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1st STAGE                     指揮:尾崎 光芳(59年卒)

▼指揮者紹介▼
 音萌の会名物・指揮者紹介のコーナーですが、今年はちょっと趣向を変えてお送りします。

『音萌の会合宿殺人事件』
 <登場人物紹介>
  尾崎 光芳…昭和59年卒の音萌会員。趣味はCD収集。その在庫は現在もなお年間400枚ずつ増加
         を続けているという。本年度より会長に就任し、多忙な日々を送っている。
  井手 浩一…昭和47年卒の前会長。こちらもCD収集が趣味で、尾崎氏との対決に闘志を燃やす。
         自慢のコレクションのために、自宅の防音部屋を拡張したり、オーディオケー ブル
         ごときに46万円も投資したりと、そのこだわりは止まるところを知らない。
  大元 佳奈…平成6年卒の会員。巨人軍をこよなく愛し、特殊な知識がなければ分からないネタを
         肴に、場を盛り上げたり盛り下げたりするムードメーカー。
  宮内久美子…平成6年卒の会員。24歳という若さにも関わらず、口うるさいオバサンが板に付い
         ている。高校生当時から、らくおばちゃんを地で行く謎の女性。
〜事件編〜
 寝入りばなを起こされて、尾崎は不機嫌に枕元の時計を見た。夜中の1時まで食堂で騒いでいて、ようやく床についたところだ。現在1時50分。いくら近所に民家がないとはいえ、夜中にこんな大音量でブラームスとは。廊下に出てみると、音はどうやら井手前会長の部屋から聞こえてくるようだ。かんべんしてくれと思い、音量を下げるよう言いに行こうとしたが、曲はすでに4楽章のなかばを過ぎていたので間もなく終了するなと思い直し、自室に戻った。予想通り、夜中のブラームスは3分27秒後に鳴り止んだ。

 次の日は静かな朝だった。階下の物音で目が覚めたのだが、まだ時計は6時を回ったところだった。よく耳を澄ますと大元と宮内の言い争う声がする。どうやら朝食の準備をしているようだが、豆腐の切り方でもめてるらしい。この様子だと朝食にありつけるのはもう少し後になりそうだ。しかし会長という肩書きの手前、睡眠への未練を断ち切るように布団を片づけ、まだ言い争いの続く台所に向かった。
「おはよーございます。お−もっちゃん、豆腐は手の上で切るんやで。」
わめく二人をからかいながら「なんか手伝おか?」と一応言ってみた。
「ほんならみんなを起こしてきてください。もうできますから。」いつのまにか宮内一人が料理をしている。大元は飽きてしまったらしく、テレビで昨日のナイターの結果を見ながら舌打ちしていた。

「あれ、井手さん遅いね。尾崎さん起こしてくれたんでしょ?」
「うーん、ドア越しやったからなあ、聞こえてなかったんかも。もう一回行ってこうわい。」
尾崎は立ち上がった。「あっ、私らも行きます。」となぜか全員ついてきた。
井手の部屋の戸をノックする。
「井手さーん、はよ起きんとみそ汁冷めてしまいますよ。」
しかし返事はない。しかたなく部屋の中に入ろうとドアノブに手をかけ、尾崎はイヤな胸騒ぎを覚えた。異常に冷たい。
「井手さん、失礼します!」
慌ててドアを開け、部屋をのぞきこむ。薄暗い部屋から流れ出た冷気がサッと一同を包んだ。
「あれ、ジャパ・グラのスコアやん。なんでちらかっとんやろ?」
宮内は入り口に散乱する楽譜を拾い集めようとした。「『ジャパ・グラ』って略して言うな」と思いながら、尾崎は宮内の肩越しに部屋の中央にしかれた布団を見る。
「うわああああっ!」
そこには井手の変わり果てた姿があった。
井手が持ち込んだらしいオーディオのパワーランプがすっかり青くなった井手の顔をむなしく照らしていた。 

後半へつづく





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