定例新居浜小児科医会(平成5年3月以降)

新居浜小児科医会誌

第400回記念

平成13年12月25日発行


平成22年(499回→)

第509回

平成22年新居浜小児科医会忘年会
 (平成22年12月8日、於寿司善)

平成22年12月8日(水)、新居浜小児科医会忘年会が「寿司善」で開かれました。
出席者は13名でした。(敬称略)
(前列左から)真鍋豊彦、星加 晃、大坪裕美、小泉宗光、松浦章雄
(中列左から)塩田康夫、山本浩一、海老原知博、楠目和代
(後列左から)越智史博、矢野喜昭、三木崇弘、加藤文徳

第508回

日時
平成22年11月10日(水)
症例呈示 「急性上気道閉塞をきたしたEBウィルス感染症の一例」 県立新居浜病院小児科 三木崇弘
話題提供 「川崎病は、いま」 川上こどもクリニック 川上郁夫

1.症例呈示

急性上気道閉塞を来たしたEBV感染症の一例
   愛媛県立新居浜病院 小児科 三木 崇弘

症例6歳男児。
 3歳頃から感冒時に頸部リンパ節・扁桃の腫脹と軽快を繰り返していた。
 平成21年6月17日、咳漱、発熱、頸部リンパ節腫脹を主訴に当科を紹介受診した。頸部CTで多発性の頸部リンパ節腫大を認め、CRP1.66mg/dl、LDH 512 IU/Lであった。マイコプラズマ迅速検査陽性のためAZMを処方された。
 その後も発熱持続し鼻閉が増強したため6月19日に再診し経過観察のため入院した。
 19日夜間に睡眠時の閉塞性無呼吸が頻発し呼吸困難に陥ったため、経鼻エアウェイを挿入した。20日の頸部CTでは、経鼻エアウェイの部分を残し上気道の完全閉塞を認めた。ハイドロコルチゾン初回10mg/kg、5mg/kg×3回/日により急激に腫脹は消退し呼吸困難も改善した。
 悪性腫瘍の鑑別のためGaシンチを施行したが、明らかな異常は認められなかった。23日に経鼻エアウェイを抜去し、ハイドロコルチゾンも中止した。
 以後も症状の増悪はなく経過し26日の頸部CTでは著明な改善を認めたため退院した。リンパ節腫脹についてはVCA-IgG:80倍、VCA-IgM:40倍、EBNA抗体:陰性にて、EBV感染症と診断した。8月24日にアデノイド・両側口蓋扁桃切除術を受け、以後の経過は良好である。

結語 小児EBV感染症では急激な上気道閉塞をきたす恐れがあり、慎重な観察が必要である。

2.話題提供

川崎病は、いま
      川上こどもクリニック 川上 郁夫

昭和36年1月に川崎先生が川崎病の最初の患者さんに遭ってもうすぐ50年になり、川崎先生も85歳になられました。また第1回川崎病全国調査が行われてから40年で、過去20回にわたる全国調査で約25万人の患者が報告されているが、病因はいまだ解明されず不明のままです。日本川崎病学会(研究会)も今年で30回になり、10月10,11日に京都で開催された。川崎病の最近の知見について紹介する。

疫学
 過去20回にわたる全国調査で明らかになった川崎病の疫学像より、川崎病の発症に複数の種類の感染が個別に関与していると考えると矛盾なく説明できる。
病因
 川崎病の病因については発見直後から様々な仮説が提唱されたが、その何れもが確定には至っていない。最近の研究では、遺伝学的要因では19染色体長腕上の領域にあるITPKC遺伝子のSNPと川崎病との関連や、次世代シークエンサーを使っての病原体候補のカタログの作製などがある。またTSST-1やSPECなどの細菌性スーパー抗原が病因として提唱されているが、実証的な検討が望まれる。
病態
 川崎病は全身の血管炎であり、IL-1、IL-6、TNF-α、INF-γなどの炎症性サイトカインの産生が亢進し、高サイトカイン血症の病態にある。臨床症状の軽快とともに、これらのサイトカインは血中から速やかに消失するが、IVIG療法などの治療にも拘わらず発熱が持続したり、冠動脈瘤を合併する症例では、これらのサイトカインの高値が持続する。
難治性川崎病の治療戦略
 現在川崎病治療の第1選択治療である大量免疫グロブリン療法(IVIG)も、作用機序の全体像は未だ不明な点が多く、IVIG投与で解熱しないIVIG不応例が15〜20%程度存在する。
1.IVIG反応性の予測マーカー
  群馬リスクスコアーやIVIG終了後のIgGの上昇率(IRG), 川崎病治療前のサイトカイン、接着因子であるsICAM-1、血管局所で産生されるペントラキシン3(PTX3)、体内抗酸化の指標である血中biological antioxidant potential(BAP)などがマーカーとして有用である。
2.IVIG不応に対する治療プロトコール
 急性期治療はグロブリンを充分に投与し、それでも反応不良の場合さらに大量グロブリンを追加投与する治療(グロブリン短期大量追加治療)やメチルプレドニンパルス(IVMP)併用IVIG(IVIG+IVIG)、インフリキシマブ(IFX)、シクロスポリンA(CyA)の投与、血漿交換療法(PE)などが行われている。


