「再びの 命得し夫 花は葉に   幸江

愛媛新聞婦人俳壇(平成12年6月27日)
                                   今井千鶴子選


はじめに

 B先生に往復メール公開についてご相談いたしましたところ、快く了解して下さいました。
 私的な往復メールの公開には躊躇いたしましたが、B先生から、増加しつつある前立腺がんの患者さんにお役に立つ情報だから、と激励され、敢えて公開させていただくことにしました。
 「省略」の部分は、季節の挨拶や私的な内容にかぎり、ほとんどそのまま掲載させていただきました。また、名前や固有名詞はアルファベットに置き換えております。
 B先生の専門家としての懇切丁寧な心のこもったご意見やご指導、それに対し、まるで聞分けのない子どものように、手術をできるだけ避けようとする一人の人間の弱さをお読みとりいただければ幸いです。


経尿道的前立腺切除術を受けるまで

B先生へのメール:お世話になります
(平成11年12月3日)
(前略)この度は、色々とご高配賜り心から御礼申しあげます。
 最初にご相談の電話を差し上げたとき、「バイオプシーの結果が出たら直ぐ連絡するように、後のことは任せておけ」とのお言葉は、生涯決して忘れることはないでしょう。
 J総合病院のU先生も扱いにお困りであったようで、「E大での結果に多少ホッとしています。当院の病理の先生も、cancer とすべきかどうか大変悩まれたそうです。やはり、先生が決断された経尿道的前立腺切除術(経尿道的生検)が最も妥当な方法だと思います。十分量の組織を採取してから最終的な診断をつけた方が正確だと思います。悪性所見が出ても根治は可能だと思いますので、十分に精査、加療してもらって下さい。」との励ましのメールをいただきました。
 Y教授のご再診日を前に、目下のところ、日常の診療と、公的な健診、予防接種、当直などの出務は平常通り行ってはいますが、私的な会合は失礼させて貰っています。
 おかげで、色々と身辺の雑事を一つずつ片付けることができます。
 ところで、私は毎日1万歩以上、79か月間、1日も休まず続けています。入院手術により、この記録が途切れるのは一寸悔しい気がいたしますが、考えてみますと、「歩いていたのではなく、歩かせていただいていた」のですね。(後略)

B先生からのメール:RE
(12月4日)
(前略)現在の不安なお気持ちは良く理解できますが、経尿道的前立腺切除術は熟練の泌尿器科医にとっては、それほど難しいものではなく、デスクワーク程度であれば仕事もすぐに可能ですので本当に安心して戴いて宜しいかと存じます。
 Y先生とも話しをしていたのですが、術後に病理を十分に検索することは当然としても、手術後にPSA値が下がることを期待しましょう。(後略)

B先生へのメール:RE
(12月5日)

(前略)なまじっか医師である悲しさ、色々と思い悩むことが多いのですが、「まな板の上の鯉」の心境であることは仕方ありませんね。
 先生からの力強いお言葉に、救われる思いです。昨日は、暗くなるまで植木の剪定と枯れ木の整理、今日はN市の孫に会いに行って来ます。(後略)


B先生へのメール:再診結果ご報告
(12月9日)
(前略)本日、Y教授の診察を受けました。直腸診、エコーなどの後、採血、EKG、胸部及び腰部レ写などの検査を受け、1時間ほどで全て終わりました。
 手術法については、全部を切除し、更に外腺部のバイオプシー(?)をしていただくことになりましたが、その際起こるかもしれない後遺症についても説明がありました。
 万一のことがあったとしても、そのときはそのときと、迷うことなく最善の術式を選んでいただくことにしました。大変詳しく、しかもわかり易くご説明いただき、安心して手術日を迎えることができます。
 これ偏に先生のご高配の賜であり、心から感謝申し上げます。

B先生からのメール:RE
(12月9日)
(前略)外腺部のバイオプシーの件ですが、今回の経尿道的切除では、内腺部は十分に切除できるとしても外腺の切除まではなかなかできませんので、この際、再度バイオプシーを併試すれば万全ではないかと、先日、Y先生と話しをしたところでした。
 私もこの方法が良いと思います。すべての切片が良性であれば安心できますよね。手術自体は大した物ではありませんので、安心して手術を受けて下さい。成功を祈っております。

B先生へのメール:RE
(12月10日)
(前略)外腺部のバイオプシーの併試など、Y教授と万全の対策をお考えいただき心から感謝いたします。
 前立腺の解剖が具体的にわからず、あれこれ想像しても仕方ありませんので、全てY教授のご指示に従います。
 それにしても、数日間の休診がこんなに大変であるとは想像もしていませんでした。
 開業以来、病気で休診したことはなく、外見上は全く元気ですので、患者さんに休診理由を説明するのに苦労しています。
 事務員や看護婦も困っているようです。(後略)

平成11年12月21日入院、22日手術、27日退院

B先生へのメール:退院後1日が経ちました
(12月28日)
 この度は先生のご高配により、何事もスムーズに運ばれ感謝の言葉もございません。(中略)
 退院してまる1日が経ちました。朝から通常どおりの診察を始めましたが、年内休診と予告していましたので、患者も少なく、ポカリスエットを飲んでは排尿を繰り返しました。
 未だ血尿は続いていますが、凝血は全くありません。ただ、排便時には腹圧がかかるためか折角薄くなっていた血尿が少しひどくなるようです。
 病理の結果は年明けとなり、すっきりしない年末年始を過ごさなければなりませんが、今は静かに黒白を待ちたいと思っています。(後略) 

