(4〜5日)、口の中全体に口内炎ができてとても痛がります。また歯ぐき腫れて出血します。口の中が痛いので食べたり飲んだりができなくなり、脱水症になることもあります。ふつう1週間ほどで食べられるようになりますが、痛くて食べられなくなるため大変つらい病気のひとつです。


 注意:このウイルスは皮膚の湿疹や傷のところに感染します。湿疹が広範囲にある場合は急に感染が拡大しますので注意が必要です。また脳炎をおこすこともあります。





ヘルパンギーナ→ウイルスの感染症です。


 
    乳幼児のあいだで流行する夏かぜの一種です。のどの奥に口内炎ができ、高熱が数日間でます。痛いのでたべられなくなります。このため脱水症になることがあります。また、原因になるウイルスがいくつかあります。一度やった方でもまたなることがあります。


 注意:熱がひいても食欲がでるまでは注意してください。





手足口病→ウイルスの感染症です。


 

    乳幼児に流行します。手のひら、足の裏に水疱が、そして口の中には口内炎ができます。おしりやひざにも水疱ができることがあります。数種類のウイルスが原因になりますので、2度3度とかかることがあります。


注意:髄膜炎になることがあります。吐き気が続く時や、熱が続く時は注意して下さい。






プール熱(咽頭結膜熱)→ウイルスの感染症です。


 


    白目が赤くなり(結膜炎)、高い熱が4〜5日続きます。夏にプールを介して学童の間で流行するので「プール熱」といわれています。ただ、プールに入らなくてもうつります。



 注意:高い熱が続く病気です。熱さましを使いすぎないようにしてください。






伝染性紅斑(りんご病)→ウイルスの感染症です。




 
    ほっぺが発疹でリンゴのように赤くなるので、りんご病と呼ばれています。太ももや腕にはレース模様のような発疹がでます。発疹はかゆみをともなうことがあります。



 注意:頬に発疹がでる時期になると、すでに伝染力はないといわれています。しかし、だるさがあったりやあまりに強い発疹なら、数日間休んだほうが無難でしょう。また、一度みられなくなった発疹が日光に長くあたると再びでるといわれています。





インフルエンザ→ウイルスの感染症です。


 


    A型、B型、C型の3タイプがあります。その年によって異なりますが、主にA香港型、Aソ連型、B型のどれかが流行します。ふつうのかぜとは比較にならないほど症状がひどく、重い病気です。急に発熱し、高い熱が数日から1週間にも及びます。全身がだるく、のどの痛み、頭痛、筋肉痛、おなかの痛み、吐いたり下痢をしたり、鼻や咳も強くでます。家中みんながかかることが多く、大人でも高い熱がでます。


 注意:治るまで気のぬけない病気です。「いつもとなにかちがうぞ」と思ったら早めにみてもらってください。肺炎や脳炎など重い合併症があります。








嘔吐下痢症→ウイルスの感染症です。


 
    原因になるウイルスは、いろいろなウイルスがあります。感染すると吐いたり下痢(明るい黄色や白い色の下痢便)をするので、嘔吐下痢症と呼ばれています。発熱することもあります。吐いて下痢をして、しかも発熱するため脱水症になりやすい病気です。下痢で水分が失われるため、水分(イオン飲料など)はふだんより多く飲ませます。しかし下痢が激しいときは乳糖の吸収が十分にできなくなりますので、乳糖を多く含むミルクや牛乳を制限する必要があります。


 注意:食べれなかったり、飲めないためにぐったりしてきたら脱水症が心配されます。早めに受診してください。また、この下痢はおむつかぶれがひどくなりますので、下痢のたびによくお尻を洗ってください。





水いぼ(伝染性軟属腫)→皮膚のウイルスの感染症です。



 

    皮膚にできる、丸くて光沢のある1mm前後の大きさのうつるイボです。つぶすと白いかたまりが出てきます。この中にウイルスがたくさん含まれていて、これが皮膚の湿疹などきずのあるところへつくとうつります。自分のからだの中でも同様にうつりひろがります。また、特別に強い伝染性はないのですが他の人にも同様にうつります。


 注意:強い伝染力はないのですが、はだかどうしでつきあうとうつる可能性があります。数が少ないうちなら、つまんでとってしまいます。





帯状疱疹(たいじょうほうしん)→ウイルスの感染症です。 


 
    原因は、みずぼうそうと同じウイルスです。みずぼうそうに一度かかった人が、その後神経にそって部分的に再発したのが帯状疱疹です。皮膚の状態は「部分的なみずぼうそう」です。約1週間でかさぶたになり治ります。

 注意:発病した人は他の人からうつったのではないのですが、みずぼうそうをしてない人にはうつします。うつされた人はみずぼうそうになります。



百日咳→細菌の感染症です。


 
    はじめは普通のかぜとかわりません。次第に夜間の咳が強くなり、発症後1〜2週目頃になると顔をまっ赤にして激しく咳込みます。このためまぶたがはれぼったくなるほどです。特有な咳発作で、咳がコンコンと長く続くため息を吸う間を取れないほどで、咳の合間に急いで息を吸うときにヒューと音を立てます。合併症がなければ通常熱はでません。赤ちゃんにとっては危険な病気で生後6ヵ月以下の場合、呼吸が一時止まるほどの咳発作がおこり入院が必要になります。3〜4週目頃になってやっと少しずつ軽くなってきます。いったん発病してしまいますと治療することによりつらい期間を短くすることはできますが、治るのに病名のごとく約百日(約3ヶ月)かかる病気です。