第507回

日時
平成22年10月13日(水)
症例呈示 「新生児重症低血糖の一例」 県立新居浜病院小児科 井上直三
話題提供 「狭心症の一例」 しおだこどもクリニック 塩田康夫

1.症例呈示

新生児重症低血糖の一例
     愛媛県立新居浜病院小児科 井上 直三
症例は日齢2。無呼吸、けいれんのため当科に搬送され、糖速度10mg/kg/min以上でもコントロール困難な難治性低血糖を認めた。低血糖時の検査で、インスリン:3.3μI/mL、遊離脂肪酸:0.15mmol/L、βヒドロキシ酪酸:0.013mmol/Lであり、高インスリン血性低血糖と診断した。ジアゾキシドの内服により 血糖コントロール可能となった。経過中、半身肥大、巨舌、臍ヘルニアを認め、臨床的にBeckwith Wiedemann症候群と診断した

2.話題提供

狭心症の一例  
  しおだこどもクリニック  塩田康夫
症例は昭和19年7月生まれ男子。
家族歴
、父親が心筋梗塞にて54歳で死亡。
既往歴、36歳の頃高血圧に気づく。48歳頃の健診で高脂血症を指摘される。56歳頃から降圧剤内服を始めた。禁煙して20年以上経っている。
現病歴、 平成21年6月中旬。朝、左後背部に圧迫されるような違和感が数日続いた。やや冷や汗あり。7月の健診で心筋虚血の可能性を指摘される。9月10日CT施行、左冠動脈閉塞の可能性を指摘され某病院を紹介される。10月8日冠動脈造影施行、右冠動脈セグメント1、50%。セグメント3、75%の狭窄、左冠動脈セグメント6、75%。セグメント7、99%。セグメント10、99%の狭窄あり。右左ともに2本のステントを留置される。平成22年6月の再造影では特に狭窄病変はなく良好な経過である。
 我が国の虚血性心疾患による死亡率は、先進工業国の中では少ない国の代表といわれており、現在も増加傾向はみられないが、今後上昇に転じる可能性はあると指摘されている。
 虚血性心疾患に対する治療として我が国ではPCI(経皮的冠動脈インターべンション)が年間15万件以上施行されており、冠動脈バイパス手術の10倍程と推定される。カテーテル治療の問題点としての再狭窄も、薬剤溶出性ステントの使用により劇的に改善されている。
 一方小児の虚血性心疾患として、多くはないが川崎病後遺症としての冠動脈病変が重大である。第34回近畿川崎病研究会で三角等は、1998年以降の59症例に対しロータブレ-ターを中心としたPCI治療を行い、成功率は100%、再狭窄率7.5%、血行再建術施行率6.9%だったと述べ、川崎病高度石灰化病変に対してはロータブレーターによる治療が最も適しており、バイパス術後にグラフトが閉塞してロータブレーターを施行した例などからも、少なくとも10歳代ではバイパス術は避けたほうが良いと述べた。

第506回

日時
平成22年9月8日(水)
症例呈示 「食物依存性運動誘発アナフィラキシーの1例」 住友別子病院小児科 小泉宗光
話題提供 「第34回日本皮膚科学会に参加して」 大坪小児科 大坪裕美

1.症例呈示

  食物依存性運動誘発アナフィラキシーの一例

         住友別子病院小児科 小泉 宗光

食物依存性運動誘発アナフィラキシー (food-dependent exercise-induced anaphylaxis)は、食物摂取後の運動負荷によってアナフィラキシー症状が誘発される比較的まれな疾患である。食物摂取単独、あるいは運動負荷単独では症状の発現は認められない。負荷試験が原因食物の同定に有用であった食物依存性運動誘発アナフィラキシーの一例を経験したので報告する。
 症例は12歳の女児。主訴は膨疹、頭痛、腹痛であった。平成21224日午後5時ごろ、バスケットの練習中に蕁麻疹が出現し救急外来を受診した。オロパタジン塩酸塩の内服、ハイドロコルチゾンの点滴を行い症状は改善した。後日、カニとアスピリンの摂取、運動の負荷試験で紅斑と膨疹の出現を認め、カニを原因食物とする食物依存性運動誘発アナフィラキシーと診断した。負荷試験によって診断を確定することで食物単独、運動単独の除去を解除することが可能であった。

2.話題提供

  第34回日本小児皮膚科学会に参加して
       大坪小児科 大坪 裕美

小児の皮膚は構造的にも機能的にも未発達であり、生理的に皮膚が乾燥しやすく、皮膚バリア機能が十分でないことから湿疹などの皮膚病変が生じやすい。このような小児に対する外用療法は、乾燥に対する保湿剤を用いたスキンケアが中心となる。保湿剤を用いることにより皮膚の乾燥を改善し、外界からの原因物質の皮膚への侵入を防ぐことは、アトピー性皮膚炎の治療において重要である。
 一方、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症予防のために授乳中の母親の食物制限は根拠が無く、ガイドラインでも推奨されていない。食べて湿疹が悪化した、という患者の経験談と特異的IgE抗体の結果だけで食物アレルギーと決め付けることはできない。
 以上のような趣意、発表が印象に残った学会であった。


