定例新居浜小児科医会(平成5年3月以降)

新居浜小児科医会誌
第400回記念
平成13年12月25日発行


平成18年(454回→)

第465回忘年会

 

 平成18年12月13日(水)に、第465回新居浜小児科医会(忘年会)が新築移転した「平八」で開かれました。
出席者は11名でした。
                    出席者名
(前列左から) 松浦章雄、渡辺敬信、塩田康夫、真鍋豊彦、星加 晃
(後列左から) 津下  充、岡本健太郎、山本浩一 後藤振一郎、千坂 綾、加藤文徳(敬称略)

第464回

日時
平成18年11月8日(水)
場所 リーガロイヤルホテル新居浜
学術情報提供 「キュプレスチュアブル錠」 杏林製薬株式会社
特別講演 「小児アレルギー、最近の話題」 独立行政法人
国立病院機構高知病院小児科 副院長
小倉英郎先生

特別講演:「小児アレルギー、最近の話題」

       国立病院機構高知病院小児科副院長  小倉英郎先生

小児気管支喘息、最近の考え方

 気管支喘息の病態において、従来言われてきた気道狭窄や気道の過敏性の概念は無論、重要であることに変わりはないが、最近では、気道のアレルギー性炎症が最も主要な病態と考えられるようになってきた。これを受けて、2005年ガイドライでは抗炎症治療、すなわち、ステロイド薬の吸入が長期管理の中心的存在となった。また、乳幼児においては、けいれんとの関連から、キサンチン製剤が大きく後退した。しかし、小児においては発育の問題とウイルス感染症をはじめとする感染症の増悪の可能性に対する懸念が払拭された訳ではない。
 まず、ス剤吸入については米国でブデソニドの数年間の経験があり、数件のプラセボをおいた厳密な研究があるが、成長抑制の有無についての結論は対立している。易感染性に関しては、乳幼児喘息の多くがウイルス感染を始めとする気道感染を契機に発作を来していることから、感染増悪の懸念をぬぐいきれない。この点に関する文献はほとんどなく、今後の課題といえる。わが国においてもブデソニドが導入され、乳幼児難治喘息においても有効な治療手段が得られたことは好ましいことではあるが、その適応および投与期間については慎重な対応が必要である。私自身は、乳幼児喘息におけるステロイド薬の吸入にあたっては、十分なインフォームドコンセントの後、ダニ対策等の環境整備を強力に進め、3〜6ヶ月後の離脱を目指している。
 次に、思春期喘息おいては、従来、喘息死の問題がクローズアップされた経緯があったが、1990年代をピークに減少に転じた。これは、小児アレルギー学会等での危機感の喚起による患者教育の推進の結果ではないかと推測される。しかし、2002年以降、思春期男子においては死亡率が微増の傾向にあり、今後注意して監視する必要がある。

食物アレルギーをめぐる諸問題

 食物アレルギーをめぐる問題点は決して少なくない。例えば、わが国の乳幼児において、極めてポピュラーな疾患であるアトピー性皮膚炎は覆面型食物アレルギーの代表的な疾患であるが、この覆面型食物アレルギーの概念がほとんど理解されていないと言う実態がある。覆面型食物アレルギーは1944年、Herbert J. Rinkelにより提唱された。図に示したように、原因食物を完全に中止すると数日後に症状は軽快するが、その食物に対する過敏性が亢進する。さらに除去を続けると、この過敏状態は数週の経過で低下する。そして、数カ月〜数年の除去により、潜在的過敏状態を経て、原因食物を数日に1回程度、食べ続けても症状の出ない状態、すなわち、耐性獲得の状態となる。しかし、再び原因食物を頻回に食べ続けると、もとの覆面型食物アレルギーの状態、皮膚症状の場合はアトピー性皮膚炎の状態に戻ってしまうのである。つまり、原因食物を毎日あるいは2〜3日に1回以上、摂取している場合は、覆面型食物アレルギーの状態となり、持続的にアレルギー症状を呈すということのみならず、誘発反応がマスクされて、仮に原因食物を大量に摂取したとしても、症状の誘発、増悪は通常、見られないのである。 

 以上の現象は事実であり、その認識は食物アレルギーの診断と治療において、極めて重要ではあるが、免疫学的にその機序が解明されておらず、実際に、この現象の存在を臨床的に体験した医師でなければ、理解し難いという側面がある。

 アトピー性皮膚炎においてもう1点重要なことは皮膚症状の軽快には超微量の除去が必要であるということである。患者の過敏度にもよるが、除去食療法や経口誘発試験の経験からは、マイクログラムレベルの除去が必要と考えられる。すなわち、十数μgのアレルゲンを日々摂取している状態では皮膚症状の改善すら見られず、また、皮膚症状が存在する状態では、逆に1グラム程度の負荷でも皮膚症状の悪化が認められないということである。この点は除去食療法を指導する医師にとっては、覆面型食物アレルギーの概念の認識同様、重要であり、不十分な除去で軽快しない、あるいは皮膚症状存在下の負荷試験で皮膚症状が誘発されないということをもって、当該アレルゲンの関与を否定してしまうという誤りに陥っている場合が決して少なくないと考えられる。また、このためにさらに食物除去の範囲を広げるという愚を犯してはならない。

