第540回
平成25年新居浜小児科医会忘年会
(平成25年12月11日、於寿司善)
平成25年12月11日(水)、新居浜小児科医会忘年会が「寿司善」で開かれました。 出席者は11名でした。(敬称略) (前列左から)加賀田敬郎、楠目和代、手塚優子、松浦章雄、真鍋豊彦 (後列左から)牧野 景、中矢隆大、竹本幸司、加藤文徳、山本浩一、塩田康夫 |
第539回
日時 |
平成25年11月13日(水)
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場所 | 新居浜市医師会館 | ・ | ・ | |||
症例呈示 | 「当院におけるAD/HD児の治療の現状」 | 住友別子病院小児科 | 牧野 景 | |||
話題提供 | 「CRP発見者:Tillett and Francis」 | マナベ小児科 | 真鍋豊彦 |
1.症例呈示
当院における注意欠陥・多動性障害(ADHD)児の治療の現状
住友別子病院 小児科 牧野 景
注意欠陥・多動性障害(以下ADHD)は不注意や多動性・衝動性を中核症状とする発達障害であり、多動衝動型、不注意優勢型、混合型の3種類の診断型がある。
今回当院でフォローしているADHD児について後方視的に検討を行った。人数は29名、性別は男児28名、女児1名、年齢は7~16歳(平均10.3歳)であり、対象期間(当院でのフォロー期間)は2009年8月から現在までで、4~51ヶ月(平均23.7ヶ月)であった。診断型、併存症・既往歴、治療薬、治療効果、支援・連携について検討した。
診断型は29名中、混合型19名、多動衝動型6名、不注意優勢型4名であり、混合型が最も多かった。併存症・既往歴については一人で複数該当項目を認めるが、広汎性発達障害が15名と最大であり、その他頭痛、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、精神運動発達遅滞、低身長など様々であった。治療薬についてはコンサータ®をメインとする児が13名、ストラテラ®をメインとする児が8名、コンサータ®とストラテラ®の併用をメインとする児が6名であり、リスパダール単独使用1名、抑肝散®単独使用1名であった。コンサータ®、ストラテラ®、両者の併用をメインとする児がほとんどであり、それぞれの中でリスパダール®やエビリファイ®や抗てんかん薬を併用している児もみられた。治療効果については主に質問紙法であるQCD(子どもの日常チェックリスト)にて評価を行い判定した。治療導入にてすべての症例で改善傾向を認めたが、そのまま維持できたのは21名、何らかの理由で現在も治療薬調整中の児が8名であり、7割程度は改善維持できていた。また支援・連携については特別支援学校1名、特別支援学級10名、普通学級がメインで通級や何らかの支援をうけている児が17名、普通学級で支援なしの児が1名であった。また療育センター、十全総合病院、つばさ発達クリニックなどと連携している児もみられ、ほとんどの児で何らかの支援が必要であった。
定期的な評価を行い、個人の状況毎に適切な治療薬使用、支援機関との連携、多職種の関わり等を行うことにより、ADHD児の自己肯定感を高め、社会に適応していく準備を手伝うことができると考えられた。
2.話題提供
CRP 発見者:Tillett and Francis~原著論文紹介・私とCRP検査の因縁・最近6ヶ月間のCRP検査実績~
マナベ小児科 真鍋 豊彦
CRP(C-reactive protein)検査は、炎症マーカーとして日常もっとも広く使われている検査法の一つである。
CRPは1930年に、ロックフェラー研究所のTillettとFrancisにより発見され、数年後結晶化された。後年、Tillettはストレプトキナーゼの発見によりラスカー賞を受賞し、Francisもインフルエンザワクチン開発やポリオ不活化ワクチン(ソークワクチン)のフィールドトライアルなどに関り、大統領自由勲章を受章した。しかし、彼等がCRP発見者であることを知る人は少ない。
CRPの物理化学的性状、生物学的性状、測定の臨床的意義などは解明されてきたが、80年経った今もなお、研究対象になっている。
近年、高感度CRP検査法の開発により、微量CRPが測定できるようになり、炎症マーカーとしてだけでなく、虚血性疾患の発症リスク指標や急性冠症候群発症の診断と治療指標などとして役立つことがわかってきた。また、CRPそのものが、冠動脈疾患の進展に関っていることもわかり、CRPを減らす薬剤の開発も進んでいる。
