定例新居浜小児科医会(平成5年3月以降)

新居浜小児科医会誌

第400回記念

平成13年12月25日発行


平成21年(488回→498回)


第498回

平成21年新居浜小児科医会忘年会
 (平成21年12月9日、於平八)

平成21年12月9日(水)、新居浜小児科医会忘年会が「平八」で開かれました。
出席者は10名でした。(敬称略)
(前列左から)松浦章雄、渡辺敬信、塩田康夫、真鍋豊彦
(後列左から)森谷友造、矢野喜昭、濱田淳平、井上直三、山本浩一、加藤文徳

第497回

日時
平成21年11月11日(水)
症例提示 「性分化異常症の1例」 住友別子病院小児科 濱田淳平
話題提供 「Hib髄膜炎の3例とHibワクチンに関する話題」 松浦小児科 松浦章雄
その他

1.症例呈示

  性分化異常症の1 
    
     
住友別子病院小児科 濱田淳平

 性分化異常症とは、染色体, 性腺, または解剖学的性が非定型である先天的状態と定義され、遺伝的性(染色体の性), 性腺の性, および解剖学的性(内性器と外性器の性)のいずれかに異常がある状態を示し、通常、新生児期・乳児期の外陰部異常または思春期の二次性徴欠如で発見される。今回我々は、経験した1例を通してこの疾患の抱える問題点を提示したい。
 症例は現在10歳で、女児として養育されている。家族歴は特記すべき事項はない。現病歴は、1ヵ月健診で両側鼠径ヘルニアを指摘され、4ヵ月時に鼠径ヘルニア手術時に、迅速組織検査にてヘルニア内容が精巣と判明した。 その後の染色体検査にて、46, XY (正常核型)であり、精巣性女性化症候群と診断された。 その後2歳時に両側精巣摘出術が施行された。今回、性腺補充療法の相談のため受診された。
 現症は、軽度肥満傾向を認めた。乳房腫大は認めなかった。婦人科へコンサルトしたところ、外陰部所見は年齢相当の女性性器であり、膣入口部は形態学的にも問題なかった。なお、超音波上、子宮は確認できなかった。内分泌検査では、原発性性腺機能低下症を反映して、LH, FSH著明値を呈した以外には特に異常所見を認めなかった。
  精巣性女性化症候群では、抗ミュラー管ホルモンによりミュラー管は退縮するため、子宮・卵管・膣上部1/3が欠損する。つまり、月経発来がなく、卵子も欠如しているため、妊娠・出産は不可能となる。一方、アンドロゲン不応症であり、ウォルフ管も退縮し、外性器も女性型を呈するため、社会的「性」は「女性」となる。本症例は、完全型精巣性女性化症候群であると考えている。
 症例を通しての問題点は、まず、患児へはどのタイミングで、どの程度まで告知すべきかという点である。患児が前思春期であることもあり、母親は比較的病識はなく、ホルモン補充療法の必要性および本人への告知の問題に関しては関心が低い状況であった。一般に、46,XY CAIS(完全型アンドロゲン不応症)のすべてが、女性としての自認を示すことや、完全型精巣性女性化症は、外陰部は完全な女性型で、思春期になると乳房腫大や声, 性格も成熟女性そのものとなりやすいことが知られており、本症例では女児として問題なく養育されてきており、 46,XYであることを告知する必要性はないと思われる。しかし、月経発来がなく、妊娠・出産は不可能であること、女性としての二次性徴の促進、長期的な骨密度の維持のためにはホルモン補充療法が不可欠であることは、ホルモン補充療法開始時には告知すべきと考えられる。
 次に治療に関して、精巣摘出術のタイミングは適切であったかという点についてであるが、本症例のように精巣が鼠径ヘルニアと関連していたり陰唇部にあれば、悪性化を懸念して、思春期前でも摘出すべきとするのが一般的な見解である。
 本症例の、両側精巣摘出術施行のタイミングは適切であったと考えられ、今後は、思春期年齢到達後に治療の必要性を患児に説明し、エストロゲン補充療法を行うことになる。
 最後に、愛媛県においても長期的には、生直後から長期かつ多岐に亘るサポートを提供することができる「性分化異常症ケアチーム」結成を検討していく必要があると思われる。

