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課題曲はだれかの青春の思い出

<指揮者紹介>  雀荘と 名曲喫茶と ボーリング 10年続いた 青春の日々

●井手 浩一(S47年卒) 

 先日、とある芸術家の先生が、次のような話をするのを耳にした。
「芸術の上達には、いろいろと恋をすることも必要である。」
そういえば、昔、よく似た言葉を言われたのを思い出した。
「一度(大)恋愛して、振られたら、音色も変わってくるんだろうなあ。」
20年近く前だろうか、井手さんの一言であった、と記憶している。


 音萌の会に参加して20年以上が経つが、ずっと井手さんには、演奏会での指揮はもちろんのこと、会自体の運営でもお世話になりっぱなしである。
(今も、私がこの原稿を書いている隣で、司会の合田さんと進行の打合せをしている最中である。)
そんな井手さんが、先日、合奏中に、
「最近は自分の好きな曲を演奏させてもらうことが多いが、そのたびに自分の持つ曲のイメージが壊れていくので、今回はそうならないようにして下さい。」
以前なら、もっと厳しくビシビシと指導していたような…と思うと、20年という歳月の流れを感じずにはいられないのである。
 しかし、数日後、
「この最近、いい音楽を作るには、正確に演奏するのが一番だと思うようになりました。」
当然とはいえ、演奏する側に一番厳しいことをさりげなくおっしゃるのである。
 何はともあれ、今も昔も、音楽に対する深い情熱と高い理想は変わっていないのだろう、と感じるのである。

<曲目紹介>

▼行進曲「マリーン・シティ」 (野村 正憲・藤田 玄播 作曲)
 平成2年度全日本吹奏楽コンクール課題曲D。力強いtuttiの導入後、海辺の町に吹くさわやかな夏の風を思わせる旋律。曲全体に流れるシンコぺーションの軽快なリズムとなめらかなオブリガートが心地よい。

▼天国の島 (佐藤 博昭 作曲)
 平成23年度全日本吹奏楽コンクール課題曲U
 TOKIOが出演するNTV「鉄腕DASH!」の人気コーナーのひとつ、「DASH島」のテーマとして使われたことで有名になった。作曲者の佐藤博昭は北海道北西部に位置する天売島の中学に、音楽教師として1年間勤務した。島から眺める雄大で美しい景色。この島に住むことで感じた本当の魅力を描いた曲だという。

▼セドナ序曲 (S・ライニキー 作曲)
 オハイオ州ケッタリング市民吹奏楽団の創団40周年を記念して委嘱を受け、2000年に作曲された。アリゾナ州セドナの景観に着想を得て書かれた作品である。セドナとは個性的な形をした赤い砂岩の岩山に囲まれた場所である。岩山には、「ベルロック」、「カセドラルロック」などの愛称が付けられており、古来、ネイティブ・アメリカンが聖地とあがめた場所。

▼天馬の道〜吹奏楽のために (片岡 寛晶 作曲)
 平成20年度全日本吹奏楽コンクール課題曲W
天馬の道〜吹奏楽のために〜は、2009年度吹奏楽コンクールの課題曲の1つである。冒頭はミステリアスな雰囲気を持つゆったりとした12/8拍子で始まり、やがてテンポが上がり、拍子が変化するにつれ、徐々に辺りの風景が明らかになって来る。題名の通り《天馬》が天空高く舞い上がっていく様を思わせる。いかにも若い作曲家らしく力の籠もった変奏曲である。

▼カンタベリー・コラール (J・ヴァン・デル・ロースト 作曲)
 カンタベリー・コラールは、ベルギーの作曲者ヤン・ヴァン・デル・ローストがイングランド南東部にある英国国教会の総本山《カンタベリー大聖堂》を訪れた際に得たインスピレーションを基に、1990年に作曲された。当初はベルギーの著名なブラスバンド(金管バンド)の依嘱によって作曲されたが、後に吹奏楽版とファンファーレバンド版が編曲された。曲は敬虔な雰囲気で始まり、放物線のような盛り上がりを見せ、やがて全楽器によるクライマックスを作り上げた後、教会の鐘を連想させるチャイムの音と共に虚空へ消えて行く。








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