一方、「CRP検査は本当に役立つか」、「基本的には必要だ」、「いや鑑別診断には全く役立たない」、「問診と診察を十分おこなえば必要ない」など、ネット上でも話題になっている。
1960年代初め、大学小児科入局後CRP検査係りになり、多くの疾患の検査をした。当時は迅速テストではなく、緊急測定には役に立たなかった。また、CRPは正常ヒト血清中には検出されない、とされていたため、検査結果は数値の多寡よりも、“陽性か陰性か”が重視されていた。漠然とした印象として残っているのが、ウィルス性疾患では陰性、リュウマチ性疾患や細菌性と思われる気管支炎、肺炎、膿胸などでは陽性だったことである。
当地で小児科開業後、炎症マーカーとしてはCRP検査よりも、白血球検査や血沈などを頻繁に行った。
最近10年ほど、しばしばCRP検査を実施している。使用しているCRPテストA「三和」は、定性反応検査キットで、逆ラテックス凝集反応(抗CRP抗体感作ラテックス試薬)を利用したもので、耳朶血を1滴採るだけで痛みも殆どなく、実に簡便、わずか1分30秒で判定できる。
因みに、平成25年1月から6月までの6ヶ月間に来院した熱性患者(延人数)の月別、週別、時間別、年齢別CRP実施率などは下記の通りである。
患者数:2,506人、そのうち発熱患数:583人(23.2%、4人に1人)
(月別)
発熱患者:1月26.5%、2月25.8%(1月、2月はインフルエンザ流行中)
CRP実施数:154人(発熱患者の26.4%、4人に1人)
CRP検査結果:陰性103人(66.9%)、陽性51人(33.1%)
(年齢別)
発熱患者:1歳未満40人、1歳~3歳未満147人、3歳~6歳未満187人、6歳~12歳未満169人、12歳以上40人
CRP実施率:1歳未満57.5%(1歳未満児の実施率最多)
(検査曜日):休日、祝祭日前後の曜日が多かった。
(検査時間帯):午前中、特に診療開始1時間以内が最多、診療終了前30分は午後の方が3倍多かった。
最後に、昨年12月にネットm3.com(エム・スリー・ドット・コム)が、CRP検査の必要性について、医師を対象に実施したアンケート結果を示す(投票者数:2,092)。
1.必要・基本的に必要である:80%
2.不要・ほぼ不要:7%
3.どちらとも言えない:13%
(声)
CRP検査をどのような症例に実施したか、検査結果が診断、治療にどのように役立ったかについては、敢えて触れませんでした。
私は1の立場です、と言うよりも、必要不可欠であると思っています。検査機器を殆ど持たない“徒手空拳”の身、今の私にとっては最も頼りになる“杖”です。
第538回
日時 |
平成25年9月11日(水)
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場所 | 新居浜市医師会館 | ・ | ・ | |||
症例呈示 | 「当科における食物経口負荷試験の現況~負荷開始のタイミングと負荷試験の注意~」 | 愛媛県立病院小児科 | 楠目和代 | |||
話題提供 | 「APACT2013の報告」 | かとうクリニック | 加藤正隆 | |||
その他 | 「急患センター経由以外の病院への紹介について」 | ・ | ・ |
1.症例呈示
当科における食物経口負荷試験の現況―負荷試験のタイミングと負荷試験の注意―
愛媛県立新居浜病院小児科 楠目和代
抗原特異的IgE抗体の測定や皮膚テストは簡便ではあるが疑陽性も疑陰性も多いため、食物アレルギー診療において食物経口負荷試験は不可欠なものとなっている。
負荷試験の目的には①原因食物の同定、②耐性獲得の確認、③閾値量の決定の3つがあるが、当科では②と③の目的で負荷試験を行っている。負荷試験の方法にはオープン法とブラインド法があり、また、負荷回数も単回から複数回、負荷間隔も様々である。より実際の食事に近い形で、より簡便かつ安全かつ正確なものを選ぶ必要があるが、安全を期すると時間と労力がかさむため、個々の医療機関の事情に合わせて患者毎・食材毎に負荷試験方法を決める必要がある。
当科では、①軽症型(単回摂取して1-2時間観察)②重症型(少量から2倍ずつ1時間毎に3回摂取し、3時間後まで経過をみる)の2つの方法で負荷試験を行っており、それぞれ年間200件程度、100件程度施行されている。重症型は①全身性の即時型反応のある例②特異的抗体価が非常に高い例③低年齢児④遅発型反応の予測される例⑤保護者の不安の強い例が主な適応となっている。軽症型の負荷試験は卵黄・全卵が全体の3分の2、乳製品が2割弱で、陽性者は処置を必要としない例を含めて7%程度であるが、中には点滴を要するような重症反応例が1%以下に見られる。重症型の負荷試験では卵製品が約半数、乳製品が4分の1となっており、陽性率は30%程度になっている。