 20024月から「アレルギー物質を含む食品の表示」制度が創設され、特に卵、乳、小麦、ソバ、落花生の5品目に関しては食品表示が義務づけられ、数μg/ml以上の混入は表示することとされた。即時型反応を惹起するには数十μg以上のアレルゲン摂取が必要と考えられており、本制度はアナフィラキシー等の即時型反応を防止するためのものであるので、本来の目的にはこれで十分といえる。しかし、前に述べたように、アトピー性皮膚炎においては十数μg/日のアレルゲン摂取でも皮膚症状の改善が見られない場合があり、食品表示を指標とするのみでは十分とは言えない。信頼のおけるアレルギー用食品を適切に使用することが大切である。 

 現在の食物アレルギーの臨床における最大の問題点は、以上述べた原理原則を理解している専門医が数少ない点であり、食物アレルギーの子を持つ母親の要望に応えきれていないという点にある。食物アレルギーについての正しい知識の普及が今後の課題である。


第463回

日時
平成18年10月11日(水)
症例呈示 「当科でのアレルギー疾患への関わり」 県立新居浜病院小児科 千阪 綾
岡本健太郎
話題提供 「子どもとメディア」 渡辺小児科医院 渡辺敬信

1.症例呈示

 当科でのアレルギー疾患への関わり

愛媛県立新居浜病院小児科 千阪 綾

食物負荷試験は、食物アレルギーの正確な診断、除去食療法の開始および解除の判断に欠かせないものである。しかし、確立された方法がないため、多施設においてさまざまな負荷試験が行われているのが現状である。
 
今回は、当科において平成188月から開始した食物負荷試験方法について紹介した。負荷試験はオープン法で行っており、対象症例は、食物によるアナフィラキシー既往例、食物抗原RAST高値例、保護者の不安や希望が強い症例などである。主に外来で行っているが、アナフィラキシー既往例などは入院にてルートを確保したうえで行っている。負荷食品に関しては、事前に内容や調理方法、負荷量などを説明し、各自で持参するよう指導している。スケジュールは、外来が2回(15分後)、入院は3回(2時間後とその15分後)に分けて負荷し、最終負荷後12時間経過観察している。
 現在まで約20例に行ったところ、以下のような問題点が浮上した。病院という異なる場所での食事の摂取は困難であるということ、負荷量が過剰(もしくは過少)ではないかということ、約15分で目標量の全量を摂取するというスケジュールが適切なのかということなどである。このような問題点を検討および改善し、より適切な負荷試験方法を考えていく必要があると思われる。
 食物アレルギー患者は年々増加しており、今後は負荷試験がより頻回に必要とされると思われるため、より明確で簡潔な負荷試験が早期に確立されることが望まれる。

(解説)

食物アレルギーの診療では、正確な診断がなされずに不必要な除去を続けている場合がある。なかには過度の除去食を長期に実施するあまりに、児に栄養障害や成長障害を引き起こしていることもある。食物負荷試験は食物アレルギーの正確な診断と、除去食を解除する際の判断に必要な検査である。
 外来でも実施可能な検査である。しかし、ショックなどの急変時にはすばやい対応が必要とされるため、騒々しく慌ただしい小児科外来診療のなかでこれを実施する場合は、十分な注意が必要である。

2.話題提供

 子どもとメディア

  渡辺小児科医院 渡辺 敬信

 電子映像メディアの急速な発展は、様々な形で子どもたちを蝕みはじめている。睡眠や食事などの生活リズムを乱し、身体や心、コミュニケーション能力を危機的状態にしていると指摘されている。ある調査によると、国民一人当たりのテレビ視聴は1日平均4時間、1世帯では平均8時間。小中学生の映像メディアの接触は、4時間以上が約半数、6時間以上が四分の一以上にも達している。
 最近の脳生理学の研究によると、テレビやビデオの視聴時やゲーム中の脳の活動状況がファンクショナルMRI等で解明され、これらのメディア接触時は前頭前野の活動が殆ど見られないことが解ってきている。
 この前頭前野は“人間らしい”高度な精神活動をつかさどり、情動、行動をコントロールする「理性の座」であり、共感性、社会性にかかわる“社会脳”である。乳児期からの体験の積み重ねによって後天的に機能を獲得し、大人になるまで発達し続ける。脳神経細胞、シナップスは使えば使うほど活性化され肥大し、使わなければ廃用性萎縮をする。

