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最近の自由曲の選曲について

H15年卒 酒井 敬彰

  今年もまた夏のコンクールの季節がやってきました。この時期にもなるとどの団体も必死になって練習し、課題曲、自由曲を作り上げています。そのように各団体が時間をかけて練り上げてきた演奏を一度に聞くことのできるコンクールはただ聞いているだけでとても興味深いものです。どの団体も少しでも良い演奏を…、そして代表に…と狙っている訳なので、演奏する自由曲も自然と大作、聞き栄えのする作品に集中するのです。「抜けれる曲」というのも、暗黙の了解として存在しているように思われます。では、選曲の点から見て、どういう作品を演奏すれば高い評価を得ているのでしょうか。近年の全国大会などを参考に考えてみたいと思います。
 やはり一番多いのはオーケストラからのアレンジ作品です。しかもそれらは「ローマの祭」「ダフニスとクロエ」「サロメ」「中国の不思議な役人」など近現代の大編成作品が中心です。東高が今年演奏する、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」もこの分類に入ります。このような作品は、長い歳月を経ても色褪せず残っているだけあり、実際吹奏楽で演奏しても飽きのこないものです。しかし一方でオケ版と比較すると、やはり物足りなさが残るのも事実です。またあるパートだけ、負担が大きくなってしまう場合もあります。
 次に挙げるのは、オペラやミュージカルから抜粋し編曲したものです。これは近年増えてきたジャンルで、代表的なものにはメリーウィドウセレクションやトゥーランドットなどがあります。これらの作品はもともと純器楽曲ではないので、指まわしなど技術面ではやや易しいと思われます。しかしこれらの作品を演奏するには「歌」が要求され、楽器でいかにメロディを歌うかということが、演奏の良し悪しを左右する大きな鍵となります。
 そして、もう1つは吹奏楽のオリジナル作品です、最近よく演奏されるものには、ギルガメッシュ、アルプスの詩、3つのジャポニズムなどがあります。これらの作品はもともと吹奏楽のために書かれたので、どのパートにも極度な負担はなく、演奏効果も上がりやすいと思われます。また近年、各団体ごとに作曲者に直接委嘱し、作品を演奏する場合も増えています。しかし問題なのは、その作品本来の価値を見究めることが難しいことです。派手な効果ばかりを重視した作品は、一時的に急激にもてはやされますが、廃れていくのも驚くほど早いのが現実です。このようにどれを選ぶにしても一長一短で、これが一番というのはありません。しかし選曲で最も重要なのは、いかにしてそのバンドの良さ、独自のカラーを表現できるかという事だと思います。個性があり、聞き手に何か訴えようとする音楽は必ず評価されています。今年のコンクールでも様々なジャンルの作品が演奏されるでしょう。各団体がその音楽から何を引き出そうとしているのか…。そんな事を考えながら演奏に耳を傾ければ、コンクールの別の一面を楽しめるのではないでしょうか。



  


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