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17歳の夏とR.シュトラウス      

(現役三年・オーボエ)今村 早希


 〈英雄の生涯〉に〈ばらの騎士〉。東高は今年、空前(?)のR.シュトラウス・ブームを迎えています。R.シュトラウスといえば、映画「2001年宇宙の旅」の冒頭に響く〈ツァラトゥストラはかく語りき〉が有名なように、その旋律はどれも印象的なものばかり。今日はそんなR.シュトラウスについて、私が〈英雄の生涯〉を練習する中で感じたことを思いつくままに書いてみたいと思います。

 まず、この〈英雄の生涯〉は全部で六場面から成り立っているのですが、今年私たちがコンクールで演奏する予定なのはこのうちの三場面(T.英雄、W.英雄の戦場、Y.英雄の引退と完成)です。因縁の敵と戦い、ついに勝利を収め栄光を手にする・・・引退後は静かに余生を送り、やがて堂々とこの世を去る・・・そんな世界史上に残るような、強くてカッコイイ英雄が思い浮かびませんか?
 ところが、R.シュトラウスが描いた「英雄」は、歴史上の人物でも架空の人物でもなく、作曲者である自分自身であるそうです。この〈英雄の生涯〉は、R.シュトラウス自身が批評家と戦う様子を表現していたのです。
 自分のことを英雄に見立てるなんて、今の私たちからすれば「そんなのあり!?」と言いたくなるような展開です。しかし、少し見方を変えて、この「英雄」はR.シュトラウスの自分に対する「自信」ではなく「決意」の現れだとしたら、どうでしょうか。批評家たちに負けず、自分の目指す音楽に向かって突き進んで行くことは、決して簡単なことではありません。彼には本当に強い意志と覚悟があったのだと思います。だからこそ、彼は現代でも「交響詩のパイオニア」として多くの人に親しまれているのではないでしょうか。 そして、意志の強さという面では私たち現役部員も負けてはいません。全国大会に行きたい。最高の演奏をしたい‥‥‥‥
 特に、もうすぐ引退を迎える私たち三年生はその思いもひとしおです。奇遇にも、〈英雄の生涯〉のラストを飾る楽章のタイトルは〈英雄の引退と完成〉。実際には英雄が「死」を迎える部分であり、R.シュトラウスが自分の「死」への思いを英雄に託しながら作曲したであろう部分です。残念ながら、今の私には「死」への思いは想像できません。でも、このメンバー、このステージでこの曲を演奏することは、もう二度とないかもしれないと思うと、「引退」にも重みを感じ、静かに流れる旋律が何だかとても切なくて、尊いものに思えてならないのです。

 この感動を、私たちも伝えたい。高校生、十七歳の今しかできない表現は、必ずあると思います。そのためにも悩み、練習していきたい!
 とはいえ、さすがは難曲。「吹きたい」気持ちだけでは前に進めません。まだまだ道のりは遠いですが、現役一同精一杯頑張りますので、これからもよろしくお願いします!!




  

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