 前頭前野を使わない受動的な視聴、反射的なゲームに長時間を費やし、さらには、家庭や社会でのコミュニケーションにも希薄化が起こり、前頭前野は活動するチャンスを奪われることによって機能の発達、獲得が阻害されると推測される。その結果、情動や行動のコントロールが出来ず、キレやすく、短絡的で、衝動的な反応を起こしやすく、人とのコミュニケーション能力の低下した子どもや若者が増えていると考えられる。
 また、人間の社会的欲望である愛され、認められ、家族やグループへの帰属、達成感もなく、寂しさや空虚感、自己否定感がメディア依存症(中毒症〕の子どもたちに共通して見られ、ひいては無気力、無関心、無感動の状態に陥り、不登校、引きこもり、家庭内暴力、ニート、リストカット、自殺企図 、自殺といった非社会的行動、凶悪な犯罪などの反社会的行動を引き起こす社会環境要因の一翼を担っていると考えられている。
 最近話題の「脳トレ」に見られるように、前頭前野を活性化するには読み書き・計算、人とのコミュニケーションであり、古くから言われているように、よく学び、よく遊ぶことである。(対策については紙面の都合上省略します。) 

(解説)

テレビゲームが子どもに及ぼす悪影響についてはいろいろ報告されている。しかし、テレビゲームそのものが悪いわけではない。眉をしかめる内容のゲームソフトを作り続ける企業、新製品が出るたびに煽り立てるマスコミ、さらにはテレビゲームに没頭する子どもをコントロールできない保護者に、その責任がある。

(文責 加藤 文徳)


第462回

上田 剛先生の送別会
(平成18年9月13日、於「寿司勝」)


平成18年9月13日(水)に、上田 剛先生の送別会が「寿司勝」で開かれました。
出席者は9名でした。
 (前列左から) 塩田康夫、上田 剛、真鍋豊彦、渡辺敬信
 (後列左から) 岡本健太郎、加藤文徳、山本浩一、後藤振一郎、松浦 章雄(敬称略)

第461回

日時
平成18年8月9日(水)
症例呈示 「WEST症候群の一卵性双胎児」 住友別子病院小児科 後藤振一郎
話題提供 食物依存性運動誘発性アナフィラキシーについて 住友別子病院小児科 加藤文徳
その他 「第48回愛媛県小児科医会学術集会の演題および講師について」 高橋こどもクリニック 高橋 貢

1.症例呈示

 点頭てんかんの一卵性双胎児例

    住友別子病院小児科 後藤振一郎

 在胎362日にて頭囲自然分娩にて出生した男児一卵性双胎で、出生体重は第一児2102g、第二児2292gであった。周産期には特記すべきことはなかったが、生後6ヶ月ごろより相次いで両手挙上、眼球上転させる動作(スパズム)が見られていた。その後反応に乏しく、笑わなくなったとのことで9ヶ月時に当科外来を受診した。両人とも血液生化学検査、頭部MRIでは異常を認めなかったが、脳波は不規則棘徐波が散在するヒプスアリスミアの所見を認め、点頭てんかんと診断した。
 第一子はバルプロ酸、ビタミンB6の内服に反応不良で、30病日から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の投与を開始した。これにより脳波所見は改善し、発作もほぼ消失した。第二子はバルプロ酸、ビタミンB6の内服に反応良好で、治療開始10日頃から発作はほぼ消失し、脳波上も著明な改善を認めた。頭てんかんはスパズム(点頭発作)、精神発達遅滞、脳波上のヒプスアリスミアを主徴とする難治てんかんで、発症時期は生後4~8ヶ月と年齢依存性があり、早期発見、早期治療が必要である。

(解説)

一卵性双胎はハイリスク妊娠のひとつである。報告例は出生後順調に経過していることから、胎児期に双胎の両児に何らかの危険因子が同時に作用した結果、生後点頭てんかんを発症したと推測される。現在までに点頭てんかんを発症した一卵性双胎の報告はあるが、発症に関係する遺伝子異常の報告はない。しかし今回、特に基礎疾患を持たない一卵性双胎に生後同時期に発症したことを考えると、点頭てんかんには何らかの分子遺伝学的異常が存在する可能性もあり、興味深い。

2.話題提供

 食物依存性運動誘発性アナフィラキシーについて

       住友別子病院小児科 加藤 文徳

 食物摂取後の運動負荷によりアナフィラキシーが誘発されることがある。これを食物依存性運動誘発性アナフィラキシーとよぶ。中学、高校生での有病率は0.012%とまれな疾患である。原因となる食物は小麦、甲殻類が多い。発症時間帯は昼食後が多く、運動負荷が大きいほど発症しやすいが、散歩などでも発症する。発症時にはショック状態となり、緊急治療を要するほどの重症例も存在する。原因食物を特定することが発症を予防する上で重要であるが、皮膚テスト、抗原特異的IgE抗体の陽性率はそれぞれ86.5%、81.4%である。確定診断は誘発試験による。学校で発症することが多いことから、予防策が重要となる。

(解説)

この疾患は食物摂取単独、あるいは運動負荷単独では発症しない。発症時の適切な対応と、その後の再発予防が必要である。そのためには原因食物の特定など、専門的な診断と、学校医、養護教諭、体育教諭などへのこの疾患の啓蒙が必要である。

(文責 加藤 文徳)

 


第460回夏季懇親会

平成18年7月12日(水)に、第460回新居浜小児科医会(夏季懇親会)が「てんふじ」で開かれました。
出席者は9名でした。
                    出席者名
(前列左から) 渡辺敬信、松浦章雄、千坂 綾、塩田康夫、真鍋豊彦
(後列左から) 山本浩一、加藤正隆、加藤文徳、星加 晃(敬称略)

第459回

日時
平成18年6月14日(水)
話題提供 「アデノウィルス流行、そのとき迅速検査は?」 村上記念病院小児科 松浦 聡

話題提供

 アデノウイルス流行、そのとき迅速検査は?