B先生からのメール:RE
(12月29日)
(前略)前立腺の術後の経過としましては順調と思います。ただし長時間の座位や息むことは出血の原因となりますので、特に便秘にならないように注意をすることが大切です。
 膀胱に尿が充満することも出血の原因となりますので極力早めに排尿して下さい。恐らく1ヶ月ほどでほぼ普通の生活に戻れるのではないでしょうか。それまでは半分入院しているぐらいの気分でおられるほうが回復は早いと思います。
 主治医から聞かれたとは思いますが、切除した前立腺部尿道は現在欠損しており(かさぶた状態です)、この部分が正常粘膜に被われるまでに約2、3ヶ月を要しますので、この期間はあまり無理はなさらないほうが良いと思います。
 出血するということは、かさぶたを無理矢理はがすことと同じですから、それだけ傷の治癒が遅れることとなりますし尿道狭窄の原因ともなりかねませんのでご注意下さい。病理の結果が異常無いことをお祈りしております。(後略)

B先生へのメール:RE
(12月29日) 
(前略)専門家としての極めてわかりやすいご指導有難うございます。
「膀胱に尿が充満することも出血の原因となりますので極力早めに排尿して下さい。」とのことですが、私もどうもそのような気がして尿意を待たず、力をいれないようにそっと排尿するようにしています。
 一つお教え願いたいのですが、素人考えでは、水分を沢山とり、尿の回数を増やしますと、そのたびに「かさぶた」がとれるとも考えられるのですが、いつ頃まで、1日に2000ml以上の水をとり続けなければならないのでしょうか。
 点滴を抜いてもらったとき、O先生から「水分をできるだけとって洗い流して下さい」と言われ、以後それを忠実に守っております。
 もともと、お茶が好きで毎日煎茶やほうじ茶をよく飲んでおり、排尿の回数も多い方であると思っています。(中略)
 当分の間は、ご忠告を守り、「半分入院しているぐらいの気分」で無理をしないように努めます。(後略)

B先生からのメール:早目の排尿
(12月29日)
(前略)疑問点についてお答えします。
 前立腺切除部分(前立腺床と言います)を経時的に観察しますと、最初は白色調の綿状の組織塊がもこもこという感じでたくさん付着しております。皮膚のかさぶたとは性状は当然ながら異なります。この部分は易感染性であり、専門用語で言えば前立腺床炎を来たしやすい状態なのです(綿の部分には雑菌「ブドウ球菌など」が付着しやすい)。
 前立腺床炎をきたしますと正常粘膜に被われにくくなり(いわゆるケロイド化)、尿道狭窄を来すことにもなります。そこで、たくさん水分を摂取して、この綿状のかさぶた(表現があまり適当でないかもしれませんが)を洗い流すことが、正常粘膜新生を促す早道なのです。
 1ヶ月目ぐらいに観察しますと、綿状のかさぶたは薄くなっており、正常な粘膜に被われる準備体制となっていることが判ります。
 また傷の治りが早い人では、すでに膀胱側と尿道側から正常粘膜が張って行っているのが観察されます。そうして2,3ヶ月で前立腺床はすべて正常粘膜に被われることとなるのです。
 また膀胱になるべく尿を貯めないということは、膀胱炎予防と同じ発想であるとともに、前立腺術後は前立腺床部分にも尿が貯まるわけですから(内尿道括約筋は切除されております)、この部分が拡張することで傷に刺激を受けることがないようにするという意味合いもあるのです。(後略)

B先生へのメール:RE
(12月30日)
(前略)詳しいご説明をいただき有難うございました。水分は度々とるように努めます。セックスについてはY教授からも「禁忌」とお聞きしております。ご指示は必ず守ります。(後略) 

B先生からのメール:RE
(12月30日)
(前略)最も聞きたいこと(いつごろまで多めの水分摂取が必要か)に答えてなかったですね。一般的には傷が治るまでということになります。
 術後2、3ヶ月まででしょうか。摂取する量につきましては個人差がありますので、私はおなかをこわさない程度で、少量を頻繁に摂取して下さいと指導しております。
 また性交渉が問題となりますが(80歳代の方で、大出血して再入院したこともあります)、大事をとれば術後3ヶ月は辛抱して戴きたいですね。

平成12年:前立腺がんの診断確定から手術まで

B先生へのメール:明けましておめでとうございます
(平成12年1月3日)
(前略)早速ですが、その後の経過をご報告させていただきます。
 おかげさまで、排便時に出ていた微少血尿も、昨日から殆ど見られなくなりました。ただ、排尿直後、一寸した違和感が残っていますが、これも直ぐおさまります。
 水分摂取に努めながら、尿瓶にとった尿色に一喜一憂しながらの年越しでしたが、やっと落ち着きました。
 やはり、尿色が元通りになるには2週間はかかるのですね。(後略) 

B先生へのメール:Y先生から陽性とのお電話がありました
(1月4日)
(前略)既にお聞きかも知れませんが、Y教授から先ほど陽性とのお電話をいただき、6日(木)にお伺いすることになりました。今後のことは、そのときご指示下さると思いますが、覚悟をして参りたいと思っています。(後略)

B先生からのメール:RE
(1月5日)
(前略)昨日は私は午後から不在でしたので、結果につきましては先生からのメールで初めて知りました。陽性ということですが、当然ながら病期は初期の段階ですから、慌てることはないと思います。(中略)私の方からもY教授に問い合わせてみます。

B先生へのメール:結果について
(1月5日)
(前略)検査結果については、Y教授に当日詳しくご説明を受けたいと思い、陽性所見の部位や程度についてはお尋ねしませんでした。初期であることを願っています。
 12月28日(術後6日目)に、当方で検査センターに出した結果が昨日返ってきました。
 ○ 術前(10月8日)
  PSA 15(基準値4.0以下)、γSm 2.8(基準値4.0以下)