第505回

平成22年新居浜小児科医会夏季懇親会
 (平成22年7月14日、於旬花酒灯 てんふじ)

平成22年7月14日(水)、新居浜小児科医会夏季懇親会が「旬花酒灯てんふじ」で開かれました。
出席者は7名でした。(敬称略)
(前列左から)三木崇弘、海老原知博、小泉宗光、真鍋豊彦
(後列左から)山本浩一、加藤文徳、塩田康夫

第504回

日時
平成22年6月9日(水)
症例呈示 「ロタウィルスワクチン導入に向けて」 県立新居浜病院小児科 三木崇弘
話題提供 「抗インフルエンザ薬の投与日数について」 マナベ小児科 真鍋豊彦
その他 県小児科医会第56回教育集会について

1.症例呈示

 ロタウィルスワクチン導入に向けて
       
県立新居浜病院 三木 崇弘

【ロタウィルス感染症におけるポイント】
 他の感染性胃腸炎と違い、経口補液だけでは軽快せず、入院加療が必要である。普通の感染性腸炎はきれいな水が手に入らない発展途上国に多いが、ロタウィルスは衛生状態の改善や上下水道の整備のみによって、感染伝播が大きく減少することがない。
【日本における予防の意義】
 日本における予防の意義は、ロタウィルス感染症による疾病負担を減らすことである。疾病負担とは罹患率、症例分布、入院の多さによって定義される。またロタウィルス感染症による合併症(腸重責、肝炎、胆道閉鎖症、脳炎・脳症、T型糖尿病、壊死性腸炎)を減らす目的もある。特に腸重積、脳症は日本でも報告があり、ワクチン投与によってこれらの合併症が予防できるのであれば、意義深いといえる。
【ロタウィルスワクチンの現状】
南北アメリカ、EUなど世界100カ国以上で認可され、効果が出ている。アメリカでは導入後、ロタウィルス流行期の罹患率が50%以上低下した。未認可の国は旧ソ連、中国、インド、日本など一部の国である。現在まで知られているワクチンの種類はいずれも経口弱毒生ワクチンであり、RotaShieldRotaTeqRotarix3種類がある。このうちRotaTeqRotarix2種は日本でも治験が進められており、数年以内の認可が予想される。
副作用としては、一般的な予防接種と同じ急性期症状(発熱、下痢、嘔吐など)のみにとどまり、腸重積などは認められない。また、ワクチン接種者の便からウイルス排泄はあるが、感染源にはならないと報告されている。
【結語】日本でも早期にロタウィルスワクチンを導入すべきである。