    
村上記念病院小児科 松浦 聡

 アデノウイルス(以後、アデノと略す)感染症の流行にあたり、迅速検査による診断を試みた。200512月から20064月までの当院におけるアデノ迅速検査実施患者は26人で、そのうち陽性者は9人であった。迅速検査によりアデノ感染症と診断したほとんどの患者に対して、それまで投与していた抗菌薬を中止した。一方で、アデノ感染症と診断が得られても、抗菌薬の投与や血液検査などを実施した症例もあった。アデノ感染症は細菌性扁桃炎,マイコプラズマ肺炎,細菌性肺炎などとの鑑別が必要であった。アデノ迅速検査は4-5日続く発熱の原因検索として有効であるとされているが、アデノ感染症に対する特異的治療法が確立されていないため、迅速診断によるメリットは過度の抗菌薬使用の抑制、隔離による伝染の抑制など限定的であると考えられた。

(解説)

 アデノ感染による典型的な咽頭所見は浸出性扁桃炎である。これを見れば早い時期からアデノ感染を疑うことができる。ところが、軽微な咽頭所見でもアデノ感染のことがあり、こういう場合は熱が続いて始めて、鑑別診断のための検査のひとつとしてアデノ迅速診断を実施するということになる。治療薬のあるインフルエンザ、溶連菌感染などと違ってアデノ感染症では、早期診断は早期治療にはつながらない。ただ、早期にアデノ感染症と診断がつけば、不必要な抗菌薬の投与や検査を防げる。そしてなりより、保護者に安心してもらうことができる。早期診断はけっして無駄ではない。

(文責 加藤 文徳)


第458回

日時
平成18年5月10日(水)
話題提供 ニコチン依存症の保険診療 かとうクリニック 加藤正隆
松浦小児科 松浦章雄
話題提供 「病原体定点検査の結果から」

1.話題提供

  保険診療によるニコチン依存症

       かとうクリニック  加藤 正隆

ニコチン依存症治療の意義として、喫煙はわが国のような先進国において疾病原因の中で防ぐことのできる単一で最大のものであり、禁煙は今日最も確実にかつ短期的に大量の重篤な疾病を劇的に減らすことのできる方法であること、禁煙推進は喫煙者・非喫煙者の健康の維持と莫大な保険財政の節約になり社会全体の健康増進に寄与する最大のものであることがあげられる平成1710月、関係9学会(日本循環器学会、日本公衆衛生学会等)において、「喫煙」は「ニコチン依存症と関連疾患からなる喫煙病」とされ、「禁煙ガイドライン」が策定された。ニコチン依存症は、「再発しやすいが、繰り返し治療することにより完治しうる慢性疾患」と位置づけられた。2005年2月WHO「タバコ規制枠組条約」が発効し、「締結国は、タバコの使用中止及びタバコへの依存の適切な治療を促進するため、自国の事情及び優先事項を考慮に入れて、科学的証拠及び最良の実例に基づく、適当な、包括的及び総合的な指針を作成し及び普及させ並びに効果的な措置をとること」(同条約第14条)が求められている。
 ニコチン依存症の諸外国の医療保障制度における状況は、英国では1999年からNHSの下で禁煙治療が開始、米国では民間保険会社の8割以上が禁煙プログラムや禁煙薬剤費を給付対象、MedicaidMedicareでも給付、カナダでは殆どの州で医師によるカウンセリングが保険給付の対象(ケベック州以外では薬剤は対象外)、ドイツは一部民間保険でカウンセリング及び薬剤給付、多くの民間保険でグループ禁煙プログラムを無料提供している。 禁煙治療の費用対効果は10~70万円/救命1年(本来救えたはずの1人の生存年を1年延長するのに要する費用)とされ、高血圧治療の120~820万円、高脂血症治療の300~1800万円よりも遥かに効率的である。
 平成18年4月のニコチン依存症保険適用にあたっては施設基準が設けられたが、これは保険給付を抑制しようとする財務省・保険者側からの強い圧力に対し、保険適用を見送られないようにするための止むを得ない措置であった。しかし、結果的には敷地内禁煙などの施設基準が医療機関の早期の禁煙化に結びついたり、ニコチン製剤を投与するだけのような不充分な禁煙治療ではなく呼気CO濃度測定などの必要不可欠な機器が整備されたりするなどの望ましい状況をもたらしている。
  保険適用範囲が、外来患者・20歳以上・ブリンクマン指数200以上とされたのは極めて残念である。入院患者への適用はもちろん、喫煙開始の90%以上が未成年からという現実を考慮すると未成年の禁煙治療にこそ保険適応が望まれる。保険点数が、第5回が第2~4回と異なる設定になったのは第5回に達した人数を把握するためである。禁煙治療の実際は県医師会から配布された「標準治療手順書」を参照願いたい。
 今回の保険点数改定で注目を集めたニコチン依存症の保険適用だったが、4月28日に「ニコチン貼付剤処方は混合診療にあたる」との厚生労働省通達が出されたのには驚いた。臨床現場は混乱に陥ったが、5月12日に厚生労働大臣が陳謝し、5月中にニコチン貼付剤が保険適応されるという朗報により決着することになった。
 今後ますます禁煙治療が推進され、喫煙関連疾患が抑制され、保険財政の節約と社会全体の健康増進がもたらされることを強く願っている。