 ○ 術後(12月28日)
  PSA 11 γSm 1.1   PAP 1.7(基準値4.0以下)

 PSAは11となお高値ですが、以前にバイオプシーをJ総合病院で受けときは、術前15、術後1ヶ月後27であったことを考えますと、今回は術直後にしては随分下がったな、と思っております。
 これも生きた勉強材料の一つであると思い、これからもチェックを続けて行きたいと思っています。 

B先生からのメール:RE
(1月5日)
(前略)今日、Y教授と電話で話しをしたのですが、陽性部位はTURの切片から検出され、生検からは検出されなかったとのことであり、結果的には、やはりTURをされて良かったのではと思います。
 現在、前立腺と周囲組織とは炎症性の癒着をきたしており、3ヶ月程薬物療法をしてから手術(前立腺全摘)をするのがベストではないかとのこと、私もそのようにされるのが良いと思います。
 もちろんもう少し先に手術をされても問題はありませんし、先生のご都合に合わせてもらえると思います。手術をすれば根治すると確信しております。

B先生へのメール:RE
(1月5日)
(前略)Y教授と結果について色々ご相談していただき有難うございました。
 生検からではなく、TURの切片からcancerが検出されたということは、ひょっとすると今回の手術で腫瘍部分が除かれた、或いは少なくとも一部が除かれたことを意味するのでしょうね。
 今日一日、過去のPSAなど腫瘍マーマーの値を経時的に並べてみて、やはりcancerは残っている、と素人なりに解釈いたしました。
 明日、Y教授からお話しを伺った上で、そのご指示に素直に従いたいと思っております。
 今の私にとりましては、先生のお言葉やご指導が天の声のように聞こえます。

B先生へのメール:Y教授から結果をお聞きしました
(1月6日)
(前略)今朝早く受診し、結果について詳しくお話しをお伺いいたしました。
 「3ヶ月間、薬物療法をした後、適当な時期に全摘手術をしましょう」、とのことでした。
 先生から予めお聞きしていましたので、特に落胆することなく、静かに耳を傾けることが出来ました。本当に有難うございました。
 ただ、病理報告書のコピーを頂戴したいと思っていたのですが、どうしても口に出せませんでしたので、次の機会にお願いしてみようと思っています。
 ところで、骨シンチなどをした後、ホルモン注射療法が始まるのでしょうか?
 今日は、内服薬2種類(プロスタール錠25×2、バファリン小児用1錠)を2週間分処方していただき、再来週の受診時、処方を変える(?)とのお話しのようでした。
 専門的なことは全てお任せし、ご指導を忠実に守りたいと思っております。(後略)

B先生からのメール:RE
(1月7日)
(前略)しばらく(約3ヶ月)は女性ホルモン療法を行うわけですが、はじめから強い薬剤を使用しますと副作用が心配ですので、プロスタールの少量投与から始めたのだろうと思います。体が慣れた段階で漸次用量を増やすか他剤に変更すると思います(化学的除睾術(LH−RH誘導体ーリュープリンなどの注射を併用)というテストステロンをブロックする方法など)。
 この治療法で前立腺癌を抑えることは可能ですが、いつまでするのか年齢などから言っても大変ですので、遠隔転移が無いことを確認してなるべく早い時期に全摘手術をするのが現在の医療としては最善と思われます。(後略)

ネオアジュバントホルモン療法開始

B先生へのメール:RE
(1月7日)
(前略)詳しいご説明をいただき有難うございます。
 プロスタールとともに、併発症予防のためバファリン(小児用)を1錠出していただきました。
 そのときにも、Y教授にお話ししたのですが、私はどうもアスピリンアレルギーがあるようで、バファリンなどを服用しますと鼻炎症状が出ます。
 入院中も主治医に、ボルタレン坐薬の替りにペンタジンの注射を2日間していただきました。
 今朝、ご指示通りバファリンを服用しましたが、やはり軽い鼻閉が起こったようです。数日間、テスト的に続け、ボルタレン坐薬も試してみたいと思っています。今までに喘息発作はありません。
 全摘術ともなれば術後の痛みがひどいと思いますが、その点を今から心配しております。

B先生へのメール:経過ご報告
(1月12日)
(前略)連休をお楽しみになられたことでしょう。私の方は、本を読んだりPCを相手に遊びながら十分休養をとりました。
 過去を振り返ってみましてもどうも初めての体験のような気がいたします。
 バファリンの件ですが、その後連日服用していますが、どうも杞憂であったようです。未だボルタレン坐薬は試みていませんが、来週の日曜日にでも試してみたいと思っています。
 また、プロスタール服用後1週間になりますが、特に能書に記載されているような副作用は認められません。
 ところで、PSA値について経時的な資料を整理してみましたところ、意外な結果が出たのに驚いております。
 どのように考えればいいかお教え下さい。
 以前にJ総合病院でバイオプシーを受けたときは、元の値になるまでに数ヶ月を要しました。(シオノギバイオメディカルで検査)
 バイオプシー1ヶ月後に15から27に上昇していたので驚き、U先生にお尋ねしましたところ、元の値に返るには数ヶ月かかる、と言われ、その通りの結果になりました。
 今回の術前並びに術後の検査は東予中検で行いましたが、術前(10月8日:15)、12月22日TUR、術後(12月28日:11、1月6日:4.9 )と急激に基準値に近い値に低下しております。私にとっては正に夢のような数値です。
 手術などの後は当然高値を呈すると思っていましたが、前立腺組織を大きく切除したため、下がったのでしょうか。
 ホルモン剤を服用し始めると、低下するのは当然ですが、これらの値はプロスタール服用開始前(1月6日の夕からプロスタールを服用)の値です。
 術後2週間足らずの間に、15から 4.9に下がりましたので、服用せず、様子をみていれば基準値内に下がったのではないか、とも思われます。
 今までの経過をエクセルで表示したものをファイル添付してお送りいたしますので、それを見た上でまたご意見をお寄せ下されば幸いです。(後略) 