2.話題提供

Hib髄膜炎の3症例とHibワクチンの話

   松浦小児科    松浦章雄

 開業以来Hib髄膜炎を3例経験した。10ヶ月、1歳2ヶ月、1歳5ヶ月の3例で、3例目は発症数時間で激しい症状であった。3例とも住友別子病院へ紹介し、加療していただき、順調に回復し、後遺症も無かった。3例ともに本院での診察時には、ケルニッヒ徴候・項強直の髄膜刺激症状を認めなかった。入院加療が必要と判断した最大の根拠は、患児の「顔貌」であった。日常多くの発熱児を診る開業医の診療で、化膿性髄膜炎のような重篤な疾患を1〜2日目にもれなく発見するのは、簡単なことではないと実感している。
 わが国でのHib髄膜炎の頻度については、いろいろ報告があるが、近年増加傾向にあり、全国で年間600人の患者数と推定されている。この報告から概算すると、新居浜市で2年に一人位発生していることになる。
 Hibの夾膜多糖体に対する抗体価(PRP抗体価)の年齢による推移から、この抗体価の低い低年齢層でHib髄膜炎が発生することを示した文献を紹介した。
また、諸外国では、十数年前からHibワクチンを導入し、Hib髄膜炎患者数を
99%減少させたことを示す文献を紹介した。
 諸外国から大きく遅れて、わが国でもやっと平成20年12月からHibワクチンが開始された。しかし、まだ高額の任意接種であり、またワクチン不足のため、あまり普及していない。平成20年12月から平成21年10月までの日本全体・愛媛県・新居浜市でのワクチン申込者数・接種者数を調査し、また本院での接種者数を報告した。全国では、乳児の30%位が申し込んでいるようである。愛媛県・新居浜市ではやや少ないように思われる。現在、ワクチンが不足しており、1ヶ月に病院では10名、診療所では3名しか配分されない。本院では、申し込んでも6ヶ月位待ってもらう有様である。平成22年7月頃といわれるワクチンの増産が待たれる。
 現在、全国で43の自治体が、Hibワクチン接種に公的助成を行っている。そ
の内容を紹介した。当地でも、Hibワクチン接種への公的助成を行政に働きかけていく必要があろう。


第496回

日時
平成21年10月14日(水)
症例呈示 「ー上手に卵を食べるにはーハイリスク鶏卵アレルギー児の除去食解除の試み」 住友別子病院小児科 楠目和代
井上直三
森谷友造
話題提供 「2009年 腸管出血性大腸菌O26集団感染」 十全総合病院小児科 占部智子
その他 「500回記念誌」について

1.症例呈示
 ー上手に卵を食べるにはー
  ハイリスク鶏卵アレルギー児の除去食解除の試み

     愛媛県立新居浜病院 小児科 楠目 和代・井上 直三・森谷 友造

 ハイリスク鶏卵アレルギー患児卵白RAST0.910UA/ml 29に対し、鶏卵負荷を試みた。入院で卵黄負荷試験を行って閾値を決め、家庭で増量後全卵についても同様に行った誘発反応は全卵負荷3時間後にもみられ、アナフィラキシー1度5件・210件・34件・4だった。閾値から負荷を続け、25例は1年全卵摂取可能になり、再燃はなかった。卵白RASTは、22例中20例で低下していた。

2.話題提供

  2009年 腸管出血性大腸菌O26集団感染  

     十全総合病院 小児科  占部智子
〈事例〉

2009年5月28日、新居浜市内の事業所内保育施設に通う2名の園児の便から腸管出血性大腸菌O26(VT1産生、VT2非産生)(以下O26と省略)が検出され、集団感染が疑われた。同日、西条保健所による、保育施設内の調査、全園児(38名)、全職員(10名)について1回目の便検査が行われた。
 61日に、発端となった2名を含む園児24名、職員3名にO26感染が確認された。翌日の6月2日から、O26感染者を除菌できるまで登園禁止としたが、64日から8日までに、2回目の便検査で、1回目陰性の4名(園児4名、職員なし)からO26が検出された。最終的に、園児28名、職員3名の計31名がO26に感染していた。感染者31名中、有症者は17名(園児17名)、無症状病原体保有者は14名(園児11名、職員3名)であった。重症例はいなかった。6月10日〜14日、休園とした。6月15日、集団保育を再開した。再開時に菌が消褪していない児は3名であった。6月27日に園児全員の除菌が確認された。

〈感染の詳細〉

集団感染が疑われた5日前の2009523日、12名の園児が下痢を発症している。感染者は、A組(0〜1歳児)7名中3名で、3名全員が有症者であった(有症率33=100%)。B組(12歳児)18名中14名で、うち有症者が9名(有症率914=64%)で無症状保菌者5名であった。C組(3歳児以上)13名中11名で、うち有症者が5名(有症率511=45%)で無症状保菌者6名であった。職員では、3名全員が無症状保菌者であった。年齢が大きいほど、無症状保菌者の割合が増えていた。すべてのクラスに感染者があったため、食中毒も疑われたが、食事の保存がなく過去の食事調査はできなかった。改善策として、新しく保管庫が設置され、調理場専用の手洗い場も新設された。