2.話題提供

 「抗インフルエンザウィルス剤の投与日数について」
       マナベ小児科 真鍋豊彦


はじめに
 抗インフルエンザウィルス剤(ノイラミダーゼ阻害薬)の季節性インフルエンザ、特にA型インフルエンザに対する有効性については全く異論ないが、5日間一律投与については14年1月に投与し始めたときから疑問に思っていた。その理由は、水痘に対する抗ウィルス剤(ゾビラックス)の使い方から得た経験である。水痘の治療として、当初は添付文書どおりに5日間投与していたが、現在では1日分投与、翌日再診のうえ新しい発疹が出ていればもう1日分、計2日間投与で大多数の症例が軽快している。
 水痘とインフルエンザはウィルスの性質、潜伏期、感染力、臨床像など全く異なり、また、季節性インフルエンザはその時々に抗原変異があり、抗インフルエンザウィルス剤の効果についても報告者によって様々である。
 抗インフルエンザウィルス剤5日間投与で発熱期間は1〜1.5日短縮しウィルスは投与後もかなり残存していると言われているが、耐性ウィルス出現と抗インフルエンザウィルス剤投与(日数)については、現在のところエビデンスはない。
 このたび、パンデミック(H1N1)2009に遭遇し、抗インフルエンザウィルス剤投与日数(2日)と家族内伝播リスクについて調査した。
 調査期間は平成21年7月〜12月で、調査対象選定基準は、1.インフルエンザ迅速検査A型陽性者(自院で実施・確定者)、2.臨床診断者は除く、3.抗インフルエンザウィルス剤投与者(発症48時間以内)、とした。対象患者数は149人(調査期間内患者数:308人、流行期間中患者数:370人)で、年齢構成は6歳未満43人、6歳以上11歳未満75人、11歳以上31人であった。調査方法は平成21年12月24日から29日までの間にインフルエンザ患者記録簿から対象患者を選び、電話により家族内感染(発症)者数及び発症月日を聴き取り調査した。
 結果は家族内感染(発症)率30.2%(=45/149)で、家族内感染(発症)のうち、91.1%(=41/45)は発端患者発症から0〜2日内の発症であった。多発家族(発端患者を除く2人以上発症)は、24.4%(11/45)であった。
 抗インフルエンザウィルス剤の種類と投与日数は、タミフル141人、リゼンザ8人で、そのうち、抗インフルエンザウィルス剤2日分投与者の合計は96.6%(144/149)であった。全員合併症なく経過し、入院加療した者はいなかった。
考察
 パンデミック(H1N1)2009(=新型インフルエンザ)患者が新居浜地区で初めて報告されたのは、平成21年7月27日で、新居浜市のM保育園児であった。その後暫くは散発状態が続いたあと、新居浜祭りの頃から急激に増加、11月下旬をピークに次第に沈静化、22年2月初めに終息した。
 インフルエンザに対する抗インフルエンザウィルス剤の投与に関しては、投与対象、薬剤の選択、投与のタイミングなど様々な見解がある。(投与量と)投与日数に関しては、添付文書には1日2回、5日間経口投与となっているが、その根拠は明示されていない。
 日本臨床内科医会が2003/2004年シーズンに、抗インフルエンザウィルス剤(タミフル)の有効性に関し検討したが、A/H3N2では、タミフル投与開始4〜6日後のウィルス残存率(ウィルス分離)は12.5%であった。(感染症学雑誌79巻8号598−599)
 一方、季節性インフルエンザに関し、抗インフルエンザウィルス剤治療によって、排出されるウィルス価は減弱するが、ウィルス排出期間は有意に短くなるとは言い切れず、これにより二次発症者が減少するという証拠はない。(日本医事新報NO4483:質疑応答から)
 2009/2010年シーズンは新型インフルエンザ単独の流行という珍しいシーズンであった。流行は11月下旬から沈静化し始めたが、例年であれば季節性インフルエンザが出始める時期である。年が明けると季節性インフルエンザ混在の可能性が出てくると考え、調査対象期間を年末までとした。結果的には流行が終息したのは2月初めで、その間、季節性インフルエンザウィルス検出の報告はなかった。
 家族内感染(発症)率が約30%、そのうち9割以上が発端患者から0〜2日内の発症であったことから、発端患者発症時点で、同時感染または家族内感染が成立していたと考えざるを得ない。
 抗インフルエンザウィルス剤投与日数は、2日分が96.6%であったが、1〜2日内に臨床症状(解熱)は改善した。3日、4日分投与者は149人中5人であったが、そのうち2人は、追加投与であった。抗インフルエンザウィルス剤(主にタミフル)の2日分投与は、薬剤入荷不足のためではなく、2日分投与で解熱など全身状況が改善し、以後の追加投与が必要でなかっためである。
 最近、N Engl J Med;20093612619-27(December 31 2009)に、米国における新型インフルエンザの家庭内伝播リスクに関する論文が掲載された。抗インフルエンザウィルス剤が投与されたかどうかの記載はない(入院数、ICU収容者数などの記載はある)が、216世帯(家庭内での接触者の総数は600人)のうち、患者と接触した家族などが誰も急性呼吸器疾患を発症しなかった世帯が156(72%)、すなわち家庭内感染(発症)率は28%であった。米国の家庭内伝播率(抗インフルエンザウィルス剤投与なし?)と本家族内伝播率(抗インフルエンザウィルス剤投与2日分)は、奇しくも同じ30%前後であった。
終わりに
 新型インフルエンザ患者に対し、発症48時間以内に、抗インフルエンザウィルス剤2日(〜3日)分を投与したが、発端患者の臨床症状改善と家族内伝播リスクの観点から、結果的に必要かつ十分であったと考える。

追加話題

○新型インフルエンザ:不顕性感染:約2割
 21年5月、茨木市の関西大倉中学・高校で新型インフルエンザ集団感染があった。「無症状」感染者2割、新型インフル、大阪府公衛研、初の確認、などと報道された。
○ワクチン働く仕組み
 22年3月31日、大阪大などは、インフルエンザワクチンが働く仕組みを突き止め、米科学誌(電子版)に発表した、と報道された。日本でワクチンに使われる「不活化スプリットワクチン」は、自然免疫の活性化がほとんど見られず、効果が低かった。感染歴がある人では免疫が再び活性化し、有効なことが人の血液の実験で判明した。
○子どもの接種用量見直しへ インフルエンザワクチン
 子どもに対する現行のインフルエンザワクチンの接種用量では効果が低いとの指摘を受け、世界保健機関推奨の、より多い用量のワクチンの効果と安全性を調べるために独立行政法人国立病院機構が実施した臨床試験の中間報告が28日まとまった。(後記:5月末に薬事法に基づく用量変更申請が提出された)
○ウイルス28タイプが国内侵入 新型インフル
 昨年春に発生が確認された新型インフルエンザのウイルスは、遺伝子レベルで少なくとも28のタイプが同年9月下旬までに国内に侵入していた、との解析結果を国立感染症研究所感染症情報センターがまとめた。


第503回

日時
平成22年5月12日(水)
症例呈示 「抗生物質の長期投与による二次的な低カルニチン血症性の低血糖」 県立新居浜病院小児科 海老原知博
話題提供 「選択的免疫グロブリン低下症の症例」 渡辺小児科 渡辺敬信