B先生からのメール:RE
(1月13日)
(前略)ご質問の件(PSA値の変動)ですが、一般的にPSA値は前立腺癌の進行につれて上昇すると言われておりますが、前立腺容積にも依存しており、肥大症が進行すれば、それに伴ってPSA値も上昇して来ます。
 私もしばしば経験することですが、前立腺肥大症のTUR前後にPSA値を測定しますと値は低下して来ます。ただ先生の場合のように急速に低下したことにつきましては、私もはっきりとは説明できないのですが、癌細胞(当然ながらPSA分泌能が高い)が手術によって除去されたと考えれば、この現象の一つの説明にはなります。
 通常、肥大症は内腺から、癌は外腺から発生すると言われており、経直腸的に針生検することは外腺に針が到達しやすいことから理に適った方法と言われております。ただ先生の場合には外腺部からではなく、確かtransition zone(肥大症の発生母地の一つ)から癌細胞が発見されたと聞いたのですが、それならば尚更のこと、TURによって癌細胞が除去されたとも考えられますよね(TURでは外腺は残存します)。
 最近では内腺部からの癌発生もしばしば経験(潜在癌ということですが)されており、先生もこの様な例にあたるものと考えてもよろしいのではと思いますが。

B先生へのメール:RE
(1月13日)
(前略)専門家のお立場から理路整然とご説明賜り有難うございました。
 素人なりに私も同じことを考えていました。
 もしも、内腺部からがんが発生し、それがTURで完全に(?)除去されたとすると、以後の治療法はまた異なって来るのではないでしょうか。
 理論的には、完全に除去されることも当然あると思いますが、それを証明するには全摘術で切除標本を調べる以外に方法はないのでしょうか。
 私は、このようなときにPSAの経過観察が役立つのではないかと思いますが、すでに薬物療法を始めていますので、参考にはなりませんね。
 人間は勝手なものです。自分に都合のいいように目の前の現象を解釈しようとします。
 昨日、服薬を始めて1週間が経ちましたので、再度PSAなどの検査をしました。未だ結果は出ていませんが、入学試験の合否を待つような気持ちです。
 結果が出ましたら、早速ご報告させていただきます。(中略)
追伸 今夜は8時から11時まで医師会の夜間当直に出務の予定です。昨年末には想像もしていなかったことです。有り難く感謝いたしております。

B先生へのメール:PSAのその後
(1月16日)
(前略)プロスタール服用後1週間目のPAS値は4.9→3.2と低下し、基準値内の値になっていました。
 また1週間後に調べてみるつもりですが、今度の木曜日にY教授のご診察がありますので、これまでのPSA値の経緯をご説明したいと思っています。
 ところで、尿色は正常になっていますが、排便時にだけ少し血液を混じた尿色になります。これも次第に軽快しているようですが、先生のおっしゃるとおり、完全に治癒するまでは、2−3ヶ月かかるのでしょうね。
 ご指示に従って、半病人の生活を暫く続けるつもりです。(後略) 

B先生からのメール:RE
(1月16日)
(前略)先生の今後の治療についての疑問(このまま経過を見ても良いのではないか云々)についてですが、詳しくはY教授からお話があろうかと存じますが、やはりこの際は前立腺全摘を前提とした治療計画を立てられるのが良いのではないかと私は考えております。
 理由としましては、先生も思っておられるように、手術によって、がんのステージが明らかになり(私は当然T1と思っておりますが)、今後薬剤の服用をしなくても良い根拠が得られることです。また場合によっては神経温存手術(適応はかなり制限されるようですので、Y教授に聞いてみて下さい)によって勃起機能を保つことが可能かもしれません

 これらのことを勘案すれば、生活の質を担保する上で(手術によって蒙る不利益を考えても)、現時点では手術が最善の選択ではないかと思います。また仮に現在がん組織がすべて除去されているとしても、今後、他の部位からがんが発生する可能性もあり、そう考えれば薬剤はある期間は服薬し続ける必要がありますし、また、万が一がん細胞が少しでも残存しておれば、現在はホルモン感受性の細胞(PSAの経過から見て)であっても、将来ホルモン抵抗性にならんとも限りません。
 そうなれば現時点(近い将来遺伝子治療が発展すれば話しは別ですが、そのあたりは私は不勉強ですので、これもY教授に聞いてみて下さい)では、治療はかなり厳しい状況となります。
 以上一般論として参考として戴ければ幸いですが、手術までまだ猶予がありますので、十分にお考えになった上で決断されたらと思います。私なりの助言はこれからもさせて戴きますので、何なりと疑問がございましたらお聞き下さい。

B先生へのメール:RE
(1月16日)
(前略)先生のお話や、この前Y教授からお伺いした今後の治療計画などから、それなりの覚悟はしていますが、PSA値の動きが、私の予期していたものと異なりましたので、何かと気持ちが揺れてしまいます。
 全摘術がどのようなものであるか、素人の悲しさ何もわかりません。
 以前に文芸春秋に出ていた読売の渡辺恒雄社長の闘病記を読み、大変な手術なのだな、とちょっと恐れをなしているのは偽らぬところです。
 しかし、彼は今73歳、全く元気になり、縦横無尽の活躍をしています。それを思えば後悔するような道を決して選ぶべきではない、と思っています。