〈過去の集団感染との比較〉

国立感染症研究所の病原性微生物検出情報に、保育施設におけるO26集団感染の報告が2002年〜2008年に13件あったので比較した。今回の報告と共通して、@無症状保菌者が多い、A重症例はなく、B便検査2回目で初めて感染が判明した例が多かった。

@13件の全陽性者359名のうち、無症状保菌者が233名(65%)で、今回の報告では無症状保菌者が1431=45%であった。
A重症例がなかったのは、O26は、VT1を産生するが毒性の強いVT2を産生しない菌が多いためである。
B便検査2回目で初めて感染が判明した例は、13件のうち6件にあった。潜伏期間が3〜5日と長いため1回目は陰性であったが、1回目の培養結果が出るまでに人→人感染を起こしたものと考えられた。多くの保育施設では、隔離室はあっても1部屋しかない。隔離対象者が多数いた場合、全員を隔離するのは困難である。小児の病気の大半は感染症である。軽症であれば子供を預けることができる園は便利であるが、反面、園内で感染症は流行しやすい。どういう症状の時に、登園禁止や優先的隔離の対象にするか、知識の向上・研鑽が望まれる。

〈まとめ〉

2009年に新居浜市内の保育施設で発生した腸管出血性大腸菌O26の集団感染について報告した。今回の報告が、今後の対策の参考になれば幸いである。


第495回

日時
平成21年9月9日(水)
症例呈示 「治療に難渋して初めて発覚した代理ミュンヒハウゼン病の症例」 住友別子病院小児科 森谷京子
話題提供 「乳児の細菌性腸炎?・・粘血便・粘(血?)便を呈した乳児の便細菌培養結果について」 山本小児科クリニック 山本浩一