(解説)

禁煙は今や社会全体で取り組むべき課題となった。いったん喫煙習慣がつくと、禁煙のためには大きな努力がいる。未成年者に対し喫煙させないこと、これが大人の責任である。

2.話題提供

 
病原体定点検査の結果から
    
      松浦小児科 松浦 章雄

 平成16年から平成18年3月までの間、病原体定点として行ったウイルス分離の結果を報告し、この間に得られたいくつかの知見を紹介した。 検出されたウイルスは、平成16年に156検体から67株、平成17年は149検体から116株、平成18年は3月までに39検体から38株であった。得られた知見のうち興味あるものを列挙する。

 1.平成17年に手足口病を起こしたウイルスは、Cox.A-16Cox.A-6Cox.A-10の3種類があった。Cox.A-6は、咽頭スワブのみならず発疹の水疱内容液からも分離された。これは、Cox.A-6が手足口病の病原ウイルスである確証となる貴重なデータであった。また、Cox.A-6感染症の臨床像は急性咽頭炎・ヘルパンギーナ・手足口病と多様であり、同時期に同胞が罹患して、一人がヘルパンギーナ、一人が手足口病という例もあった。
 2.平成17年秋に小流行した不明発疹熱の病因はCox.A-9であった。
 3.嘔吐下痢症の吐物から、ノロ・サポウイルスが検出された。これは、吐物を介して感染することの確証である。
4.この冬流行した嘔吐下痢症が、嘔吐中心の軽症のものから嘔吐・下痢ともにやや重症のものに変化したが、前者がノロ・サポによるもので、後者がA群ロタによるものであることが裏付けられた。
 5.この冬、新居浜地方のA型インフルエンザは2回流行の波があった。1回目がA香港型で、2回目がAソ連型によるものであった。
 6.平成17年秋から冬にかけて流行したアデノ3型感染症70例につき検討した。その臨床像は、典型的咽頭結膜熱が13名(18.6%)、非定型的咽頭結膜熱(高熱が持続した後、解熱頃にごく軽い角結膜炎を来す)が11名(15.7%)でこの両者を合せても24名(34.3%)であった。また、急性咽頭炎が36名、浸出性扁桃炎が11名、流行性角結膜炎が2名であった。平均発熱期間は4.7日であった。また、呼吸器症状・カタル症状が軽微なのに比して腹部症状(嘔吐・下痢・腹痛)を来した者が34名(49%)あったことが注目された。これらのことから、アデノ3型感染症の臨床像は多様で、咽頭結膜熱はそのごく一部に過ぎないことが分かる。

(解説)

手足口病、ヘルパンギーナなどは臨床症状が同じでもその原因ウイルスがいくつかある。病原体定点検査の目的は、これら流行する病気の原因ウイルスが何であるかを明らかにすることである。これを全国規模で継続して実施することにより、あるウイルスの流行の様子、臨床症状の特徴が明らかにされる。それはわれわれの知識として蓄積され、日常診療に反映される。

(文責 加藤 文徳)


第457回

日時
平成18年4月12日(水)
症例呈示 クローン病の1例 県立新居浜病院 岡本健太郎
十全総合病院小児科 上田 剛
話題提供 「保育園、幼稚園における感染制御」

1.症例呈示

 クローン病の1例

   愛媛県立新居浜病院小児科 岡本健太郎千阪 綾

症例は14歳男児。学校検尿で尿蛋白を指摘され、精査目的で来院した。身長155.5cm、体重30.5kgと著しい体重減少を認め、入院精査した。受診する数ヶ月前から全身倦怠感、下痢、体重減少がみられていた。口腔内アフタと痔核を認めた。末梢血液検査で炎症反応の上昇と貧血がみられ、便潜血が陽性であった。大腸内視鏡検査で、上行結腸を中心に縦走潰瘍を非連続性に認めた。以上からクローン病と診断し、エレンタールによる栄養療法を開始した。当初、エレンタールの経口投与は困難を伴い、フィーディングチューブを併用したが、フレーバーの工夫などにより経口摂取ができるようになった。炎症反応や全身状態は改善し、体重も増加し、退院した。 今後、再燃に注意が必要である。