B先生へのメール:服用量の誤り
(1月18日)
(前略)まるで痴呆症患者のようなミスを犯してしまいました。プロスタール25mg1回2錠を、1日2錠と取り違え、所定の半量しか服用していないことに今朝気づきました。
 当初から、能書に、前立腺がんには1日50mg×2/日となっているのに、どうして自分の場合、25mg×2/日であるのかと不思議に思っていました。
 やはり、ボケが始まっているのでしょう。
 明後日、Y教授のご診察がありますが、ご叱責を覚悟して参ります。
 治療計画の見直しなどが行われるかも知れませんが、全て私の責任ですから、仕方ございません。(後略)

B先生からのメール:RE
(1月19日)
(前略)プロスタールの服用量が少なかったとのことですが、私など治療開始当初は副作用などを勘案して少な目に投与することはよくあることですので、あまり気になさらなくても良いと思いますよ。
 ただLH-RH誘導体を併用するとなれば投与する時期が若干遅れるかも知れませんが治療効果には影響はないと思います。

B先生へのメール:RE
(1月19日)
(前略)早速のご指導、有難うございます。
 お恥ずかしい話で、妻にしか言っておりません。治療効果にはあまり影響は出ないであろうとのことでホットいたしました。
 過日、「PSAと前立腺がん」と題する医事新報(1999.7.3)の記事を読みました。
 癌研究会附属病院泌尿器科部長の福井 巌先生の講演と質疑応答からなっていました。
 実にわかり易く、データも極めて豊富で少し賢くなりました。
 ただ、アメリカの集団検診(1万人以上)で「PSAが10ng/mg以上であると59%に癌がみつかった、その内、54%が手術でも治らない」、という成績を紹介していました。正直なところ、あまりいい気がしませんでした。
 その外、前立腺の異型度分類や、「全摘術後、PSAは3週間以内に0.2ng/mg以内にならないと癌が残っていることになる」、などこれまた恐ろしいことが書いてありました。
 前立腺癌の全摘術を「受ける」、否、「受けさせていただける」ということは、本当に有り難いことなのだ、ということがわかりました。
 先生やY先生のご指示に忠実に従うことが、今の私に課せられた大きな仕事です。(後略)

リュープリン皮下注開始

B先生へのメール:注射療法開始ご報告
(1月20日)
(前略)本日、Y教授に診ていただき、ご挨拶もそこそこに、小さな声(?)で服用量の誤りにつきお詫びを申しあげました。その結果、もう2週間プロスタール25mg×4/日を続け、その後、カソデックスに変更しましょう、ということになりました。
 本日、骨シンチ、CT検査の予約をしたあと、教授自らリュープリン皮下注をして下さいました。
 カソデックスはJ総合病院のU先生に処方していただき、1ヶ月後にまた、教授再診及び同日、骨シンチ、CT検査を受けることになりました。
 また、病理所見もコピーも頂戴いたしましたが、「一部分はpoorly differentiated、大部分はmoderately differentiated ademocarcinoma」となっていました。
 これを見た途端、やはりガツンと頭を殴られたような気がいたしました。
 帰宅後、J総合病院のU先生に資料などをお返し、今後のことなどもお願いしました。
 その後の尿色ですが、昨日、今日と排便時の微少血尿もなくなり、やっとよくなったような気がいたします。
 毎日の1万歩、中止して1ヶ月になり、そろそろ再開したい、と早くも欲が出てきました。如何でしょうか。
 手術日程などにつきましては、ホルモン注射終了後の早い時期にお願いしたいと思っています。(後略)

B先生からのメール:RE
(1月21日)
(前略)術後の経過は良好のようですね。ただ創部はまだカサブタに被われた状態ですので、運動は無理をしない程度に徐々に始めて下さい。
 今回の組織の結果に対しては、それ程ショックを受ける必要は無いと思いますよ。現在細胞はホルモン感受性であり、またステージがT1乃至T2であれば前立腺全摘で根治する訳ですから。先生の場合はT1であると私は信じております。今後は手術をする時期の見極めが大切になりますね。

B先生へのメール:RE
(1月21日)
(前略)先生の力強いお励ましのお言葉をいただき、感激しております。
 ステージがT1乃至T2であることを願い、与えられた治療を素直にお受けしたいと思います。
 1万歩の方は、もう少し先に延ばします。毎朝1時間の歩行を止めたため、早く起きる必要がなくなり、1日が極めてゆっくりと始まるような気がいたします。
 自分で求めたものでないだけに、それだけに有り難く思うこの頃です。
 このところ急に寒くなり、各地でインフルエンザの集団発生が報じられています。どうかくれぐれもお体をお大事にして下さい。

B先生へのメール:PSAが1.4となっていました。
(1月22日)
(前略)19日に出していた検査結果が今日返ってきました。PSAは1.4と低下、γSmは0.3以下でした。
 これは、プロスタール(50mg/日)服用11日、続いて100mg/日に増量2日目の値で、未だリュープリン注射を受ける前の段階です。
 PSA値の急速な低下に、腫瘍が全部取れてしまったのではないか、などと夢のようなことを想像しております。
 少し嬉しくなり、昨夜に続きご報告させていただきました。(後略)

B先生からのメール:RE
(1月24日)
(前略)経過良好で何よりです。私はかぜ(インフルエンザ?)をこじらせて何年か振りに22日、23日の両日寝込みました。今日はPLの飲み過ぎもあるのでしょうが、フラフラしながら診察をしております。先生も無理をされないようご自愛下さい。

