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いでかいちょうの怒濤の夏                         47卒井手 浩一

 いやー暑かったですね今年の夏は。でも演奏会が無事終了して、今はほっとしています。
Tさん、怪我の具合はどうですか?来年はまたもとの元気な姿を見せて下さい。
 直接運営に関わっているとどうしても出来栄えをひいき目に見てしまいますが、今年はまず成功の部類に入るのではないでしょうか。財政面も、今年くらいの演奏会の規模であれば楽ではないにしても、何とか赤字にはならずにすむのではないかと思っています。
 この成功の原因はまず第一に尾崎君の熱意にあります。私は仕事柄夏場はまずまず時間の融通がきくのですが、彼は大変だったろうと思います。仕事に追われ、残業や日曜出勤をこなした上であの活躍振りですから、頭が下がります。さらに弥生ちゃん、坪田さん、大元さん、水摩さん、宮内さん、山根さんたち松山在住の若手会員の努力にも多くを負っています。プログラム一つをとってみても、曲目解説の隅々まで神経の行き届いた丁寧な仕上がりでした。そのほか飛田君、門田君、平野君、石橋君、冨永君など沢山の人にお世話になりました。また低音楽器担当というだけで、毎年黙々とトラックの運転や楽器運びをしてくれる白石君や米子君、河本君にも深く感謝します。あまり表には出ないところのこうした協力体制がなければ音萌の演奏会は成り立ちません。森田先生や高校生の皆さんにも快く協力して頂いて本当に助かりました。また、野本君の松山工業の二人の生徒さんと一緒にやれたことも貴重な経験となりました。とても素直で熱心な高校生たちで、これで音楽の輪が少しでも広がっていったらいいなと思います。また一緒にやろうな。       
 反省を少し。広い練習場所を確保できたのが前日だけとなってしまい、打楽器の皆さんにはご迷惑をかけました。また、前日から当日にかけては苛酷な練習スケジュールを組まなくてはならず、皆さん大変だったろうと思います。来年は本番の直前に土日がはさまるのでかなり楽だとは思いますが。ただ私も尾崎君も二日前の時点では「本当に演奏が成り立つんだろうか?」という強烈な不安感に襲われていましたので、あれはやむを得なかったのです。本番の日以外にせめて三日間はステージに乗るフルメンバーで練習したい、というのが指揮者陣の切実な願いです。三日間あれば何とかバランスも取れますし、濁った音も追放できます。やっと演奏に必要な音が全部揃ってこれから「音楽」が造れるというところで本番を迎えてしまうのですから、本当にもったいない話です。音楽の入り口まで行って引き返すようなものです。夏休み中とはいえ皆さんそれぞれ忙しいのは分かっていますので無理は言えませんが、少しでも多く練習会場に来られるよう改めてお願いします。連日の私の電話攻勢の被害に遭われた方にはここで深くお詫び致します。
 曲の難易度は・・・これは非常に判断が難しい。去年よりは明らかに易しかったと思いますが、卒業してからあまり楽器を吹いていない人の参加を想定すると恐らくまだ難しすぎるでしょう。しかし公開の演奏会である以上、そこそこの難易度の曲がないと聞く側には物足りないものが残るとも思います。参加された方の率直な感想をお寄せ下さい。
 今年の本番も例年以上に厳しい情勢で、私は最後は「止まったら止まったでいいや」と開き直っていたのですが(そう割り切らないと前夜はとても眠れなかった)、不思議にあがらず平静にやれました。あれは本番直前の男性控室でのバカ話で緊張がほぐれたせいではないかと思います。髪の毛が不自由になっていく話とか局部的な肥満の話とか小さな活字が見えなくなっていく話とかね(誰がどう具体的に不自由かは内緒)。
私は毎年あの控室での雑談で気分のいらつきを押さえ、精神のバランスを取っています。みんなで大きな風呂に入っているような安らぎがあります。それと今年は控室にふらっと現れた栄養寺住職に演奏が止まらないように般若心経をあげてもらったので、その功徳があったのではないかと思います。あのトスカニーニばりの快速、イン・テンポのお経には素晴らしい迫力がありました。彼はひょっとして高僧智識なのではないだろうか。会員の皆さん、彼の頭をなでてみたら御利益があるかもしれませんよ。
 しかし、綱渡りの連続でもOB会でやる音楽はやっぱり面白いです。みんな違う場所でそれぞれの音楽を育んでいて、それを持ち寄る面白さです。逆に言うとそれぞれ信じているセオリーが違うので一本にまとめるのは大変でもあるのですが。先日樫の木の会長さん(同級生)と久しぶりに会いました。向こうも結構大変だそうです。でもいっぺんやめてしまうと再開は非常に難しいだろうということで意見が一致しました。私はみんなが音萌の会のために何らかの形で協力しようという空気が残っている限りは大丈夫だと思っています。ただ、これからは相当努力して高校生との新しい繋がりを作っていかないとOB会に未来はありません。黙っていても元気な新入会員が増えていく時代は終わりました。現在の音萌の会は率直に言って若手会員を引き付けることには失敗しています。会の行事に出て来る人は本当に熱心に良くやってくれますが、その数があまりに少ない。尾崎君や森田先生とこのことについてはよく話しているのですが、即効薬は恐らくありません。焦らず気負わず、付き合う機会を徐々に増やしていくしかないと思います。若い会員の皆さん、出て来たら結構楽しいもんですよ。億劫がらずに気軽に顔を見せて下さい。
 それにしても音萌の演奏会は忙しい。練習の合間はワープロ打ちやもろもろの打ち合わせや、楽譜や楽器の調達やホームページのゴシップの弁解に追われ(おーもっちゃん、絶対ジロジロは見てないぞ。そりゃちらっとは見たけれど)(←例のTさんのミニスカートのことですね)、久しぶりに会う人もたくさんいたのに挨拶を交わすだけで精一杯でした。ああ◯◯さんだ、しばらくみないうちにびっくりするくらい綺麗になったなと内心思っていても、遠くから手を振ってにっこり笑うぐらいしかないのですね。うーん残念。時間があれば伊藤君や水田君や冨田君たちと飲みに行って、ゆっくり音楽談義もしたいのですがそういうヒマもありません。やっぱりもう何日か早めに帰ってきて欲しいよなあ。無理かなあ。
 さて久しぶりにえんばんを買いに行こう。尾崎君や鹿嶋君ばかりに買われてなるものか。別に枚数を張り合っているわけじゃありません。しかし、私の知らないところで、誰かが今まで聞いたこともないような美しい音の詰まったえんばんを買ってしまうのではないか、そしてそれはもう二度と手に入らないんじゃないかという恐怖心は拭い去れません。この気持ちはたとえ一万枚のえんばんを持っていようが同じだろうと思います。「誰も聞いたことのない美しい音」がこの世に存在しているのかいないのかは分かりません。そんなものは幻影にしか過ぎないのかもしれないし、それを聞いたからといってどうなるものでもありません。しかし、もしあるのならそれはどうしても聞いてみたい。随分効率の悪い、回り道だらけの趣味なんですが。

人間は、時として、満たされるか満たされないか、わからない欲望のために、
一生をささげてしまう。その愚をわらう者は、畢竟、人生に対する路傍の人に過ぎない。

芥川龍之介

 


長い〜っ!お願いだからパソコンで打ってぇ(泣)。


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