1.症例呈示

 抗生物質の長期投与による二次的な低カルニチン血症性低血糖症
   愛媛県立新居浜病院小児科  海老原 知博

抗生剤の長期内服による低カルニチン血症性の低血糖発作を起こした1例を経験したので報告する。
 カルニチンはミトコンドリア外の長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に輸送するのに必須の物質であり、カルニチンがないと長鎖脂肪酸はミトコンドリア内でβ酸化されにくくなり、エネルギー産生やケトン体産生が障害される。
 症例は1歳6ヵ月の女児で、繰り返す中耳炎に対して中止期間はあるものの継続的な抗生剤の内服で治療され、朝方に意識障害を認め救急受診した。
 入院時、バイタルサインに問題なく、意識レベルはJCS10と低下あるものの髄膜刺激症状はなく、神経学的に異常を認めず、湿性ラ音を聴取し呼吸器感染症が疑われた。
 入院時検査にて著明な低血糖と尿中ケトン体の増加を認めたが、糖液静注後は低血糖の改善に伴い意識レベルも改善した。後日、入院時検体にて遊離カルニチンの低下と血中ケトン体の上昇を認め、さらに尿中有機酸分析にてジカルボンサン尿があり、ケトン性低血糖症を示した。アンモニア、乳酸、ピルビン酸の上昇は認めなかった。
 低血糖症の原因は、ピボキシル基をもった抗生剤の内服によるカルニチンの低下と考え内服を中止した。しかし、遊離カルニチンの改善が乏しいためカルニチンの内服を開始したところ遊離カルニチンの改善を認めた。その後カルニチンの内服中止をするも低下は認めず血糖値も安定していた。

 低カルニチン血症の原因となる抗生剤内服患者の低血糖発作においては尿中ケトン陽性でも単にケトン性低血糖症と診断しないために、カルニチン血中濃度測定の必要性を感じた。

2.話題提供

 易感染性を呈した症例
    渡辺小児科医院  渡辺敬信

 50歳頃から主として肺炎、時に急性気管支炎、急性副鼻腔炎を繰り返し、その結果慢性副鼻腔炎、気管支拡張症を呈するようになり、免疫系の精査がなされず所謂、副鼻腔気管支症候群と診断され、14員環マクロライドの少量長期投与などが試みられるも効果なく、20余年の歳月が過ぎる。
 71歳時、血清蛋白電気泳動でM蛋白血症が見つかり、骨髄検査等で多発性骨髄腫が判明する。しかし、多発性骨髄腫による症候性骨髄腫(臓器障害、易感染性)が20年前から起こっていたとは考えられず、生体防御機能低下(何らかの免疫系異常、加齢による?)による易感染性と多発性骨髄腫の偶然の併発と考えるのが妥当と推測される症例を報告しました。
 今後、多発性骨髄腫の治療経過観察と同時に易感染性の究明を期待したい。


第502回

日時
平成22年4月14日(水)
症例呈示 「小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群の1例」 住友別子病院小児科 矢野喜昭
話題提供 「病児保育で観察したインフルエンザの経過」 村上記念病院 松浦 聡
その他 ・「生涯教育制度改定」の留意点について
・小児科医会会長辞任について

1.症例呈示

 小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群の1例
      住友別子病院小児科 矢野喜昭

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、2003年の新幹線運転士の居眠り事件以来、社会的な注目度が高まり、交通の安全性だけでなく動脈硬化や生活習慣病を来たす疾患等との関連が明らかになってきた。近年では、小児科領域において、学習面や行動面に対して悪影響を及ぼすことが報告されている。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の病態には、無呼吸に伴う低酸素性血症、覚醒反応が大きく関わっている。低酸素性血症に伴い、動脈硬化、高血圧、不整脈の症状を呈し、覚醒反応により睡眠の分断化を生じ、結果として昼間の眠気、行動異常に繋がるといわれている。小児では、体動や呼吸パターンの変動など自律神経の障害により生じる皮質下の覚醒により、行動異常等生じる可能性が指摘されており、たかが鼾と放置してはいけないと考える。
 今回経験した症例は、5歳の女児で、主訴は鼻閉であった。身体所見として、アデノイド顔貌であり、扁桃は第V度(Mackenzie法)であった。簡易型無呼吸検査を施行し、AHIは44.1/1hr、閉塞性パターンであった。また、平均酸素飽和度は97%であったが、脱飽和度指数が38.2であった。耳鼻科にてアデノイド増殖症、扁桃腺肥大と診断され、両側口蓋扁桃摘出術およびアデノイド切除術が施行された。術後4か月時に再度、簡易型無呼吸検査を施行した。結果として、AHIは6.4/1hrと改善した。平均酸素飽和度は術後も97%であったが、脱飽和度指数が9.6と著しく改善していた。身体所見にても、アデノイド顔貌は軽減し、鼻閉は改善、その他症状として、夜尿も減少した。小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の大部分は、アデノイド・口蓋扁桃肥大である。アデノイド扁桃の大きさと閉塞性睡眠時無呼吸症候群の重症度が必ずしも一致せず、アデノイド扁桃摘出術で治らない症例や、思春期に再発する症例があり、最適の手術時期の判断が困難な場合があるが、根治治療としては、外科治療が有効である。最近の手術適応としては、4〜5回以上/年の扁桃炎の反復、睡眠呼吸障害、さらに行動異常がある場合といわれている。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療には、多科が関わるが、その中で小児科医は、多動や学習困難など行動面での課題を踏まえた外科治療の適応やNPPVの導入など考慮していくべきである。