B先生へのメール:どうかお大事に
(1月24日)
(前略)こちらのことばかり書いて申し訳ございません。
 大人が寝込むほどのかぜはインフルエンザでしょうね。私も過去に2回、ひどいインフルエンザにかかりましたが、先生同様、今にも倒れそうになりながら、殺到する患者の応対をしたことが思い出されます。どうかお大事にして下さい。
 私の方はその後順調で、薬の副作用と思われる自、他覚症状も全くございません。
 どうか私のことは暫くご放念いただき、十分ご療養下さいますようお願いいたします。

B先生へのメール:その後如何ですか
(2月7日)
(前略)インフルエンザ罹患後の気管支炎症状はもうとれましたか。
 私の方は、次第に多くなってきたインフルエンザ患者の診察に日々追われていますが、幸い罹患を免れております。
 ところで、先週からカソデックス錠1錠/日を服用し始めました。これはY教授のご配慮でJ総合病院で処方していただきました。
 服用開始直前(2月2日)にPSAを検査しましたが、今日結果がわかり、0.6と低下していました。何だかし信じられない気持ちです。
 自覚的には今のところ何もなく、2月1日から1日1万歩を開始しましたが、特に疲れもございません。
 尤も、ゴルフや畑仕事、植木の剪定などは避けております。
 来週の木曜日にY教授のご診察があります。CTや骨シンチの結果などが出ましたら、またご報告させていただきます。(後略)

B先生からのメール:RE
(2月8日)
(前略)お元気そうで何よりです。私も現在は元気になりまして真面目に仕事をしておりますが、今年のインフルエンザには全く参りました。老人が死亡することがあるということを実感しました。やはり健康が一番ですね。先生のご病気が完治することを念願致しております。

B先生へのメール:CTと骨シンチを受けました
(2月18日)
(前略)Y教授のご診察のあと、2回目のリュープリン注射をしていただき、続いてCTと骨シンチを受けました。
 結果は、来週再度受診し、お伺いすることになっています。
 PSA値は2月12日に0.3と順調に低下しております。カソデックスに変更後8日目の値です。
 ところで、全摘の時期について、ネオアジュバント療法開始後、最低3ヶ月以後がいい、また、私の聞き違いかも知れませんが、それほど急がなくても、PSA値が再度上がり始めてから手術という選択肢もある、とのことでした。
 私自身は、CTや骨シンチの結果をみて、手術可能であれば、4月中旬以降にお願いしようかと思っていますが、インターネットで全摘患者の体験記などを読みますと、予期していた以上に後遺症がひどいようで、正直なところ迷いがございます。
 今朝の新聞でK先生の逝去(享年68歳)を知りました。面識はございませんでしたが、大変立派な方であるとお伺いしていました。心からご冥福をお祈りいたします。
 私は今65歳、自分の余命がわかっていればなあ!と空恐ろしいことを考えたりいたします。
 いずれにしても、今週中に決断し、次の受診時に手術日などを決めていただかなければならないと思っています。
 ちょっと(?)迷える子羊に何かアドバイスがあればお願いいたします。(後略) 


B先生からのメール:RE
(2月20日)
(前略)お元気なご様子でなりよりです。手術する時期についてのご心配は私にも充分に理解できます。
 前立腺全摘に限らず手術によってQOLが低下した患者さんについては、われわれ外科医であればある程度は経験しているところです。手術をせずに病気が治るのであれば、それに超したことはないのは当然のことだと思います。
 ただ現時点での前立腺がんの治療に関して言えば、年齢やステージを勘案して手術療法が選択されるものと考えております。一般論から言えば、先生の場合は手術適応と思いますが、Y教授が言われるように一刻を争うものではありません。個人的には自分の人生観あるいは人生設計に照らして、手術によって失われるものと、得られるものとを天秤にかけて決心されるしかないとは思いますが、なかなか悩ましいですね。
 前立腺全摘をされて上手く行った方を見ておりますと良かったなあと思いますが、患者さんの本当の本音(口では手術をして良かったと言われてはおりますが)までは充分には聞いておりませんので、今度一度聞いてみます。本当の本音を言って下さるかは分かりませんが。

B先生へのメール:RE
(2月21日)
(前略)人間は勝手なもので、自覚症状が何もないためか、色々と迷います。
 先生のおっしゃる通り、手術を受けるかどうかは、それによって得られるものと失うものを天秤にかけ、自分で決断する以外にございませんね。
 頭ではわかっていても、中々決断できませんが、この木曜日にははっきりした気持で、受診したいと思っています。(後略)

B先生へのメール:アットと思いました
(2月24日)
(前略)今日はY教授の診察日でした。予約時間が記入されていませんでしたので、早朝に出かけました。
 CTは異常なしでしたが、骨シンチの結果は何か手違いがあったようで届いていませんでした。先ず、その方の異常はないであろうということで、手術日を決めていただきました。
 随分と悩み、先生に色々とご迷惑やらご心配をおかけいたしましたが、全摘術を受けることが、今の自分に与えられた唯一の選択肢である、と納得することができましたので、今日は迷うことなく手術をお願いすることにいたしました。
 手術日は4月19日(水)、入院は前日と決めていただき、それまでに自家輸血用の採血や血液検査、その他術前の諸検査を外来でしていただくことにしました。
 うまく行けば、5月の連休明けには退院に漕ぎ着けることができるのではないか、などと希望的観測をしておりますが、どうなることでしょうか。(後略)

B先生からのメール:RE
(2月25日)
(前略)それはそうと手術の決心をされたとのこと、後はプラスのことだけを考えましょう。Y先生も渾身の力で手術をされるでしょう。彼は手術は非常に上手いですから私は安心しております。

B先生へのメール:RE
(2月25日)
(前略)手術日が決まり、もう後に退くことはできません。意志の弱い人間は、有言実行しかありません。
 手術をお願いした以上、何もかもY先生にお任せして、今は静かに時がくるのを待ちます。
 「プラスのことだけを考える」、そのように意識的に努めてみます。 