1.症例呈示

 治療に難渋して初めて発覚した代理ミュンヒハウゼン病の症例

   住友別子病院小児科 森谷 京子

2.話題提供

 「1歳未満の細菌性腸炎?」
   
・・粘血便・粘(血?)便を呈した乳児の便細菌培養結果について

   山本小児科クリニック 山本 浩一 

乳児は、腹部膨満があると不機嫌になる。母親は、乳児が泣くので空腹なのかと思い頻回に哺乳する。溢乳が起こり、その結果顔の湿疹の出現や、鼻への刺激さらには誤嚥がおこり咳が出てまるで風邪をひいたような症状を呈する。主訴は、顔の湿疹や咳となる。このような乳児に、治療のため浣腸をするとよく粘液便が観察される。その便の細菌培養検査(=便培養)をすると、ブドウ球菌(MSSA、MRSA)や大腸菌(2+〜3+)がよく検出される。そして腸内細菌叢の改善目的で乳酸菌製剤を投与すると腹部膨満が改善し機嫌が良くなり、1回哺乳量が増え、育児が大変楽になる。
 このようなことがあるため当院では、1歳未満で粘液便や粘(血?)便を確認した症例は下痢の症状が軽くとも原則すべてに便培養を実施している。その結果、このところあまりに意外な菌の検出が続いたため、平成18年度から平成20年度までの3年間に便培養をした1歳未満のすべての症例についてまとめてみた。
 今回の報告は、排便回数に関係なく、とにかく粘液便、粘血便(または粘液便に血が混じる)が確認された症例について実施した便培養の結果報告である。検査した症例は、平成18年度29例、平成19年度28例、平成20年度32例であった。
 どのようなことを心配して受診したかを知るため、まずは受診時の主訴を、次に細菌性腸炎の可能性があるため季節性があるかどうかを確認する目的で月別の検出菌を、さらに乳児では離乳食を開始しているかどうかで検出菌が変わる可能性があるので月齢での差があるか月齢別の検出菌を、そして最後に検出された菌がどのぐらいの割合を占めるかを知るために菌種毎の検出数をそれぞれ年度別にまとめ、最後に検出された菌が年によって変化しているかを比較検討した。
 主訴の内容をみると、下痢を主訴とした症例は約半数に留まった。次に咳などの上気道炎様の訴えが続き、溢乳のための顔の湿疹を主訴とする症例や、頭血腫で来院したが外来でたまたま粘液便を確認しその便培養の結果が病原性大腸菌という新生児までいた。
 月別の検討では、ブドウ球菌は約30〜50%に検出され、検出率は夏季に高かったが夏季に特別症例が多いわけではなかった。大腸菌(2+〜3+)はブドウ球菌とほぼ同じような検出率であった。乳児では、どちらの菌も季節性は認めなかった。
 月齢別の検討では、乳児期早期のブドウ球菌検出が目立ったが、ブドウ球菌は離乳期に入っての検出も多かった。大腸菌はどの月齢でも検出された。
 年度別の変化をみると、平成18年度は、29症例中ブドウ球菌14例(MSSA10例,MRSA4例)と大腸菌(2+〜3+)9例以外に特別な病原性を持った菌は検出されなかった。ブドウ球菌や大腸菌の検出され方は、平成19年度以降も同じような傾向であった。ただ平成19年度以降、急に病原性大腸菌が検出されるようになった。平成19年度は28例中6例に、平成20年度は32例中8例に病原性大腸菌が検出された。
 以上の結果から、「腹部膨満があれば積極的に浣腸して粘液便の有無を確認することと、症状に係らず粘液便が観察されたら躊躇せず便培養をすべきである」と考えられた。
 乳児でも下痢で明らかな粘液便や血便を呈した症例や病原性大腸菌などの明らかな病原菌を検出した症例は、治療として一時的な抗菌剤の投与対象になるであろう。また乳児の中期以降で下痢を呈してブドウ球菌や多量の大腸菌を検出した症例は、細菌性腸炎と診断してもよいと思われるが、症状が軽い場合は必ずしも抗菌剤投与の対象にはならないと考えられる。
 新生児期から乳児早期の症例でのブドウ球菌の検出は、腸炎としての症状が強いわけではなくMSSAやMRSAの保菌状態と考えるべきである。この時期に通常の大腸菌が多く検出された場合も同様と考えられる。粘液便ではあるが、下痢というよりはむしろ排便回数が少ない症例がほとんどであった。このような保菌状態は、乳児が適当な腸内細菌叢を形成できていない状態と考えられる。しかし乳児は不機嫌などの症状があり、無視できない症状が出現している困った状態であり、病気の状態にあると理解すべきであるが抗菌薬の投与対象ではないと考えられる。
 腸内細菌叢は、一般に母から子へと受け継がれるものと考えられている。 ところが必ずしも良好な腸内細菌叢を形成できるとは限らない。特に、母親と別れて育児される入院加療中の新生児や乳児では正常な腸内細菌叢を形成できないことから、特別な問題がなくとも積極的に乳酸菌製剤を投与することが行われている(順天堂大学:山城雄一郎、大阪府立母子保健総合医療センター新生児科:北島博之)。このような目的で使用される乳酸菌は、プロバイオティクスと理解される。乳酸菌とビフィズス菌について研究が進んでいて、菌が産生する乳酸などが腸内環境を酸性に保つことで有害細菌の増殖しにくい環境が形成されると説明されている。そこで抗菌薬の投与対象とは言い難い、乳児期早期にブドウ球菌や多量の大腸菌が検出された症例や乳児期中期以降に消化器症状は軽いがブドウ球菌や多量の大腸菌が検出された症例には、積極的にプロバイオティクスとしての乳酸菌製剤の使用が考慮されて良いと思われる。
 平成19年度以降ブドウ球菌や通常の大腸菌以外に、以前は考えられなかった病原性大腸菌が検出される症例が急に増えた。保護者から感染した可能性も大きいが、このような細菌の感染は離乳食の問題も見逃せない。最近は離乳食を冷凍保存することが多くなった。冷凍保存は、平成18年度は28人中9人、平成19年度は28例中4人、平成20年度は32人中4人が実施していた。ほんの少し前まで離乳食の作り置きは考えられなかった。最近は離乳食を、一度に多く作って冷凍保存し、次の離乳食に利用しようとの指導が育児雑誌や料理雑誌、TVなどのメディアではごく普通に行われている。また一部で保健師からも同様の指導がみられた。保護者に確認すると、「保存食を作るには、どのような手順で行うか?」、「保存食はどのように調理するか?」についての指導が十分になされているか疑問であった。このような状況では、離乳食から重大な感染症が引き起こされる可能性がますます大きくなると考えられる。乳児健診などの機会に充分な食への指導がなされることを願っている。

結論:平成18年4月から平成21年3月までの3年間の1歳未満の乳児の便培養結果の検討から、ブドウ球菌や通常の大腸菌(2+〜3+)以外に、最近では乳児にも病原性大腸菌のような特別な病原性を持つ細菌が多く検出されるようになっていることが判明した。また必ずしも下痢を主訴として受診するわけではないため、乳児では粘液便を確認したら、積極的に便培養を実施することが必要であると考えられた。