(解説)

クローン病は、消化管を主な病変部とする原因不明の難治性炎症性疾患である。近年、小児においても稀な疾患ではない。消化器症状に先行して口腔内アフタ、全身倦怠感、身長の伸びの低下などが見られることも多い。治療は重症度に応じて選択されるが、初期治療は、経腸栄養剤による栄養療法であり、薬物療法はメサラジンが第一選択である。欧米で一般的治療となりつつあるinfliximab(抗TNF-α抗体)の小児への投与については、今後検討されるべき課題である。

2.話題提供

 保育園、幼稚園における感染制御-園児間の病原体伝播を阻止することは極めて困難!

      全総合病院小児科 上田 剛

 保育園や幼稚園(両者を園と略す)では、免疫が未発達である乳幼児たちが濃厚な接触をするため、感染症の多くが流行する。近年の園児の増加や低年齢化により感染症の流行が拡大する可能性が高く、園における感染症を制御する必要性があると考える。
 病院など医療施設では、院内感染予防のために、すべての患者に対して標準予防策で対応する。これは、血液、体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚粘膜は何らかの感染性をもっていると考える感染予防策で、問題となるような感染症であれば、感受性者対策と、隔離などの感染源対策に加え、空気感染、飛沫感染、接触感染など感染経路別の対策を行い、その有効性が示されている。
 一方、園の感染予防対策は、改訂保育所・幼稚園園児の保健(日本医師会編集)に記載され、具体的には、うがい、手洗いの励行、予防接種、出席停止、発疹が出現した児の隔離、下痢がある場合のオムツ処理、手洗い、必要なら隔離、トイレとプールの衛生、手指消毒、汚染された器具や室内の消毒などであるが、予防接種以外はその効果があるとは言えない。RSウイルス、アデノウイルス(アデノ)、ロタウイルス(ロタ)、ノロウイルスを例に挙げると、この4者とも不顕性感染でも感染源となり、前3者は環境や手指の表面でも一定の期間生存している。アデノとロタは発症2日前からウイルスを排泄している。これらに対して、園における感染予防策は標準予防策が必要である。また、細菌についても、肺炎球菌やインフルエンザ菌の上気道保菌率の抑制には、標準予防策で対応するしかない。一見無力のようだが、標準予防策を考えることによって園の衛生上の改善点が浮き彫りとなる。たとえば、手洗いをするべき時や意義が判る。おむつ交換の場所と食事の場所がしっかり区別される。鼻汁、唾液、眼脂などの付着したティッシュの処理方法や使用後のおむつ保管場所が決められる。吐物・唾液などの体液で汚染された床・寝具・玩具などが消毒される。これらのことから園全体での衛生意識が向上し、感染症の流行がある程度減少することが期待できると考える。
 園医、保育士、保護者で感染症の理解を深め、さらに予防策の重要性を小児科医と共有できるように努めてゆきたいと考えた。
 最後に、インフルエンザ菌bワクチンの導入が早急に実現されることを願う。

(解説)

わが国では少子化にもかかわらず、乳児園、保育園などの託児施設に通園する子供の数は増加している。さらに政府は、これら託児施設の充実を少子化対策のひとつにあげている。これらの施設では、何らかの感染症が発生すると、それを食い止める手段は何もない。小児科医はその現実を良く知っている。老人施設でノロウイルス感染が流行しただけで、マスコミは鬼の首を取ったように報道し保健所が介入するが、託児所で同様のことが起こっても誰も何も言わない。おかしな国である。

(文責 加藤 文徳)


矢口、小西、岩瀬先生の送別会
(平成18年3月8日、於「東風」)

 平成18年3月8日(水)に、矢口、小西、岩瀬先生の送別会が「東風」で開かれました。
 出席者は11名でした。
 (前列左から) 小西行彦、岩瀬孝志、矢口善保
 (中列左から)松浦章雄、塩田康夫、真鍋豊彦
 (後列左から) 後藤振一郎、山本浩一、岡本健太郎、加藤文徳、松浦 聡(敬称略)

第455回

日時
平成18年2月8日(水)
症例呈示 Stevens-Johnson症候群と考えられた1例 十全総合病院 占部智子
山本小児科クリニック 山本浩一
話題提供 「乳児のおしりが大変」