B先生へのメール:PSA値が0.2以下になりました
(3月1日)
(前略)今朝、25日実施のPSA値が出ました。0.2以下でした。測定限界値以下ということのようです。
 カソデックス服用後3週間で、0.6→0.2以下となった訳ですが、こんなに下がってしまうものでしょうか。
 いずれにしても、PSA高値に悩まされ続けてきた私には、まるで夢のような値です。全く健康であった時期(平成6年7月)でさえ1.0だったのですから。(後略)

B先生からのメール:RE
(3月1日)
(前略)経過は非常に良好であり、これで手術をされたら万全だと思いますよ。頑張って下さい。

第1回目の貯血

B先生へのメール:第1回目の貯血をしました
(3月30日)
(前略)その後の経過ですが、特に変わったこともなく打ち過ごし、失礼しております。
 本日、第1回目の貯血400ccをとっていただき、エスポー24000の注射とフェルムの処方をしていただきました。次回は13日の予定です。
 この前お世話になったO先生はN予へご転勤になられ、今日は、採血などをT先生がして下さいました。お陰さまで、Y教授、O先生、T先生と信頼できる先生方に診ていただくことができ、有り難く感謝しております。
 PSAは測定限界値以下になってからは測定していませんでしたが、明日、貧血検査や肝機能検査などと一緒に調べてみるつもりです。(中略)
 追伸 手術については、親しい友人たちにも秘しておリます。「天才たちの死に学ぶ」という本を読み、ふっと、そんな気になってしまいました。 

B先生からのメール:RE
(3月31日)
(前略)いよいよ手術の準備段階に入りましたね。とは言いましても、E大泌尿器科では、前立腺全摘をどんどんやっておりますので、テクニカルには全く心配ないですよ。Y教授、T先生には先生のために更に万全を期すように頼んでおきます。(後略)

B先生へのメール:カソデックスについてご相談
(4月7日)
(前略)31日に検査しましたが、PSAはじめ腫瘍マーカーは測定限界値以下でした。また、貯血翌日でしたので、赤血球数、Ht値が多少低下していました。
 ところが、総コレステロールが181→234、血糖が(空腹時)114→127、HbA1cが5.0→6.2と上昇していました。
 以前から、多少高脂血症気味であり、糖の方も境界型糖尿病(自己診断)として経過をみていました。
 後者に対して、勝手にSU製剤を服用し、空腹時血糖、HbA1cもずっと基準値以下でした。
 念のため、1週間後の昨日、再検しましたところ、総コレステロール267、血糖値129、HbA1c6.2とやや上昇していました。赤血球値、Htは既に正常化していました。
 この異常現象は、カソデックス服用後1ヶ月後くらいから現れ始めているようです。
 カソデックスの副作用情報によりますと、総コレステロールの上昇と、有害事象として糖尿病、高血糖が記載されています。
 素人判断ですが、食事や運動など以前と変わらぬ規則正しい(?)生活をしているつもりですので、ひょっとするとカソデックスの副作用ではないかと考えています。
 先生のところで、このような症例はございませんか。
 そこでご相談ですが、腫瘍マーカーが測定限界値以下であり、カソデックスも既に2ヶ月間服用しておりますが、なおこのまま続けるのがいいのでしょうか。
 来週、Y教授のご診察の際、お尋ねしようとは思っていますが、できますれば先生のお考えをお聞きしたいと思います。(中略)
追伸 その他の肝機能は全く正常で、自覚症状もございません。--

B先生へのメール:RE
(4月9日)
(前略)今日は休日急患センターの当直でした。
 これで、義務的は出務は全て終わり、安心して入院の準備に入ることができます。
 面倒なお尋ねをして申し訳ございません。
 副作用と思われる数値の動きですが、自覚症状は全くありませんので、この木曜日にY教授にご相談し、ご指示に従いたいと思います。いずれにせよ、手術までの10日ほどのことですから。
 今まで、余りにも順調に行っていましたので、神様が”いい気になるな!”と注意してくれたのでしょう。(後略)

B先生へのメール:カソデックス中止となりました
(4月13日)
(前略)今日、Y教授に診ていただき、コレステロール値及び空腹時血糖値の上昇についてお話しいたしましたところ、手術日まで僅かであることから、「カソデックスクス中止」で様子をみましょう、ということになりました。
 貯血は2回目でしたが、特に体調の変化もなく、11時過ぎには帰院できました。
 入院前に片付けておきたいことが山ほどあり、気持ちの休まる間がないのですが、次々と予期せぬことが起こるようです。
 今夜は、同門後輩(K医大小児科教授)のお通夜に参列し、先ほどK市から帰って来たところです。1年半前に肝臓がんがみつかり、入退院を繰り返していたようです。
 今回のお通夜は格別で、わが身もがんの摘出術を受ける身、遺影を拝しながらも複雑な思いがいたしました。合掌

B先生からのメール:RE
(4月14日)
(前略)手術は間近のようですね。先生の場合は偶発がんであり、また前立腺がんは極めて根治性が高いので全く心配ご無用と思います。それでもドクターが病気になると、なまじ専門家であるため主治医に身を任せてしまう気持ちにはなかなかなれないのも事実ですね。
 がんになったことは不幸ではありますが、前立腺がんであったことは幸運であったと前向きな気持ちで手術に臨んで下さい。(後略)