第494回

新居浜小児科医会夏季懇親会
   (平成21年7月8日、於 常富寿司)

平成21年7月8日(水)、新居浜小児科医会夏季懇親会が「常富寿司」で開かれました。
出席者は9名でした。(敬称略)
(前列左から)真鍋豊彦、渡辺敬信、楠目和代、占部智子
(後列左から)矢野喜昭、山本浩一、加藤文徳、松浦章雄、塩田康夫

第493回

日時
平成21年6月10日(水)
症例呈示 「学童期脳出血の1例」 県立新居浜病院小児科 井上直三
話題提供 「携帯型睡眠時無呼吸検査の紹介」 ふじえだファミリークリニック 藤枝俊之

1.症例呈示

 学童期脳出血の一例

    県立新居浜病院小児科 井上直三

症例は6歳女児。頸部痛、嘔吐を主訴に前医受診し、頭部CTで脳出血を認められ当科を紹介受診した。MRAで脳動静脈奇形(AVM)と診断し、保存的に治療し状態は安定した。γナイフによる治療を選択し、術前検査としてCT-angiographyを施行したが、血管造影と同等の所見を得られ非常に有用であった。初回出血から11日目に誘引なく再出血を認め、脳室ドレナージを実施。再々出血の可能性が高いため、全身状態が安定した後に摘出術を行った。現在軽度の麻痺はあるものの日常生活に支障はない。近年、AVMの治療としてγナイフを選択することが多いが、出血を認めた症例で、特に小児では再出血率が1020%と高値であるため、治療法の選択には慎重な検討が必要である。

2.話題提供

 小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群と携帯型睡眠時無呼吸検査について
 
     ふじえだファミリークリニック 藤枝俊之


 小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群について概説し、携帯型睡眠時無呼吸検査器具を紹介した。
 
小児の閉塞性睡眠時無呼吸は成人と異なる病態生理が存在する。覚醒反応が起こりづらく見過ごされる恐れがあり、軽度であっても臨床症状が出現するため注意を必要とし、成人とは異なる診断基準も存在する。
 異常行動・認知障害を始めとする合併症の問題もあり、小児科医は今まで以上に関心を示す必要がある。
終夜ポリグラフ検査は、睡眠時無呼吸症候群の診断および重症度評価に有効であり標準検査とされている。
 しかしながら、小児は成人ほど解明が進んでおらず、小児の実施施設も極めて限られている。様々なスクリーニング法も存在するが、それぞれ長所短所がある。
 当院では携帯型睡眠時無呼吸検査を行っているが、実施が容易である反面、小児においては統一された対象者の選定基準、判定基準がなく試行錯誤の段階である。
本疾患の潜在小児患者は多いと考えられる。今後、本疾患の理解と解明が進み、治療方針も含め確立した対応方法が整備されることを望む。


第492回

日時
平成21年5月13日(水)
症例提示 「経管栄養の乳幼児に対する経口摂取の試み」 住友別子病院
小児科
矢野喜昭
話題提供 「小児期に発症した慢性疾患のキャリーオーバーの問題点について
 その1.長期間経過観察中のバセドウ病患者を通して」
高橋こどもクリニック 高橋 貢