2.話題提供
  
 病児保育におけるインフルエンザ経過観察の試み

    3シーズン間での比較〜
      村上記念病院小児科 松浦 聡

2009年(平成21年)春から新型インフルエンザが流行しパンデミックとなった。行政からの指導にも関連して病児保育でも、表向き新型インフルエンザの診断を受けたものは保育しないと掲示を出した。
 しかしながら病児保育ではインフルエンザの経過観察がより詳細に行えると考えて最近3シーズンにおけるインフルエンザ罹患児の経過を検討した。
 07-08シーズンでは20例中16例(80%)、08-09シーズンでは39例中32例(82%09-10シーズンでは16例中12例(75%が経過観察可能であった。これについてタミフル治療開始後の有熱日数は、今シーズンは多くが1日で解熱し、3日以上となるものはいなかった。
 病児保育では一般の外来診察よりは高率に経過観察が可能である。今シーズンのパンデミックにおいては、カンガルーハウスの対応が適切であったかどうかの評価は改めて行う必要がある。

3.その他

 真鍋会長が辞任、後任会長は置かないことになった。


第501回

濱田淳平先生、森谷友造・京子先生送別会
 (平成22年3月10日、於寿司勝)

 平成22年3月10日(水)、濱田淳平先生、森谷友造・京子先生の送別会が寿司勝で開かれました。ご出席予定の森谷京子先生は、松山自動車道凍結不通のため、また井上直三先生は重症新生児加療のため、ご欠席となりました。
 出席者は10名でした。(敬称略)
(前列左から)真鍋豊彦、森谷友造、濱田淳平、塩田康夫
(後列左から)楠目和代、矢野喜昭、加藤文徳、山本浩一、松浦章雄、占部智子

第500回記念祝賀会

日時
平成22年2月13日(土)
場所 リーガロイヤルホテル新居浜
記念講演 「育児支援の視点からみた小児救急医療システム」 松山赤十字病院
成育医療センター長
小谷信行先生
祝賀会

 平成22年2月13日(土)、新居浜小児科医会第500回記念祝賀会がリーガロイヤルホテル新居浜で開かれました。
 出席者は15名(記念講演講師を含む)でした。(敬称略)
(前列左から)加藤文徳、塩田康夫、松浦章雄、小谷信行、真鍋豊彦、星加 晃、渡辺敬信
(後列左から)大坪裕美、占部智子、加藤正隆、鈴木俊二、井上直三、山本浩一、濱田淳平、矢野喜昭

特別講演

育児支援の視点からみた小児救急医療システム

   松山赤十字病院成育医療センター小児科 

             小谷 信行

1.はじめに 

 新居浜小児科医会第500回記念おめでとうございます。私自身も昭和53年から2年間参加させていただきましたが、その頃が始まって十年くらいたっていましたから、それから三十年あまり続いていることになり、しかも各回の記録が残されているということで、素晴らしいの一言に尽きると思います。真鍋先生、故三崎先生はじめ、多くの先生方に大変お世話になりました。いろいろな思い出があり、若き日の未熟さと元気のよさがあいまった情景が頭に浮かんできます。
 さて、この記念すべき会に特別講演をさせていただくことを誠に光栄に感じ、感謝申し上げます。新居浜で仕事をさせていただいたころから、三十数年がたち、われわれ小児科の医療も子どもたちの育つ環境も大きく変化してきました。今回は育児支援と救急医療という二つのキーワードでお話をさせていただきます。

2.育児支援をおこなう成育医療センターの設立

 少子化の進行、さらに児童虐待や親の育児不安などが、社会問題として取り上げられるようになってから長い期間が過ぎていますが、有効な方策がなかなか見つからない現状があります。そのなかでそれぞれの小児科医は、子どもやその家族と直接触れ合う第一線の現場で、大変な工夫や努力をしてきていると思われます。しかし、小児科医のみの努力や犠牲のみで、この問題が解決するには対象範囲が大きく、しかも多くの時間がかかりすぎると考えられます。つまり育児支援は1020年という「継続性」のある支援と多くの人々がそれぞれいい距離でかかわる「関係性」が必要と思われるからです。
 現在の日本の各地域での育児支援を考える概念として「継続性」と「関係性」を挙げたいと思います。
 この点から総合病院の機能は他職種の専門家がかかわりやすいこと、医療を通して「関係性」が作りやすいこと、継続して長期にかかわることができることで「継続性」がもてることから育児支援の中心的存在として機能しうると思われます。
 松山赤十字病院では2004年に成育医療センターを設立し、産科と小児科を一体化した成育医療の実践を開始しました。成育医療とは「胎児期から成人になるまで子どもとその家族を医療、保健、心理などの面から一貫して支援する医療」です。(図1)

成育医療における主な実践活動

1)胎児カルテの作成
 妊娠
3カ月から胎児のカルテを作成し、胎児の医療情報、母親に関する情報、経済社会の環境などを記録しこのカルテは成人になるまで継続され 情報の集約化、共有化の重要なシステムになっています。
2)マタニティーサポート
 カウンセラーなどによる妊娠中からの総合的心理的サポートを行います。
3)ハローベビーカード、ハローママカード
 データベースに基づいた電話相談システムを行っています。

