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防災士で治水事業に興味があるおーもとの場違いな記事です。
豪雨災害について 

平成6年卒 大元佳奈

 2018年7月7日、愛媛県大洲市では肱川が氾濫し市街地まで冠水した。多くの被害をもたらしたこの災害はどうして起こったのだろうか。
 2018年2月18日。私は大洲市肱川山鳥坂にある鹿野川ダムの見学会に行ってきた。このダムでは改造事業が行われており、国内初となる、ダムにトンネル方式の放水路を通すトンネル洪水吐きの工事が行われている。貯水池に貯まった水をこのトンネルを通して下流の河川に流すことにより、洪水調節容量を1.4倍に増やすことができるのだ。
 このトンネルは完成すると中は水で満たされ、もう見られなくなるので通水前の見学会が行われたのである。急な工事用足場を50mほど下って、ようやくダムの底に到着。巨大なトンネルを拝むことができた。トンネルの直径は12.35m、全長457m。写真の黒い影が見学者である。トンネルの大きさが分かるであろう。ここをやがて600㎥/sの水が流れていくのだ。この時は、ただただ大規模な建設工事に興奮し、災害を防ぐ人類の技術と英知を疑いもしなかった。

 今回の事業ではダムの洪水調節開始水位を現在の81mから76.3mに下げる予定である。これにより洪水調節容量が増すのである。しかしそれでは76mの高さにあるクレストゲートを使っての放流ができない。そこでトンネルによる放流が必要になるのである。上述の600㎥/sが下流域に浸水被害を起こさない流量と規定されている。これを超えるまでは流入分をそのまま放流し、洪水量を超えるとダムに水を貯め始める。
今回の豪雨のとき、鹿野川ダムでは通常どおり600㎥/sを放流していた。肱川流域には堤防が整備されてない地域が多く、放流量を抑える必要があったのだ。しかし、雨量の増加により貯水池の水位が急上昇。7日午前6:33には850㎥/sに放流量を増加させたが、その1時間後には異常洪水時防災操作を開始し、最大放流量は8:43に3742㎥/sであった。この緊急放流は4時間続き、下流域に大きな被害を招いてしまった。
もし、ダムの改造事業が山鳥坂ダム建設、堤防整備とともにすべて完成していればもちろん今回の災害は防げたであろう。では、現状の鹿野川ダムで、今回の放水量の調整は最良の選択だったか。安全と規定している600㎥/sを維持し、人々が避難する時間を稼ぐ判断。しかし住民は避難指示に即行動を開始できたのだろうか。警報所より放流警報がスピーカーから2回放送され、1分間サイレンが鳴り、10秒休止、また1分間サイレンを計5回吹鳴。その後は警報車による放送、警報表示板は4カ所。通常放流のお知らせに慣れてしまっている住民は、どれほど危機を感じ得たのであろうか。
これはダム流域に限らず、テレビやスマホで避難準備情報を目にした我々にも言えることであるが、狼少年の例を出すまでもなく、速報に見慣れてしまって、危険が迫ってきている意識がかえって麻痺してはいなかっただろうか。
 今回の災害を受けて、鹿野川ダムでは警報のあり方を見直し、より切迫感が伝わる伝え方に変えるそうである。しかし、人はまたそれに慣れてしまい危機感が薄れていくのではないだろうか。

 避難準備情報、避難勧告、避難指示。あなたはいつ避難行動を開始しますか?


高さ76mにあるクレストゲートを使って放流する。




 

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