1.症例呈示

 経管栄養の乳幼児に対する経口摂取の試み

   住友別子病院小児科 矢野喜昭

小児の摂食嚥下障害の原因は多岐にわたり、必要カロリー量の安定した摂取と誤嚥を防止する目的で経管栄養を行う症例がある。乳幼児期は発達段階であり、その中には経口摂取移行可能な症例も存在するが、乳幼児経管栄養依存症のように必要以上に経管栄養が行われている症例も多く、摂食嚥下障害に対し継続したアプローチを行うことが重要である。今回、愛媛県立子ども療育センターにおいて、経管栄養の乳幼児に対し継続したアプローチを行うことで良好な経過を得た症例を経験したので報告した。
 対象症例は9例、平均年齢は1.2歳(3か月〜210月)であった。摂食機能発達段階では、経口摂取準備期7名、捕食機能獲得期1名、押しつぶし機能獲得期1名であった。ビデオ透視嚥下造影検査を施行したのは6例であった。1回の経口摂取量が75%以上を摂取可能となるまでの平均期間は2年間(3か月〜33か月)であった。今回、外来、入院、A型通園のそれぞれの環境下でのアプローチについて検討した。個々の人数は、外来のみ3名、外来と入院4名、外来とA型通園2名であった。主な指導内容としては、経口摂取の経験7名、食形態の調整2名であった。結果として、外来のみでは経口摂取に移行困難な症例に対して、その他アプローチを試みていた。経口摂取の経験不足による拒否が強い症例、均一な食形態を必要とする症例では、入院での統一した関わりによる食環境調整や患児支援が有効であった。均一な食形態の細やかな調整が必要な重症心身障害児では、A型通園で提供される、在宅では調整困難な食形態による経口摂取の経験が有効であった。乳幼児期に経管栄養が必要な症例に対しては、摂食機能発達段階を評価し、その結果に基づいて継続した治療を行うことが重要である。その中で乳幼児経管栄養依存症へ移行を防ぐためには、発達段階である乳幼児期に統一した患児へのアプローチを行うことが必要であり、嚥下機能に問題が無く経口摂取の拒否が強い症例では入院治療が有効である。重症心身障害児に対しては、在宅のみでは細やかな食形態の調整など家族の負担が大きく、また、障害の重度化により栄養管理以外のケアによる負担が大きい。そのためA型通園のような療育機関での関わりにより経口摂取の可能性が広がり、家族支援に繋がると考える。経管栄養を必要とする乳幼児に対する経口摂取の試みとして、摂食嚥下機能の評価と原疾患を考慮したアプローチ方法を選択することにより、必要以上の経管栄養から離脱し、経口摂取による食事を楽しむ事ができQOLの向上へ繋がると考える。

2.話題提供

 小児期に発症した慢性疾患のキャリーオーバーの問題点について
   その1 長期経過観察中のバセドウ病患者を通して       

   
高橋こどもクリニック  高橋 貢

 症例は現在28歳の女性。14歳時全身倦怠を主訴に入院し、甲状腺種、甲状腺機能亢進、TRAb陽性などからバセドウ病として治療され寛解後治療終了していた。H19123 日男児を出産した。母子ともに異常はなかった。H19326日の検査でF-T37.1FT42.4TSH0.03以下と甲状腺機能亢進を認めたが、本人の自覚症状はなくTRAbTSAbともに陰性であったため、無痛性甲状腺炎と診断し無治療で経過観察した。約2ヶ月機能亢進状態が続きその後約半年間の機能低下を経て機能正常となった。H2116日に第2子を出産した。5月現在、母子ともに健康であるが、F-T36.8FT42.2TSH0.03以下と第1子出産後と同様な状態となっている。
 慢性疾患を持つ小児患者は長期に観察する必要があり、女性では結婚、妊娠、出産などを経験することになる。今回も産科を紹介する際、内科転科を勧めたが、現状のまま小児科での観察を希望された。キャリーオーバー時の小児科医側の問題点としては、患者家族とのつながりが強い、不慣れな合併症の診察、内科医との連携の悪さ、現状維持の傾向などが指摘されているが、私の場合もまさにその通りであった。欧米では慢性疾患をもつ患者に対して、家族も含め早期から介入し、患者の意志を尊重しながら、1-2年は小児科医と内科医が共診しながら内科に移していくプログラムが提唱されている。慢性疾患患者の小児から成人へのキャリーオーバーをうまく援助する制度を確立ことが重要と思われた。


第491回

日時
平成21年4月8日(水)
症例提示 「異なる内科的治療を選択したEbstein奇形の2例」 県立新居浜病院
小児科
森谷友造
話題提供 「『VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろう』の会の紹介」 川上こどもクリニック 川上郁夫
その他 「新居浜小児科医会500回記念会について」

1.症例呈示

 異なる内科的治療を選択したEbstein奇形の2

  県立新居浜病院小児科 森谷友造

【背景・目的】Ebstein奇形は極めて多様な解剖学的形態を持つ疾患であり、その臨床像も無症状で経過するものから胎児期に心不全・胎児水腫で死亡する最重症例まで幅広い。そのため、治療方針も確立されておらず、治療の選択に難渋する場合が多い。
 今回我々は異なる内科的治療が奏功したEbstein奇形の2例について検討した。

【症例1生直後から高度のチアノーゼのため、挿管し人工呼吸器管理を必要とした。肺血管抵抗低下目的で酸素投与とdobtaminemilrinoneの投与を行ったが、SpO2の改善は認められず、NO吸入を開始した。NO吸入開始後は速やかにSpO2は改善し血行動態は安定した。

【症例2生直後から心雑音、チアノーゼが認められ当院に搬送された。酸素投与を開始したが改善せず、肺血流を確保するためにPGE1の投与を開始した。開始後SpO2の改善を認めたが高肺血流となり、順行性血流が障害されるため日齢1に中止しPDAを閉鎖する方針とした。milrinoneの投与を開始し、徐々に血行動態は安定した。