1. 症例呈示

  Stevens-Johnson症候群の一例

        十全総合病院 小児科 占部智子

 3歳女児のStevens-Johnson症候群と考えられる症例を経験した。発熱、咽頭痛、咳で発症し、近医でケフラール、翌日、紹介医でメイアクトを処方されていた。同日午後から発疹が出現した。紹介入院時、口唇の水疱と顔・手掌の紅斑を認めた。皮膚の発疹は広範囲に広がった。皮膚の痛みよりも、口内痛、眼や陰部の痛みが顕著であった。さらに肝障害を伴っていた。粘膜症状の強いことが、Stevens-Johnson症候群に特徴的と思われた。
 Stevens-Johnson症候群の原因としては、半分が薬剤性で、他にヘルペスウイルス、マイコプラズマ感染が多い。本症例では、口唇のヘルペス様水疱からヘルペスウイルス感染を疑ったが、抗体価の上昇はなかった。原因は特定できなかった。
 治療は原因疾患に対する治療と対症療法のみである。重症型の死亡率、疾患の回復遅延などに対するステロイド投与の効果は不明だが、症状の寛解は顕著であるとされている。本症例でも、ステロイド投与にて顕著な症状の寛解が得られたが、肝障害、顔・手掌の発疹が6 週目まで持続した。

(解説)

 Stevens - Johnson症候群は、粘膜病変を特徴とした全身性炎症性疾患である。高熱と、全身にわたる滲出性紅斑、角結膜炎、口唇、口腔、陰部粘膜のびらんなどがみられる。全身症状は重篤であり、時に敗血症、肺炎、消化管出血、腎不全、心不全を合併し死亡する危険もある。その病因の多くは薬剤である。われわれが日常使用する多くの薬剤で、その副作用欄には皮膚粘膜眼症候群(Stevens - Johnson症候群)の一行がある。注意したからといって発症を防げるわけではないが、いったん発症してしまうと結果は重大である。決して、忘れてはならない疾患である。

2. 話題提供

   乳児のおしりが大変 
     
     山本小児科クリニック  山本 浩一
 

 紙おむつができた当初は、製品に問題があったため紙おむつ使用によるおむつかぶれが目立った。しかしその後、布おむつより紙おむつが明らかに優秀となり、今ではほとんどの乳児が紙おむつを利用するようになった。その紙おむつの優秀さは、時に観察される「アトピー性皮膚炎の乳児で身体では湿疹があるのに、おむつの中は適度な湿度が保たれ、非常につるつるとしたきれいな肌をしている」ことからも推定される。いまでも下痢の後の軽いおむつかぶれは多いのだが、このような状況で、最近は重症なおむつかぶれを診ることが随分と少なくなっていた。
 ところが、数年前から急に乳児の肛門や肛門周囲の高度なトラブルが目立つようになってきた。しかも、下痢とは無関係な症例が目立つようになった。肛門裂傷があり、肛門周囲の皮膚炎が高度で、なかには排便を嫌がるほどの傷だらけの肛門を診ることがある。このような症例では、少しの力で肛門に皮膚の亀裂が入るほど、肛門周囲の皮膚が浮腫状で荒れている。以前は排便時に、家では軽くトイレットペーパーでふいた後ぬるま湯で洗い流し、外出した時だけおしりふきを使用していた。より安全な(?)おしりふき製品ができて、今では家庭でもごく普通にこれを使用するようになった。すなわち高度の肛門トラブルの発生と時を同じくして、おしりふきがトレンドになっていた。
 現在は、ほとんどの乳児が排便や排尿後におしりふきだけでふいてもらっている。さらにおしりふきは、成人でも使用されるようになり、介護を受けている方だけでなく、普通の大人も使用しているとのことである。時代は動いている。どうもこの乳児の肛門や肛門周囲の高度な皮膚トラブルの原因を追究していくと、おしりふきの使用と関係がありそうである。
 皮膚炎の形を観察すると、ふくために使用したおしりふきのあたった部位の皮膚が擦りむけたように傷害されている。勿論、おしりふきによる接触性皮膚炎も考えなければならないが、皮膚炎というより擦り傷状である。したがって、おしりふきそのものの刺激というよりも、おしりふきの使用方法に問題がありそうだと考えられた。おしりをきれいにしようと一生懸命強くこすっているのではないだろうか?洗い流すことをしないで、おしりふきだけで便の匂いがしないようなきれいなおしりにするためには、幾度も幾度も擦ってふかねばならない。その結果が、おしりの高度のトラブルになる。このように、主な原因は製品を使用する人にありそうである。おしりふきを一時中止していただき、洗い流すように指導すると肛門周囲の皮膚炎は感染がなければすみやかに治っていく。ただ肛門は、肛門そのものの浮腫や亀裂が強く、治癒するには少し時間がかかる。それ程ひどく肛門全体が炎症を起こしていて、単なる硬便による裂傷とは全く異なる。このため肛門の痛みを強く感じ、排便することを止めてしまう症例がみられた。排便の習慣が確立する前の乳児にとって、肛門や肛門周囲のトラブルは大変重い症状と考えられ、このような症例では診断後の充分な経過観察と指導が要求される。

