解説&エッセイ アトラス出版編集人・中村英利子

第一回「講座をはじめるにあたって」

 編集ということばは知ってるけれど、どんなことをしているのかわからない、と皆さんからよく言われます。漠然と、文章の間違いを直したりすることなのかな、と思っている人もいるみたいです。
 そういうのもやりますが、実はもっとたくさんやることがあります。言うなれば編集者とは、本づくりのいろいろなプロセスで、「ここはこうしよう」「ここはこうした方がいい」と、アドバイスしたり、決めたりする仕事をしておりまして、出版を山登りにたとえればナビゲーター(案内人)みたいなものといえます。
 そう聞いても、ピンと来ないと思いますが、講座が進むにしたがって追々わかってくると思います。
 世の中には「編集に関する本」がたくさん出版されています。また、都市部なら、編集について教えてくれる学校やセミナー、養成講座などがあって、学ぶ機会に恵まれています。将来、出版関係の仕事に就きたい、あるいは編集者になりたいという人なら、そういうところへ行って勉強するのが近道でしょう。でも、本だけで独学するというのはなかなか大変ですし、地方に住んでいて、都会へ行って勉強すること自体、難しいという人も少なからずいるのではないでしょうか。
 そういう人たちにこの編集講座が役立ち、〝本づくりって楽しい〟と思っていただければ嬉しいですし、文章だけでわかりにくければ、実際にお会いして説明することもできるのではないかと思ったのが、そもそもの開講の動機です。
 実は、かくいう私も元々はライターだったのですが、編集の経験がある夫からいろいろなことを教わり、実際に仕事をしながら学んだことがたくさんありました。年齢を重ね、いくぶん暇もできてきましたので、それを今度は皆さんに役立てていただけたら、という〝お返し〟のつもりです。ですから、この講座は、あまり堅苦しくならないよう、私の体験などもまじえながら、編集について解説していきたいと思います。
 ところで、この講座は誰でもご覧になれますし、わからないことはメールで聞いていただいても大丈夫です。定年を迎えて「暇だな……」と思っている方でも、もちろんOKです。本づくりの参考にしていただけたら嬉しいです。

中村英利子プロフィール

アトラス出版編集者&フリーライター
愛媛県松山市出身 1948年生まれ
東京でライターを経験後、松山に帰郷。文化誌「Atlas(アトラス)」編集長などを経て、愛媛で出版の仕事に携わる。

著書および編著書
『兵頭精、空を飛びます! 日本初の女性パイロットの物語』
『走れ、坊っちゃん列車 日本初の軽便鉄道ものがたり』
『海と真珠と段々畑』
『漱石と松山 子規から始まった松山との深い関わり』
『宇和島をゆく 新宇和島文化紀行』
『新松山紀行 歴史と文化・再発見の旅』
『水郷の数寄屋 臥龍山荘』ほか、企業人の伝記、社史などを執筆。
アトラス出版ムック(『肱川紀行 南予を流れる異端の川』『郡中町家物語 伊予市灘町・湊町の歴史と文化を訪ねて』『内子新風土記 内子の町並み、村並みを歩く旅』『海賊の島 しまなみ海道ロマン紀行』『山頭火と松山 終焉の地・松山における山頭火と人々』の編著など


愛媛出版文化賞『兵頭精、空を飛びます』
愛媛出版文化賞『水郷の数寄屋 臥龍山荘』(取材・執筆)
ATG(アート・シアター・ギルド)映画脚本賞優秀賞
NTTタウン誌大賞奨励賞「季刊atlas」

その他の制作物と執筆
「文化愛媛」「えひめ雑誌」(執筆)「田舎暮らしの本(宝島社)」取材・執筆
「ウッディ専科(婦人生活社)」取材・執筆
愛媛県広報誌「Ehimailエヒメール」(制作)
松山市グラフ誌「松山城」「坂の上の雲」特集号(執筆)
愛媛新聞コラム「四季録」執筆ほか

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