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  会長あいさつ

S47卒 井手浩一

 本当に三十五年やって来たのかなあ‥‥と思います。実感としてはその半分くらいにしか思えません。一番最初に何人かの仲間で「おい、やろうや」と始めて、かなりの紆余曲折があって、それでも何とかここまで続いて来て、当初思っていたコースとは違ってしまった面もあるけれど、今年も演奏会が開催できることは素直に嬉しいと思います。

 一つの世代が三十年と言われてますから、この歳月はあまり短くはありません。私自身もその間に父親を見送り、母親がメッキリ弱って年を取って‥‥ということで、これは古参の会員にはみな共通しています。自分たちもだんだん自由はきかなくなる、時間も、相当に努力しないと作れなくなる、それでも音楽は楽しいです。こんなに息の長い愉しみってないです。これからも若い友人との絆を大切にして、一年一年を積み上げて行きたいと思います。

 今夜は私たちの演奏と同時に、高校生の作る音楽にも耳を傾けてやって下さい。これは、本当に全身全霊の音楽です。そこには、この一年の彼らの歓びや苦しみが丸ごと込められています。R.シュトラウスの音が虚空に消えて行った後の一瞬の空白、そこから湧き起こるどよめきを想像すると、今から涙が出そうです。

 今年は彼らには、特に三年生には辛い年でした。でも、わたしは今の東高吹奏楽部の作る音楽には強い誇りを持っています。あの柔らかく溶け合った、聴く人の心を包み込む響き(東高サウンド)は、84人の部員全員で作り上げたものです。それを我々の演奏会で披露して貰えることに歓びを感じています。

 音楽は生まれる片端から消える芸術だから素晴らしいと思います。今夜の演奏会で響く音楽も、その場限りのものです。ですが、今日来てくださった皆さんの心に「ああ、良かった」という記憶が残ることと信じています。

最後になりましたが、浜辺先生、酒井先生、この夏は本当におつかれさまでした。お二人の精神力、頑張り振りに心からの敬意を表します。これからも東高吹奏楽部と音萌の会を宜しくお願い致します。