 まとめ:平成16年3月から平成18年1月までに外来で経験した、下痢以外の原因による乳児のおむつかぶれ16症例の肛門周囲の写真を呈示して、乳児の肛門および肛門周囲の皮膚が、単純なおむつかぶれではなく擦り傷状になっていている症例が増えてきたことを示した。この原因として、おしりふきの使用が推定された。また、経過観察ができた症例の写真を呈示し、排便後おしりを洗い流し、おしりふきの使用を控え、擦ることを止めることによって改善することを示した。このようなことから、おしりふきの使用そのものよりも、使用にあたっての擦りすぎが原因になっていることが推定され、育児に携わる人におしりふきの使用上の注意を十分に説明することが必要であると考えられた。

(解説)

 
おむつかぶれは乳幼児にとって、もっともありふれた疾患のひとつである。そして、紙おむつもおしりふきも、育児用品としてはなくてはならないものになった。ありふれたことの中に、いろいろなことが隠されている。
(文責 加藤 文徳)

第454回

日時
平成18年1月11日(水)
場所 新居浜市医師会館
症例呈示 「2回再発した川崎病の一例 住友別子病院 加藤文徳
ふじえだファミリークリニック 藤枝俊之
話題提供 「小児の臨床診断技術向上のために」

1. 症例呈示

   2回再発した川崎病の一例
     
       住友別子病院小児科 加藤 文徳


 川崎病全国調査成績では川崎病の再発頻度は3.1~3.6%で、このうち2回以上の再発頻度は0.3%と比較的まれである。今回、2回再発した川崎病の一例を報告した。発症のたびに臨床症状は重症化し、治療抵抗性となった。しかし心臓合併症は残さなかった。
 これまでの川崎病疫学調査、症例報告などから、川崎病再発例の特徴は次のように考えられている。
 再発例の性比については男性が多いとする報告と、性差は無いとする報告がある。頻回再発は男子に多い。初発から再発までの期間については、初発から2年以内の再発が多く、ピークは1年以内である。再発例の主要症状に関しては、初発時、再発時ともにいずれの項目とも高い頻度で認められる。特に、頻回再発例では再発時に関節炎を伴うことが多い。疫学調査では川崎病再発例の冠動脈病変を含む心臓合併症の頻度は初発例の約2倍、巨大冠動脈瘤合併率も約2~1.5倍。ただ、再発例における冠動脈瘤合併率に関する臨床報告のデータでは、ガンマグロブリン療法が行われる以前では50%と高いが、最近の報告では全く冠動脈瘤合併を認めていないものもある。再発時の冠動脈病変合併リスクとしては、初発時の冠動脈病変合併、冠動脈病変の残存、男性、年長時の再発、初発から再発までの期間が長いことなどが指摘されている。疫学的には川崎病再発例では初発例に比べて臨床経過がより重症であることが指摘されているが、一方で、重症度に差が無いとの報告もある。初発時にガンマグロブリン療法が不応であった場合は、再発時も治療抵抗性である可能性が指摘されている。
 頻回再発と重症度との関係、再発例におけるガンマグロブリン療法の評価などは、今後の全国調査で明らかにされると思われる。

(解説)

 川崎病そのものは日常よく遭遇する疾患である。再発例も時に経験する。ガンマグロブリン大量療法により、川崎病全体としては冠動脈瘤などの心臓合併症の頻度は低下している。再発を繰り返せば心臓合併症の危険も高まると考えるのが普通だが、現在までに報告された限りでは、必ずしもそうとは言えないようである。再発例における心臓合併症のリスクに関しては、今後再発例を集積し検討することで明らかにされるであろう。

2. 話題提供

   小児の臨床診断技術向上のために

       ふじえだファミリークリニック 藤枝 俊之

 コンピュータの普及により我々小児科医が医学情報を得る方法は大きく様変わりしている。書籍では得ることができず臨床経験によって習得していた知識も、少しずつではあるが動画や音声情報によってコンピュータ上で疑似体験することが可能となってきている。今回、臨床診断技術を習得するのに役立ちそうなツールとしてDVD版小児科診療アトラスを例に、最近の知識習得事情を紹介した。医学生や若手医師の自己学習の参考となれば幸いである。
 また、併せて最近の医学専門辞書搭載翻訳ソフトウェアの使用方法についてデモンストレーションを行い、日本人が苦手とする英文情報に対するコンピュータの活用方法についても紹介した。最近のソフトウェアは日常使用可能なレベルまで翻訳精度が向上してきている。通常のテキスト翻訳のみならずアドイン機能による他ソフトとの連携、PDF翻訳など操作性も向上しており診療の役に立つのではないかと考えられた。

(解説)

 今回は、小児科疾患の動画データを含んだパソコン用教育ソフトと、海外の文献検索に役立つ自動翻訳ソフトが紹介された。教育ソフトでは、例えば、てんかんの臨床発作の様子が動画で提供されている。珍しいてんかんの臨床発作は文章表現だけでは理解しにくいが、動画で見ることにより理解が簡単になる。
 一方、自動翻訳ソフトは、インターネットから海外情報が簡単に入手できるようになった現在、その存在意義は高い。両ソフトとも決して安価ではないが、これから医学を勉強しようという医師にとっては、利用価値の高いものと思われる。

(文責 加藤 文徳)


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