4)成育医療カンファレンス
 胎児期から思春期までの症例を中心に産科医、小児科医、助産師、看護師、カウンセラーなど病院内の多くの職種が参加して毎週行われ、育児支援も含めて具体的な行動計画が立てられます。
 しばしば、地域の児童相談所、保健所、子育て支援室、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校などの参加があります。

5)成育医療ボランティアによる育児サポート
 心理学の講座を
4年間終了した方を成育医療ボランティアとして参加していただいています。2010年1月の段階でその数は82名になりました。まったく無償で活動していただき、その活動は院内のスタッフにも大きな励ましとなっています。主な活動は、傾聴ボランティア(健診の前の聞き取り)、保育ボランティア(入院中の子どもさんと遊ぶ)、ソーシャルスキルトレーニングボランティア(発達障害の子どもさんと保護者のトレーニング)の三つです。
6)学校連携 
 慢性疾患(白血病、若年性特発性関節炎、ネフローゼ症候群、重症食物アレルギー)を持った子どもや不登校、発達障害など心理的なサポートに必要な子どもさんに対して、保護者、学校(校長、教頭、担任、学園主任、養護教諭、学校カウンセラーなど)と医師、病院カウンセラーなどが具体的な支援を話し合う連携の会議です。

現在松山赤十字病院では産科医 8名、小児科医 14名、心理カウンセラー 6名 管理ボランティア 3名 医療秘書 3名で 成育医療センターの活動を行っています。
 もちろん助産師、看護師、薬剤師などの多くの医療スタッフも参加して成育医療を実践しています。院内だけでなく、地域の中で産科医、小児科医、学校、保育園、児童相談所、保健所などの地域の各機関との連携を行い、ネットワークを形成し、医療、家庭、地域の関係性をとりながら育児支援を行っています。(図2)
 成育医療のシステムは特に子育て不安の解消や児童虐待の予防には大きな効果をあげていると思います。育児経験の少ない母親、父親にとって妊娠中からいろいろな不安が多いと思われます。また、児童虐待の予防には保護者の孤立を防ぐことが最も効果があるといわれています。たとえば心理専門の成育医療ボランティアが、産科、小児科の診察の前にお母さんやお父さんから気楽にゆっくりとお話を聞きながら、その情報を看護師、助産師、医師、カウンセラーに伝え、それぞれにあった支援をしていくことは大きな成果をあげていると考えます。
 具体的に強い支援が必要なケースでは、院内で関係者が集まる成育医療カンファレンスの場で検討され、支援が始まります。時には院外から福祉、保健などの関係の方に成育医療カンファレンスに参加していただいています。
 おどろいたことに成育医療ボランティアの新生児、一カ月健診の傾聴が始まるまえは2〜3%だった支援の必要症例が、2009年の統計では22.3%の方が何らかの支援を必要としたという結果でした。少子化で少ない子を大切に育てる意識が強く力が入りすぎて不安が強くなることに加え、育児経験(子守経験)なく出産される方が増えてきていること、さらにはインターネットやメディアからの不確定情報の多さなどが重なって、育児はストレスの多いものになっている現状を表す数字ともいえます。多くの育児支援システムが必要と考えられます。

3.松山市の小児救急医療

 夜間の家族の不安や医療ネグレクトを減らすためには小児の救急医療とくに夜間の小児医療システムは地域の育児支援にとって大変重要なものであると考えられます。松山市では平成14年から夜9時から翌朝8時まで小児科専門医による一次救急対応を松山市急患医療センターで開始しました。(図3)
 それまで年間4000人あまりであった小児受診者数も、それ以降1万2千人あまりになり約3倍になりました。しかも2歳までの乳幼児が43.2%を占めています。このことは若い、経験の少ない保護者に対して、大きな育児支援になっており、医療ネグレクトの予防や育児不安を減らす大きな役割を果たしていると思われます。
 二次救急は愛媛県立中央病院小児科と松山赤十字病院小児科が当番日を決めて対応しておりタライ回しは全く起こっていません。
 また、適正受診を促すために子どもの救急ガイドブックを作成し、配布とともに保健所の医師による子どもの救急講座などに利用され啓蒙活動に効果をあげています。

4.ワクチンという育児支援

救急患者を減らし、育児不安を減らす、もうひとつの大きな武器は、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンなどの予防接種です。
 乳幼児の救急受診の理由の一つは発熱で、髄膜炎などの可能性を否定しきれないことがあります。とくにHibワクチンや肺炎球菌ワクチンは4つの恩恵があると思われます。

1) 疾病予防により子ども自身が恩恵を受ける。
2) 子どもが病気にならなければ、家族経済的負担、精神的負担が軽減される。
3) 医療従事者も、発熱児に対して髄膜炎を心配せず、ある程度安心して診療できる。
4) 医療全般にも抗菌薬の適正使用が可能になり耐性菌抑制につながる。