4月18日入院、19日前立腺摘除術を受ける

B先生へのメール:明日入院いたします
(4月18日)
(前略)いよいよ明日入院、明後日手術となりました。長い間、先生には何かとご指導、ご助言をいただき、やっと手術に漕ぎ着けることができました。心から御礼申しあげます。
 数日来、雑用の数々を一つひとつを片付けてきましたが、一番心配していた風邪もひかず、明日を迎えることができ、幸いでした。
 入院、手術に関しましては、Y教授やスタッフにすがり、天運に従います。
 今後とも何かとお世話になることと存じますが、どうかよろしくお願いいたします。

B先生へのメール:解放されました
(4月28日)
(前略)先日はお忙しいところお見舞いいただき有難うございました。お陰様で、術後経過も全く順調で、大手術を受けたことがまるで嘘のようです。
 切除組織に、ほんの少しがんは残っていたそうですが、周辺組織は全く変化なく、完全治癒と考えてよい、とのご診断でした。退院時にコピーを頂戴することになっていますので、また詳しくご報告させていただきます。
 これで、2年半にわたり苦しみ苦しまされてきた”わたしの前立腺がん”からやっと解放されました。
 まさに命拾いをした気持ちです。
 心機一転、これからは何事にも、晴れて積極的に取り組むことができそうです。
 先生には、その間、手術を受ける決心がつくまで、専門家のお立場から的確なご指導をいただき、手術を受けることができました。心から感謝申しあげます。
 2日(火)に膀胱造影施行し、漏れがなければバルール抜去、結果がよければ翌3日(水)(連休中)に退院させていただくことになると思います。(後略)

B先生からのメール:RE
(5月1日)
(前略)本当に良かったですね。お見舞いに伺った時に、大変にお元気であり安心しておりましたが、根治ということで何よりです。術後3ヶ月ぐらいはあまり無理はできないとは思いますが、以後は全く普通の生活が出来ます。ゴルフでもご一緒させて下さい。

5月3日退院

B先生へのメール:退院ご報告
(5月3日)
(前略)お陰様で本日午後退院させていただきました。
 バルーンカテ挿入中は随分不自由でしたが、抜去直後から、失禁との対決が始まりました。
 しかしながら、入院前の心理的な苦しみを思えば、物の数ではありません。
 今後ともよろしくお願いいたします。

B先生からのメール:RE
(5月4日)
(前略)退院おめでとうございます。それにしても早かったですね。
 やはり先生の日頃からの節制の賜物でしょうか。病気になるのも医者にかかるのも運のうち(?)ですが、先生はやはり運が非常に良いと思いますよ。もうしばらくの辛抱ですから、頑張って下さい。

B先生へのメール:PSAについて
(5月19日)
(前略)昨日、Y教授からお電話をいただき、精密PSA値が限界値以下であったとのお知らせを受けました。
 手術後3週間以内に、0.01以下にならないとがん細胞が残っている、ということを医事新報か何かで読んでいましたので、病理組織及び腫瘍マーカー両者からみて、完全治癒と考えていいようですね。有難うございました。
 尤も、尿失禁は数日前からうんとよくなりましたが、油断すると駄目です。もう暫くの辛抱と己を励ましております。(後略)

B先生からのメール:RE
(5月20日)
(前略)術後の経過は素晴らしいですね。本当に良かったですね。尿失禁ももうしばらくの辛抱ですので頑張って下さい。

B先生へのメール:HPにをアップしました
(6月2日)
(前略)お陰さまで、困っていた尿失禁もこのところ急速に軽快し、尿とりパッドも要らないくらいによくなりました。尤も、なお不安ですので、もう暫く装着するつもりです。
 ところで、我が闘病記をHPに掲載しました。他の方の体験記が大変役立ちましたので、そのお返しの気持ちを兼ねて載せてみました。先生の目でご覧になり、間違っている点がありましたら、どうかご指摘下さい。よろしくお願いいたします。(中略)もしもお許しがいただければ、先生やU先生からいただいたメールの一部に手を加え、Q&Aの形で掲載できれば、もっと充実したものになるのではないか、と勝手なことを考えております。

B先生からのメール:RE
(6月2日)
(前略)お元気なご様子、何よりです。先生のホームページを拝見しましたが、素晴らしい内容に驚いております。私も先生を見習ってホームページの立ち上げにトライしようという意欲が少し湧いてきました。それは兎も角として、先生の闘病記も拝見致しましたが、患者さんの心理状態が非常にうまく表現されており感心しました。これから前立腺がんは、ますます増加してゆくものと思われますので、啓蒙の意味でも情報を発信して下さい。(後略)

B先生へのメール:HPの追加更新について
(6月22日)
(前略)今日は久し振りにお目にかかることが出来、幸いでした。ご覧いただきましたように、お陰様ですっかり元気になりました。以前より、若返ったような気分さえいたします。ご相談させていただきましたように、私の前立腺がん治療体験記に、先生宛のメールを掲載させていただくことにいたします。(中略)
 来週の木曜日にY教授に経過を診ていただくことになっています。今後のことについてご指示があると思いますので、またご報告させていただきます。(後略)

B先生へのメール:Y教授に診ていただきました
(6月29日)
(前略)今日、Y教授に診ていただきました。その後、失禁もとれ、PSAも0.01以下(6月20日実施)であったとご報告申しあげましたところ、念のため、8月にCTと骨シンチをしましょう、ということになりました。
 その後のことについては、PSAを当方で経時的に調べて行き、動きがあればご報告することになりました。(後略)

B先生からのメール:RE
(6月30日)
(前略)大変お元気そうで何よりです。しかし前立腺がんは本当に増加しております。がん検診のおかげかも知れませんが。当院でさえ、月に1名以上の前立腺がん患者さんが新たに認められている現状です。先生の体験記は、これらの患者さんにとって参考になると思いますよ。

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