前立腺がん放射線療法後に二次がんリスク
前立腺がんに対する放射線療法後には,絶対リスクは小さいものの膀胱,大腸,直腸に二次がん(二次原発がん)の発生が見られると,カナダのグループがBMJ(2016; 352: i851)発表した。
膀胱・大腸・直腸がんの発生が上昇
同グループは,2015年4月6日までのMEDLINEとEMBASEを検索。前立腺がんの治療過程で放射線療法を受けた患者と受けていない患者の二次がんのリスクを評価した研究のメタ解析を行った。1次エンドポイントは膀胱,大腸,直腸,肺,血液の二次がん発生とした。
解析対象は21研究。多くが大規模多施設研究だったが,バイアスリスクは中程度であった。放射線療法はほとんどが外部照射だった。21研究のうち13研究は手術患者,8研究は放射線療法を受けていない患者を対照群としていた。追跡期間は研究により幅があった。
解析の結果,放射線療法群では対照群と比べ膀胱(ハザード比1.67,95%CI
1.55〜1.80),大腸(同1.79,1.34〜2.38),直腸(同1.79,1.34〜2.38)で二次がんのリスク上昇が見られたが,肺(同1.45,0.70〜3.01)と血液(同1.64,0.90〜2.99)については二次がんのリスク上昇は認められなかった。放射線療法のうち,小線源治療は二次がんのリスク上昇とは関係がなかった。
放射線療法群の膀胱,大腸,直腸の二次がん発生率は最も高かった報告でそれぞれ3.8%,4.2%,1.2%,最も低かった報告ではそれぞれ0.1%,0.3%,0.3%であった。
アンドロゲン遮断療法でADリスクが高まる
前立腺がんに対するアンドロゲン遮断療法(ADT)がアルツハイマー病(AD)発症リスクを高める可能性があることを示す研究結果が,米・Stanford UniversityのKevin T. Nead氏らによりJ Clin
Oncol(2016; 34: 566-571)に発表された。
ADTの期間とADリスクの関係も有意
同グループは,自施設と米・Mount Sinai Hospitalの電子カルテデータから転移のない前立腺がん患者1万6,888例を特定。ADTが行われていた2,397例と非施行の対照群のAD発症を後ろ向きに検討した。追跡期間の中央値は2.7年であった。
その結果,傾向スコアをマッチさせた解析では対照群と比較したADT群のAD発症ハザード比は1.88(95%CI 1.10〜3.20,P=0.021),多変量補正Cox回帰分析では同1.66(同1.05〜2.64,P=0.031)といずれも有意に高かった。また,ADT施行期間の長さとADリスクとの間に有意な関係が認められた(P=0.016)。
観察研究のためADTとADリスクとの因果関係は不明だが,仮説としてアンドロゲンの抑制がβアミロイドの蓄積や分解に影響する可能性が示唆されている。