第30回演奏会に寄せて
音萌の会会長 尾崎 光芳
音萌の会演奏会も一回一回積み重ねて、今年、第30回の演奏会を催すことになった。OB主体による演奏会連続年開催記録(?)自己更新中である。
この30年間、別に夏の演奏会の時だけ集ってきた訳ではない。毎年会員名簿を更新し、年に数回は会報を発行して近況を伝え合い、会員相互の親睦を深める行事も事ある毎に行ってきた。常に「会」としての存在を意識してきた。そして何より現役吹奏楽部への後援を旗印に。その自己の存在主張は30年間途切
れること無く、そう、綿々と紡がれてきたのである。我田引水、自画自賛には違いないが、まあ途絶えず続いてきたってのは大したものなんじゃないかと思う。
当たり前のことだけれども、音萌の会も当初からこの先何十年間もの活動を意識して始められた訳ではない。最初はそれこそ軽い気持ちだったろう。最初の熱意があまりにも熱かったため、それが30年にわたって毎年増える後輩たちをも奮い立たせてきた、そして共感されてきた、30年続いてきた要因というのは案外そんなところじゃないだろうか。
しかし、これからの30年間はそうはいかないだろう。東高吹奏楽部がある限り毎年増える会員、それに伴い、会員同士は全然面識がないということもますます増えていくだろうし、組織としての求心力はなお薄れていくだろうことは否めない。次の30年を、どういうふうに会としてのアイデンティティを失わずに存続していくかは、これからの大きな目標であろう。
それはさておき、今年は30回記念ということで、過去、吹奏楽部を指導してこられた「恩師」をお招きして、そのタクトのもとで1曲演奏出来ることとなった。我々の物好きに快くつきあって下さる先生方には頭が下がるばかりである。しかしこれは想像以上に、とりわけ音萌の会からしばらく遠ざかっていた
会員に好評で、その話を聞いて、瞬時に青春の熱い滾りが体を駆け巡り、随分前から埃を被りっぱなしの楽器を手に、20年ぶりに音萌のステージに復活した者もいる。ステージ上には親子ほども年の離れた会員が混在しているが、その楽譜を、指揮者を見つめる瞳には同じ光が宿っている。世代は違えど、同じように音楽が大好きで、湧き出る汗を拭き拭き音楽と格闘したそれぞれの夏の瞳なのだ。
演奏の出来まであの夏と同じ・・・という訳にはいかないかもしれないが、同じように暑いそれぞれの夏を過ごした共通体験を持ち続ける限り、私なんぞが心配するまでもなく、次の30年も意外にあっさり過ぎていくような気が、今している。
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