3rd stage
▼マ・メール・ロワ(M. ラヴェル)
マ・メール・ロワ。マは英語で云うとマイ、メールはマザー、ロワはグース。敢えて日本語にすると「お母さん鵞鳥」でしょうか。
子供好きだったラヴェルが友人の子供ミミーとジャンの為に、ピアノ連弾のために作曲しました。
シャルル・ペローの童話集「マ・メール・ロワ」、ドゥールノワ伯爵夫人の「緑の蛇」、ド・ボーモン伯爵夫人の「美女と野獣」のお話を元に五曲の組曲となりました。
後に管弦楽化され、また曲を加えてバレエ版も編まれましたが、本日演奏しますのはピアノ連弾版をそのまま管弦楽編曲した版に基づいています。
1 眠りの森の美女のパヴァーヌ
ペローの童話集「マ・メール・ロワ」の「眠りの森の美女」から。
わずか20小節の小品だが、神秘的な前奏曲
2 おやゆび小僧
ペローの童話集「マ・メール・ロワ」から。
おやゆび小僧の家はとても貧しい。ある日、彼は親に森へと連れて行かれた。
そしてそこへ置き去りにされてしまう。
暗い森の中を歩く不安げなさまや、小鳥たちのさえずりなどが音で表現されている。
『・・・通り道の至るところにばら撒いて来たパンくずを辿れば、簡単に家へ帰
ることができると一寸法師は思っていた。
ところが、驚いたことにパンくずはひとかけらも見当たらない。鳥たちがみんな
食べてしまったのだ。・・・』
3 パゴダの女王レドロネット
ドゥールノワ伯爵夫人の「緑の蛇」から。
パゴダとは中国製の首振り陶器人形のこと。
アジア系の民族を想像したものと思われる。
『・・・女王は、着物を脱いでお風呂に入った。すると、パゴダ人たちは歌った
り、楽器をならしはじめた。
ある者はクルミでつくった昔風の竪琴を、ある者はアーモンドで作ったヴィオールを。
小さな身体には、小さな楽器が必要だから。・・・』
4 美女と野獣の対話
ド・ボーモン伯爵夫人の有名な童話から。
まず王女の美しい旋律がワルツを飾り、次に不協和音を伴った野獣の低音が現れる。
やがて、二つの旋律は会話をするかのように絡み合い、激しく盛り上がったところで呪い は解ける。
『・・・
美女「あなたのその親切さを思うと、私にはあなたがそんな醜い姿をしているとは思えな いのです。」
野獣「そうでしょうとも!私は怪物の姿をしてはいますが、親切なのですよ。」
美女「あなたよりも、恐ろしい男性は沢山いますわ。」
野獣「もし私が機知に富んでいたら、あなたへのお礼に最大の賛辞を送るでしょう。
でも、私はただの野獣なのです。」
野獣「美しいお嬢さん、私の妻になっていただけませんか?」
美女「それはできません」
野獣「あなたとまたお会いできることを楽しみに、私は幸福に死んでいきます。」
美女「死んではなりませんわ。あなたは私の夫となるのだから!」
すると野獣は姿を消し、彼女の足元には、呪縛から解かれたことを感謝する、美しい王子 の姿のみがあった。 ・・・』
5 妖精の国
ペローの「眠りの森の美女」から。
おとぎ話のラストを飾るにふさわしい曲。
ハーモニーに彩られたメロディが静かにゆったりと始まる。
途中、哀愁を帯びた高音の旋律を経て、グリッサンドが華やかなクライマックスへと終結 する。
眠りについた王女が王子の口づけで目を覚ますクライマックスシーン。
▼交響曲第五番ニ短調 作品47 から終楽章(D. ショスタコーヴィチ)
ショスタコーヴィチがこの曲を書いていた頃のソヴィエト(現在のロシア)は社会党一党独裁の社会主義国で、芸術もまた労働者のためにあるべきだと云うスローガンのもと、平明で明るく、労働者と社会主義体制をたたえ、ソヴィエト社会主義万歳!と云う内容のものばかりが良いとされていました。
ショスタコーヴィチはこう云う体制を快くは思ってなかったのですが、前作の交響曲第4番が批判されて立場が危なくなってきました。
そこでその批判をかわすために最初の苦悩からもがいて最後に社会主義万歳と終わる交響曲を書いて何とか立場を守ることに成功しました。
・・・と、初演以来思われていたのですが、実はショスタコーヴィチがこの曲は社会主義の終焉とその崩壊がテーマだと語ったという内容を含むインタビュー集が30年ほど前に発表されたのです。実はこのインタビューが本当にショスタコーヴィチの本心を伝えているかどうかは非常に疑わしいとされているのですが、それにしても、関係者がみんなこの世のものでない現在となっては、「で、ホントのところどうだったの?」ときいてみたいもんです。
今日はその第4楽章のみ演奏します。
冒頭の勇ましい金管楽器のメロディーが「体制」を象徴しているメロディーです。
さて、それが曲の終わりではどう変わっていくか、社会主義の勝利の雄叫びをあげるのか、はたまた終焉と崩壊を迎えるのか、それぞれに感じてみて下さい。
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