 注意:合併症としては、肺炎や中耳炎が多くみられます。この時は発熱を伴うことがあります。まれですが脳炎を合併することがあります。新生児でも感染する病気です。予防接種(三種混合ワクチン)で予防できる病気ですので、ぜひとも時期が来ましたら早く受けてください。また予防接種を受けていないひとが百日咳の患者さんと接触してしまった時は、できるだけ早く主治医に相談してください。



溶連菌感染症→細菌の感染症です。


 
    A群溶連菌がのどに感染して、のどが強く痛み、熱が出て、からだや手足にややかゆみのある発疹がでます。数日のうちに舌の表面ががイチゴの表面のようにブツブツとなります(イチゴ舌)。1週間ぐらいすると、指先の皮が膜様にむけ、発疹のあとの皮膚がパラパラむけます。あとで急性腎炎やリウマチ熱、血管性紫斑病などになることがあります。このため充分な治療と経過観察が必要な病気です。このように特別な病気のきっかけになる病気ですので、小児ではお互いにうつると困る病気です。友達と接触してよいか確認してから登園(登校)してください。

 注意:この菌は特別な合併症がない限り薬が良く効き、薬をのむと比較的早くよくなります。しかし充分な治療をしませんと再発しやすい病気です。その上に、「この菌に感染して発症したことによってその後に起こってくる病気」である「急性腎炎など」が起こってこないように充分な治療をするこてが大切になります。このため、指示されたように充分な服薬を続け、さらに経過観察してもらうことが必要になります。



細菌性腸炎→細菌感染による腸炎です。


 
    発熱、腹痛、嘔吐、下痢が主な症状です。下痢は次第に、粘液や血液が混じるものとなります。腹痛を伴う、少しずつですが頻回の粘液・血液が混じる下痢便がみられます。便の検査をしないと原因の菌を断定することはできません。小児でよくみられるものとしては、下痢原性大腸菌(O157など)、ブドウ球菌、サルモネラ菌、キャンピロバクター菌など、重いものでは腸チフス、赤痢などがあります。


 注意:まずは便を見てください。腹痛が強く、頻回の便の場合は粘液や血液が混じっていないか良く見てください。診断の第一歩は、便に混じる粘液や血液を見つけることです。便を見なければ診断がつきません。便の状態がおかしいと思ったら、便を持って受診してください。





とびひ(伝染性膿痂疹)→皮膚の細菌感染です。



 
    皮膚の湿疹、すりきず、虫刺され、あせもなどに化膿菌(おもにブドウ球菌)が感染して発症します。感染をおこした場所は水ぶくれができます。これをひっかいた手で他の部位をかくと、またそこに化膿菌があらたに感染して水ぶくれができます。そして次々に水ぶくれが「とびひ」します。夏に多く見られます。


 注意:ブドウ球菌は、皮膚では「とびひ」を起こしたり、まるでやけどのように皮膚がむける病気の「ブドウ球菌性熱傷様皮膚炎」をおこしたり、大小さまざまな「おでき」の原因になったりします。病名はその形態によっていろいろついていますが、小児ではその原因となる菌(化膿菌)は、ブドウ球菌が多いようです。





結核症→細菌の感染症です。


 
    結核菌のヒト型菌が感染して発症したものです。大部分が肺結核ですが、結核性髄膜炎、結核性頚部リンパ節炎、結核性慢性関節炎、腎結核などがみられます。小児の感染は大部分が家族内感染です。しかし小児が集団の中(保育園、幼稚園、学校)で生活するようになって、その集団の大人から感染することがふえています。最近は、小児1万人あたり約2人の有病率です。その約3分の1が活動性結核であるといわれ、病巣は大部分が肺です。結核菌の感染によってツベルクリン反応が陽転をすると、その約6ヶ月以内に発病するものが50〜80%といわれています。とくに幼弱乳児では重症化しやすいので、発病予防のための治療をすべきといわれています。



ぎょう虫症→寄生虫の感染症です。


 
    寄生虫です。長さ約1cmの白っぽいたこ糸ぐらいの太さの虫です。夜間に肛門がかゆくなりますが、これは直腸からでてきて肛門周囲に卵をうみつけるためです。かゆいので肛門に手がいきますが、この時指についた卵はその人がさわったところへばらまかれます。その場所をさわるとさわった人の指に卵がつきます。卵がついた指を口に入れれば感染が成立です。こうして人から人へ感染していきます。このため集団生活や家庭内で感染することが多い病気です。

注意:こどもたちが集団生活をするようになって、家族の中で「集団生活をしている子だけが感染している」ということが多くなりました。しかし人から人へうつる病気ですので家族全員の注意が必要です。







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