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イギリスコンサートホール考

1985年卒 高橋 史明

早いもので在英15年になる。音萌OBの端くれの私ではあるが、今でも年に数回は当地のコンサートホールにクラシック鑑賞に出かける。あくまでも私見で恐縮だが、OB各位のご来英時のご参考までに各ホールを印象の強い順(私の好きな順)にご紹介したい。

@Cadogan Hall:ロイヤルフィルの本拠地。元教会の建物をハロッズオーナーのアルファイドが自宅用に購入したが、改築許可が下りず転売。その後今世紀になってから905席のコンサートホールとして生まれ変わった歴史を持つ。結構お金をかけて改修したようで残響はあまり気にならず、元教会というのは言われないと分からない。ここで聴いたテミルカーノフ指揮サンクトペテルブルグフィルの演奏には心底感動した。ちなみに葉加瀬太郎も今井美樹も定例的にここでコンサートを行っている。

ABarbican Hall:LSOとBBC交響楽団の本拠地。1950席のサッチャー政権下で作られたホール。こけら落とし当初は残響時間に難があるといわれていたようだが、天井を高くしたり反射パネルを設置する改修工事を何度か行った結果、音響についてはロンドン市内のホールの中で現在一番ではなかろうか。同じ敷地のバービカンセンター内にギルドホール音楽院や居住用フラット(日本でいうマンション)がある。リタイアしてここに住めば、毎日バービンカンホールが楽しめる。

BRoyal Festival Hall:同級生のN響首席ホルン奏者今井氏が一年前に欧州ツアーで演奏したホール。ロンドンフィルとフィルハーモニア管弦楽団の拠点で、1951年築の2900席。低音の響きが不足がちというのが定評だが、あまり感じない。逆にコンチェルトなどでは独奏楽器の音がきっちり際立って聞こえる気がするところが良い。ただ、オンラインで座席をとるときには注意が必要だ。私は間違えて、今井氏のホルンが全く見えないコントラバスを見上げる席を取るという失態をおかしてしまった。

CWigmore Hall:1901年完成したいわゆるヴィクトリア様式の建築。552席ということで、室内楽が中心である。会場が長方形型のフラットな箱の中に収まっている感じで、前列を予約しないと演奏者が全く見えない。そのためホールには子供用にとても分厚い座布団が備え付けられている。音響は良いといわれるが、個人的には何か物足りない。平たく言うと、「華がない」。

DRoyal Albert Hall:収容人数7000人のとにかく巨大で豪華なヴィクトリア様式の歴史的建築物。BBCプロムスで有名。日本の大相撲が来た時もここで興行されたと聞いた。大き過ぎて音響は全くだめ、自分の音すらよく聞えず演奏者泣かせでもあるというのが定評だが、昨年のプロムスでバーミンガム市響が演奏したときは音が高い天井まで届きまさに神の領域。この場所で初めて音楽で感動を覚えた。

以上、自身の評を客観的に総括すると、最近は日常生活で音楽から離れているせいか、好みがホールの音響そのものでなく、ホール内部の「みてくれ」に左右されている感は否めない。その辺を割り引いていただき、皆様のご参考になれば幸いである。ちなみに音大に通っている長女(ヴァイオリン専攻)によると、音響については、ロンドン市内はWigmore Hallがベスト、英国全土に対象を広げるとBirmingham City Hallが良いとのこと。末筆ながら、皆様、英国にお越しの際は是非ご一報を。



 

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