強い反応が出た際はエピネフリンの使用が必要となるが、最近自己注射用のエピネフリン製剤が保険適応となり、使用の目安として、小児アレルギー学会より「エピペンを使用すべき基準」が出されている。(ご興味のあるかたは、小児アレルギー学会のHPをご参照ください。)強い誘発症状を出さないための注意点としては、①体調の悪い時、熱・下痢のあるとき、非常に空腹な時は負荷をさける。②負荷試験中は安静にする。③かならず低抗原食物から開始する。④特異的IgE抗体が非常に高い例では、低抗原食物から次の負荷まで3ヵ月程度あける、⑤基礎疾患のある患者には特に注意する。があげられる。
卵アレルギーとして除去食を行ってきた患児の負荷の進め方としては、①1歳を過ぎたら負荷を考慮。②卵白特異的IgE抗体価(CAP-RAST)がスコア4未満で、③即時型全身反応の既往のない患児なら、軽症型の日帰り負荷(単回投与)が可能である。④負荷量は、初回は加熱卵黄半分とし、家庭で1個まで増量可能になってから、全卵4分の1の負荷を軽症型で行う。重症型の場合は少量から開始する。
卵白CAP-RAST20以下なら摂取可能な確率が高いという根拠として、NTT松山病院での1歳前後の負荷試験結果を提示する。146名の鶏卵アレルギーをもつアトピー性皮膚炎患児に11ヵ月から14ヵ月時に鶏卵負荷試験を行ったところ卵白CAP-RASTスコア4未満では、80%以上が加熱全卵半分の摂取が可能であり、摂取を続けると抗体価の低下を認めた。また、陽性であった23症例も3歳までに負荷試験を繰り返して、全例が摂取可能となった。このデータを最近の新居浜病院でのデータと比較しところ、同程度の症例で90%以上が摂取可能となっていた。負荷試験方法が緩やかになっているためもあると思われる。
スコア4以上の症例や即時型全身反応を呈した29例の検討でも、25例がほぼ1年で摂取可能となり、抗体価も低下した。以上より卵に関しては比較的早期から開始し、上手に食べて行けは食べられるようになることが多いと考えられる。
一方、乳製品では中々家庭での増量が難しい症例が散見されるため、最近は最重症者に対して当科でも経口寛容誘導を行っている。当科の方法は緩徐型と急速型の中間的な立場であり、家庭では増量せずに負荷を続け、定期的に入院で負荷量をステップアップさせる方法をとっている。具体的なステップアップの方法として、1日目は1時間毎に30%程度の増量をしながら5回摂取、2日目は2-3時間毎に総量しながら3回摂取、3日目は1回摂取後に病棟内を歩行させる運動負荷を行っている。
摂取後の運動負荷については、ガイドラインでは規定がないが、年長児では食物摂取後に運動をして重篤な症状を発症する例が散見される。当科では、寛容誘導中の患児が、牛乳40mlを摂取して無症状であったのに、15分後に病棟内を3周(3分)程度歩行した後grade4のアナフィラキシーを呈した経験がある。以後は寛容誘導の症例や年長の重症児では全例に最終日に食物接種後に運動負荷を行っている。
最後に、負荷試験の際に注意する点として初発症状の発現時間を検討した。ガイドラインでは15-30分毎にほぼ2倍ずつ負荷量を増量して閾値を設定する方法が紹介されており、日本ではほとんどの施設でこの方法がとられている。しかし、当科では60分毎に負荷を勧めているためはっきり言えることであるが、実際には初発症状(咳やくしゃみ、顔が少し赤くなるなど)が食物摂取30分以後に発現することを少なからず経験する。grade3-4の強いアナフィラキシーを認めた36例の検討でも、初発症状が30分以後に見られたものが11例(31%)に 見られ、60分以上たって発現した例も5例 (13%)に見られた。安全を期する場合、重症例に対する負荷試験間隔は60分以上あけることが望ましいと考えられる。
2.話題提供
第10回APACT(アジア太平洋タバコ対策会議)の報告
映画「風立ちぬ」に対する日本禁煙学会の苦言について
2020年夏季五輪パラリンピック東京開催に伴う受動喫煙防止対策の必要性について
かとうクリニック 加藤正隆