【考察・結論】Ebstein奇形の急性期の治療目標は肺血流の確保と肺血管抵抗の低下、三尖弁閉鎖不全のコントロールである。今回肺循環を安定させるためNO吸入とPGE1の投与という方法を選択した。NO吸入は肺血管抵抗を下げることで肺血流を確保するが、高度の肺動脈狭窄が合併する場合は効果が乏しい。PGE1は確実に肺血流を確保するが、動脈管開存による高肺血流性の心不全や肺高血圧を引き起こす。Ebstein奇形の内科的治療は、三尖弁や肺動脈の形状を考慮しPDA依存性かどうかを判定しながら治療方針を決定する必要がある。

2.話題提供

 四国中央市の小児救急体制について

  川上こどもクリニック  川上郁夫

臨床研修医制度などで地域医療の崩壊が進み社会的問題になっているが、四国中央市も昨年の4月から救急医療対策室(本年度から地域医療対策室)を新設したり、6月に救急医療シンポジウムを開催したり、幼稚園の育児講座、ガイドブックの作製などで市民に啓蒙をしている。また夜間急患医療センターの移転などの対策をしている。
 四国中央市の問題点として、数年前から市内の産婦人科がお産をやめ、現在出産可能な病院は四国中央病院だけになり、昨年の7月から県立三島病院小児科が休診になり、四国中央病院小児科の負担が増えていることがある。また4つある輪番2次救急病院のうち現在1つ(四国中央病院)しか常勤小児科専門医がいないので、他の病院の当番日には三豊総合病院や香川小児病院などに行っている状態であるが、4月からは三豊総合病院の常勤医が4人から3人になるので、これからは新居浜の病院との連携も重要になってくると思われる。


第490回

新居浜小児科医会・後藤振一郎先生送別会
   (平成21年3月11日、於寿司善)

平成21年3月11日(水)、後藤振一郎先生送別会が「寿司善」で開かれました。
出席者は12名でした。(敬称略)
(前列左から)真鍋豊彦、塩田康夫、後藤振一郎、渡辺敬信、加藤文徳
(中列)占部智子、
(後列左から)星加 晃、山本浩一、松浦章雄、森谷京子、森谷友造、楠目和代

第489回

日時
平成21年2月10日(火)
症例提示 「偽性副甲状腺機能低下症の双胎例」 住友別子病院
小児科
加藤文徳
話題提供 「川崎病冠動脈病変の侵襲的治療法について」 しおだこどもクリニック 塩田康夫

1.症例呈示
   
   偽性副甲状腺機能低下症の双胎例

     住友別子病院小児科 加藤文徳

偽性副甲状腺機能低下症(PHP)は、副甲状腺ホルモン(PTH)受容機構の障害によってPTH作用不全をきたし、低Ca、高P、高PTH血症を生じる疾患である。身体兆候、PTH負荷試験に対する反応などからTa、Tb、Tc、U型に分類される。T型の病因はPTH受容機構に介在するGsα蛋白の質的、量的機能低下であり遺伝性疾患である。基本的には先天性疾患であるが低Ca血症は通常新生児乳児期にはみられず、1歳頃から高PTH血症が先行し3〜8歳頃に低Ca血症が認められる。Ta型は円形顔貌、低身長、肥満、短指症などの臨床兆候が認められる。これはAlbright’s hereditary osteodystrophy(AHO)として早期診断の手がかりとして有用である。治療は活性型ビタミンDの投与である。また、ホルモン受容機構にGsα蛋白を介在するTSH、ゴナドトロピン、GHRHなどのホルモンに対する抵抗性を伴うことがある。
 今回偽性副甲状腺機能低下症の双胎例を経験した。乳児期から軽度甲状腺機能低下症として治療中のところAHOの臨床兆候を認め、4歳時に本疾患Ta型と診断し活性型ビタミンDの治療を開始した。現在5歳5ヶ月であるが今後合併する可能性のある性腺機能不全、成長ホルモン分泌不全に対する注意が必要と考えている。

2.話題提供
   
   川崎病冠動脈病変の侵襲的治療法について

    しおだこどもクリニック   塩田康夫 

  川崎病が最初に報告されて40年が経過し、患児数は20万を超えていると言われている。その原因は依然として不明であるが、内科的治療法としてのγーグロブリン療法により冠動脈後遺症の頻度は減少してきている。冠動脈病変に対する侵襲的治療法としてACバイパス手術が始まってから30年が経過しており、その間各種経皮的カテーテルインターベンション(PCI)も飛躍的に進歩している。今回演者の古い自験例を提示し、最近の侵襲的治療法の成績を報告した。