 われわれは、救急医療のシステムを充実させるとともに、疾患の予防にも努める必要があると思います。それがひいては育児支援につながると考えます。

5.今回の新型インフルエンザの流行と小児救急医療システム

 今回の新型インフルエンザの流行は松山市でも救急医療をパンクさせる勢いがありました。幸いなことに混乱した部分はありましたが、一次救急、二次救急ともなんとか凌ぐことができました。
 図4に示すように、松山市急患医療センターでは8月の第4週から患者さんがみられ、11月の第5週から流行が大きくなりました。ピークは11月の第3週で本来のスタッフに加え、応援医師、応援看護師で対応し、その機能が破たんすることなく、大きな混乱もなく対応できたと思います。1月末にはほぼ流行も終息してきています。
 二次救急病院である松山赤十字病院の入院患者さんは図5のように脳症15名、肺炎63名、脱水や熱性けいれんなどその他が48名で計126名でした。重症患者さんはいましたが、早期治療により、死亡や後遺症はなく回復しました。
 脳症や肺炎はインフルエンザ発病後半日から1日の早期発症が多くみられ、逆にこれだけの患者さんに十分対応できたことは、松山市の小児救急医療システムが、このようなパンデミックにも有効であることが証明されたものと考えられます。

6.おわりに

 新居浜と松山は医療環境は少し異なりますが、松山方式の小児救急医慮システムが、新居浜でもはじまり、新たな病院、診療所、行政のチームワークが必要とされてきていると聞いています。子どもたちやその家族のために、ひいては地域のために新しい育児支援としての小児救急医療システムが展開されることを期待して、稿を終わります。


第499回

日時
平成22年1月13日(水)
症例呈示 「新生児入院症例の検討」 県立新居浜病院小児科 井上直三
話題提供 「喫煙防止教育について」 かとうクリニック 加藤正隆
その他

1.症例呈示

  未熟児新生児病棟の役割と課題

   愛媛県立新居浜病院小児科 井上 直三

 平成2012月から平成2110月末までの11ヶ月間に、894名の小児科入院があり、そのうち新生児病棟の入院は138名であった。新生児入院のうち、院外出生症例が1/3を占め、また当院産科で出生した新生児の6割に入院治療を要した。
 人工呼吸管理症例の8割は出生前のリスクが低いと考えられており、出生前の児の重症度評価は困難であった。

2.話題提供

  愛媛県における喫煙防止教育

   かとうクリニック(新居浜市) 加藤正隆

昭和61年12月、愛媛県医師会学校医総会で「喫煙と健康障害−学校保健関係者の意識の変容をめざして−」が開催された。昭和62年9月に愛媛県小児科医会が喫煙予防に関する意識調査を県医師会員に実施、平成元年3月に小児のタバコ対策「タバコの煙から子どもたちを守ろう」を表明するなど、愛媛における喫煙防止活動が始まった。
 平成2年に愛媛県医師会は漫画本「タバコってなーに?」を発行。平成4年度からは県下の小中学校に数冊ずつ、平成6年7月には県下の全中学1年生に配付された。なおこの冊子は平成13年1月、平成20年4月に改定され、現在も配布中である。
 平成126月、新居浜市医師会会員を中心とする10人の医師で「禁煙推進医師の会えひめ」が設立、東予地域を中心に有志医師による喫煙防止教育講演が始まり、徐々に全県的に広がった。
 平成13年4月、「禁煙推進医師の会えひめ」が全ての職種による「禁煙推進の会えひめ」に改組、同時に禁煙医師連盟愛媛支部が設立され、同年5月に両会が「2001年世界禁煙デーinえひめ」として、米国元タバコ会社副社長ジェフリー・ワイガンド氏を招聘し、リーガロイヤルホテル新居浜にて、講演会「軽いタバコの危険性と禁煙教育の進め方」を開催し、約700人が参加。愛媛における喫煙防止活動が本格化した。
 
同年9月、愛媛県小児科医会が「タバコ病予防委員会」を設立。平成14年5月に思春期パンフレット委員会が「タバコを吸うということは・・・・?」を発行した。
 平成145月、「2002年世界禁煙デーinえひめ」にてパネルディスカッション「未成年者の喫煙ゼロをめざして」が、同年10月に愛媛県医師会禁煙フォーラムにてパネルディスカッション「子どもとタバコ」が開催された。国立保健医療科学院望月友美子先生による基調講演「タバコのない世代を目指して」に続き、医師・歯科医師・教師・教育委員会によるパネルディスカッションが開かれた。最後に愛媛県小児科医会会長真鍋豊彦先生が「未成年者喫煙対策の優先課題は学校敷地内禁煙化」であると締めくくった。
 その後各地区で敷地内禁煙化推進が個人的な努力で模索されたが、平成151月に新居浜市船木中が敷地内禁煙、平成165月には県立学校が敷地内禁煙になり、現在は敷地内禁煙化率94%で全国8位である。
 平成172月、禁煙推進の会えひめの協力のもと、愛媛県養護教諭部会が「CD付喫煙防止教育指導書」を作成し県内全学校に配布。教諭による喫煙防止教育が積極的に行われるようになった。
 平成205月、新居浜市医師会禁煙推進委員会が「お・ね・が・い・・・タバコをやめて」をリリースし、同年9月に市内保育園・幼稚園・全学校に配布した。日本禁煙学会・日本禁煙推進議員連盟のテーマソングにも採用されるなど、全国的な広がりを見せている。


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