8月18日(日)から21日(水)の4日間、幕張メッセにて第10回APACTが開催された。結核予防会・日本禁煙学会・日本禁煙推進医師歯科医師連盟・たばこと健康問題NGO協議会が主催するという文字通り日本の禁煙推進団体の総力を結集した素晴らしい大会となった。私は2007年に台北で開催された第8回に初参加したが、参加各国からの進んだタバコ規制の報告に驚き、2010年にシドニーで開催された第9回では“The Endgame”がトピックスになっていたことに感動を覚えた。今回もOpening Lecture 2でJudith Mackay氏が“The Endgame”の講演をされたが、改めてFCTCの履行がままならずタバコ規制が遅々として進まない我が国と先進国の大きな差が身に沁みる機会となった。今回のAPACTでは、昨年12月からプレーン・パッケージを採用して先進的な成果を挙げているオーストラリア、タバコ・パッケージの警告表示面積を世界最大の85%に義務付けたタイ、2025年までに喫煙率5%未満を目指してタバコ規制の包括的対策実施の最終段階に入ってきているニュージーランド等に大きな賞賛が表された。
映画「風立ちぬ」は「戦争はやってはいけない=命がいちばん大事だ」と言う素晴らしいメッセージを発信しているが、タバコを吸うことが「魅力的に」描かれている事に日本禁煙学会は苦言を呈した。原作の主人公のモデルとなった方が、実はタバコを吸わない人だったと言われている。もしそうならば、歴史をねじ曲げていることにほかならない。たとえ、その方が喫煙者であったと仮定しても、「風立ちぬ」で喫煙が幾度となく肯定的に表現されていることは、命が最も大事だというこの作品の一番大事なメッセージを損なう、とても残念な点になっている。なぜなら、からだに悪いことがいろいろある中で、タバコは、今の日本で最も人の命を縮めているからである。喫煙シーンを多く見た子どもほどタバコに手を出すようになることがわかっている。このことを心得ているタバコ産業は、「プロダクト・プレイスメント」と言う手法(映画などの映像作品に喫煙シーンやタバコを露出させるために資金を支出する)で、映像作品にタバコ使用場面を増やしてきた。もちろん子どもの喫煙開始を促進するためである。今回の日本禁煙学会の要請を、表現の自由の侵害だと批判する向きがあるが、「表現の自由の侵害」とは、強制権力を持った政府が市民の言論を抑圧することを指すものであり、強制権力のないNPO法人日本禁煙学会が行う批判活動は、正当な市民的権利の行使に過ぎず、まったく表現の自由の侵害に当たらない。日本禁煙学会は、「風立ちぬ」の制作会社に限らず、今後映像作品を制作するすべての方々に対して、タバコ製品および喫煙シーンの露出が子どもと若者に与える影響を熟慮されるよう要望することを表明している。
2020年夏季五輪・パラリンピックの東京開催が決まった。実は、IOCとWHOの取り決めにより、開催都市には完全な受動喫煙防止の実施が必要とされている。東京のみならず事前合宿などの誘致に名乗りを上げている多くの自治体は受動喫煙防止策を整備しなければならない。我が国に罰則付きの受動喫煙防止法や条例を根付かせる最大のチャンスと言えよう。
第537回
夏季懇親会・矢野喜昭先生送別会
(平成25年7月10日、於波満蝶)
平成25年7月10日(水)、夏季懇親会と矢野喜昭先生の送別会が「波満蝶」で開かれました。 出席者は13名でした。(敬称略) (前列左から)占部智子、手塚優子、矢野喜昭、松浦章雄、真鍋豊彦 (後列左から)加賀田敬郎、牧野 景、竹本幸司、加藤文徳、村尾紀久子、山本浩一、塩田康夫、楠目和代 |
銅山峰ハイキング登山
平成25年5月12日(日)
5月12日、新居浜小児科医会の有志で旧別子から銅山峰へハイキングに行きました。新居浜市の歴史的遺産である旧別子銅山の遺構の見学と、さらにこの時期全国有数の規模を誇る西赤石山のアケボノツツジの群生を見ることが目的でした。参加者は塩田康夫(しおだこどもクリニック)、松浦章雄、矢野喜昭(住友別子病院)、手塚優子(県立新居浜病院)、占部智子(十全総合病院)、加藤文徳(こにしクリニック)の6名。当日の天気は抜けるような青空、快晴でした。
朝7時に山根公園駐車場に集合し2台の車に分乗して出発、30分ほどで日浦登山口に到着しました。予想通りすでにたくさんの車で駐車場は満杯、少し道を下った路肩に駐車しました。塩田先生から各人に旧別子の地図が渡され、今日のルート説明を受けました。7時45分、その塩田先生を先頭にゆっくりと階段を登り始めました。空気の澄んだ新緑の中、気分は最高です。接待館、小学校、劇場跡など旧別子の様々な遺構の前ではその都度立ち止まり、立て看板の説明を読みます。さらに旧別子の歴史に関し知識豊富な塩田、松浦両先生から説明をうけます。立ち止まって話を伺う間は他の登山者に追い越されていくわけですが、ある登山者から、あの方たちはガイドさんですかと聞かれました。いいえと答えましたが、実はこれ以上は望めない立派なガイドさんなのでありました。
