第2部 曲目紹介
イギリス民謡による行進曲 作曲:高橋 宏樹
今年度の全日本吹奏楽コンクールの課題曲であり、題名にもあるように、グリーンスリーブス、埴生の宿、アニーロリーという3曲のとても親しみやすいメロディをもとに作曲されている。また、一部にドリア旋法という特殊な音階を用い、民謡独特の雰囲気を醸し出している点が興味深い。
交響詩「ドン・ファン」Op.20 作曲:R・シュトラウス
ドイツ・ロマン派最後の巨匠と呼ばれるリヒャルト・シュトラウスによって1887年から翌年にかけて作曲されたこの作品は、弱冠24歳の時に作曲されたにもかかわらず、曲のいたるところに巨匠的な鮮やかさが見られ、現在では彼の代表作のひとつとなっている。
ドン・ファンとは14世紀にスペインに実在したと言われる人物で、しばしば「女たらしな放蕩者」として描かれるが、シュトラウスの作品では、最高の女性を求めて遍歴を重ねる「理想主義者」として描かれている。
曲は「快楽の嵐」によって華々しく幕を開け、続いて情熱にあふれたドン・ファンの第1主題が表れる。その後ピッコロによって女性のテーマが表れ、官能的な愛の場面が展開される。しかし彼の情熱はそれで満たされることはなく、その後も様々な女性のテーマが提示される。(残念ながらこの部分はカット)そんな中、ホルンによってドン・ファンの第2主題が吹奏され、彼の欲求は最高潮に達し、女性のテーマも対位法的にからみ合い、壮大なクライマックスを築き上げる。しかし結局、彼の欲求は満たされることはなく、最後は自ら死を選ぶ。「トリスタンとイゾルテ」に見られるようねエロスとタナトスという19世紀末の哲学感がこの作品でも色濃く表現されている。
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