  症例1.1979年2歳で発症。その2ヶ月後心筋梗塞発作をきたす。5歳時の負荷心電図で心筋虚血変化を認め、2回目の造影ではLAD流入部に強い狭窄が見られたため大伏在静脈を用いたバイパス手術がなされた。
  症例2.1984年4歳で発症。5歳時に2回梗塞発作をおこし、初回造影時に見られたLAD流出部の狭窄が閉塞しており、内胸動脈を用いたバイパス術がなされた。

  1993年初めて川崎病児にロータブレーター治療を行った小倉記念病院の成績では、2002年までの10年間に2633病変を開大し、臨床的成功率100%、1年以内の再狭窄率は27%だったが、再治療により以後再々狭窄例はない。川崎病冠動脈病変に対するカテーテル治療はロータブレーターを用いる事により安全且つ低侵襲に施行可能で、その効果は長期的に維持されることが明らかになったという。一方バイパス手術については奈良医大、国立循環器病センターは1983年から2005年の間に113例のバイパス手術(95例に内胸動脈使用)を行い、特に後期10年のグラフト開存率は12歳以下94%、12歳以上91%と極めて良好であり、終生に亘る耐久性を有する術式であると報告している。
   平成20年の川崎病研究会では「冠血行再建術」というディベイトがなされたが、カテーテル治療とバイパス手術のどちらの術式が第一選択かという比較をするのではなく、それぞれの症例ごとにそれぞれの術式の利点を生かした治療法を選択すべき問題であり、カテーテル治療は「中継ぎのエース」でバイパス手術は「抑えのエース」だという比喩は適切だと感じた。


第488回

日時
平成21年1月14日(水)
症例提示 「胃食道逆流症が誘引と思われる気管支喘息の1例」 愛媛県立新居浜病院
小児科
楠目和代
話題提供 「離乳食の開始」 大坪小児科 大坪裕美

1.症例呈示

 胃食道逆流症が誘引と思われる気管支喘息の1
   愛媛県立新居浜病院 小児科  楠目和代

 2歳男児。乳児期から気管支喘息として治療をうけており、クループや中耳炎を繰り返していた。母親は、嘔吐やゲップが多いと感じていた。H206月と7月に、強い呼吸困難を伴う喘息発作にて入院した。ブデソニドけん濁液吸入とテオフィリン製剤投与にて、呼吸状態は安定した。7月中旬から夜間に上腹部痛と食欲不振が認められた。24時間下部食道PHモニターを施行した結果Fraction timePH<4)が11.8%であり、胃食道逆流症と診断した。ファモチジン・メサプリドにて治療を開始したが、ゲップなどの逆流症状は改善されず、11月の夜間、突然の咳と呼吸困難にて再び入院した。入院後症状は速やかに消失したが、運動後や過食後の突然の嘔吐が認められた。上部消化管造影を行い、誤嚥の所見はなかったが造影中に食道への逆流所見が認められた。食事の頻回、少量摂取を心がけるとともに、テオフィリン製剤を中止し、オメプラゾールを追加した。外科的治療も視野に入れて、経過観察中である。胃食道逆流と気管支喘息・中耳炎の関連について文献的に考察した。

2.話題提供

 離乳食の開始 
   大坪小児科 大坪裕美

厚生労働省の平成17年度乳幼児栄養調査によると、離乳食の開始時期は10年前に比べ「4ヶ月」と回答したものが25%から10.9%に減少する一方、「6ヶ月」が18.4%から28.6%に増加するなど、「5ヶ月」以降が昭和60年には53.0%だったが、平成7年には67.3%、平成17年には84.4%に増加し、開始時期は遅くなる傾向が見られた。同様に完了時期についても10年前に比べ「12ヶ月」が減少し、「1315ヶ月」、「1618ヶ月」が増加するなど遅くなる傾向がみられた。また離乳開始の目安については「月齢」が75.8%と最も多く、次いで「食べ物をほしがるようになった」が47.5%、「体重などの発育状態」が16.8%の順だった。ベビーフードの使用は、「使用したことあり」が昭和6048.2%、平成766.0%、平成1775.8%と増加傾向にある。

(文責 加藤文徳)


過去の記録へ

22年 20年 19年 18年 17年 16年 15年 14年 13年
12年 11年 10年 9年 8年 7年 6年 5年 総合記録

マナベ小児科ミニ情報へ

マナベ小児科診療掲示板へ

子どもの病気の色々へ

マナベ小児科ホームページに戻る