旧別子が初めての会員にとって遺構の数々は、その規模、石垣の見事さなど驚きの連続でした。それにしてもよくこんな場所にこんな建造物があったものだと驚かされました。それを作った人間の力は偉大です。そして今は樹木にあふれたここが、かつて一木一草もない土地だったこと、それを緑あふれる山に回復させた先人の努力に感服しました。
先へ進み、8時45分ダイヤモンド水で休憩。これが何故ダイヤモンド水というのかとの説明に、それを知らなかった会員は納得し、冷たい水で喉をうるおしました。さすが人気のアケボノツツジです。ここも次から次へと人が登ってきます。休憩後、歓喜坑を経て9時55分銅山越に到着。どこも人でいっぱい。そこから銅山峰にあがって西赤石を見上げました。アケボノツツジの開花はまだ山頂まで届いていません。それで西山から綱繰山へまわることにしました。登山者の多くは西赤石へ向かうようで、西山への道は静かでした。そして西山に登り、そこからみたアケボノツツジは満開で、それは見事でした。さらに綱繰山へ向かいます。途中の急登をがんばって全員登り切りました。11時10分、綱繰山頂に到達。青空の下、南には平家平、冠山、その北西に笹が峰、ちち山がきれいに見渡せました。山頂そばの笹原の中でカラマツの新緑を眺めながら昼食をとりました。
帰りは西山の南面を迂回し、大露頭、大和間符を見学し再び銅山峰へ。ツガザクラが少し咲き始めていました。そこでゆっくりと腰をおろし、新居浜平野を見下ろしながら汲んできたダイヤモンド水で入れたコーヒーを飲み、会員の持ってきたカステラ、みかんを食べました。いい気分です。遠くにはしまなみ海道が見渡せました。西赤石山頂への登山道を双眼鏡で見ると人でいっぱいで、蟻の行軍のようでした。
一息ついた後、さらに下山。牛車道から蘭搭婆に立ちより、大山積神社跡から目出度町跡を通り、午後3時登山口に帰り着きました。その後、車で日浦へ向かいました。東平の第三通洞へつながる出口があり、銅山川に鉄橋がかかり駅舎の跡が広場になっています。“かご電車”に乗ってそのトンネルを通られた経験を持つ松浦先生のお話に、当時の活況を思い浮かべました。
今回のハイキングは天候に恵まれ、アケボノツツジだけでなくツガザクラを見ることもできました。気持ちの良い1日でした。たまにはこういう小児科医会もいいものです。(加藤文徳 記)
登山口で講義中
西山へ向かう小児科登山隊 綱繰山への急登
アケボノツツジ ツガザクラ
第536回
日時 |
平成25年6月22日(土)
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場所 | リーガロイヤルホテル新居浜 | ・ | ・ | |||
学術情報提供 | 「Meiji Seika ファルマの医薬品」 | Meiji Seika ファルマ株式会社 | 担当者 | |||
特別講演 | 「小児の呼吸器ウィルス感染症~ヒトメタニューモウィルスを中心に~」 | 座長:愛媛県立病院小児科部長 | 手塚優子 | |||
講師:山形大学医学部感染症学講座 准教授 | 松嵜 葉子先生 |
特別講演
「小児の呼吸器ウイルス感染症 〜ヒトメタニューモウイルスを中心に〜」
山形大学医学部感染症学講座 准教授 松嵜葉子
呼吸気感染症の原因ウイルスとその病原診断
ウイルス感染症の病原診断には、細胞培養法によるウイルス分離とPCR法による核酸検出、迅速診断キットによるウイルス抗原の検出の3つがある。臨床現場で診断できるキットの有用性は大きいが、呼吸器ウイルスではアデノ、インフルエンザ、RSに限られていた。2012年4月にヒトメタニューモウイルス(hMPV)抗原を検出する「チェックhMPV」が発売されたので、その治験を行ったときの成績と、hMPVを含む呼吸器ウイルス感染症について紹介したい。
山形県衛生研究所では、病原体定点の医療機関から年間約2000検体を収集して細胞培養法によるウイルス分離を実施している。6種類の細胞を使用するマイクロプレート法を採用することで、ピコルナウイルス科(コクサッキー、エコー、エンテロ(71、68)、パレコー、ライノ)やパラミクソウイルス科(パラインフルエンザ、RS、hMPV)、オルソミクソウイルス科(インフルエンザA、B、C)など幅広いウイルスを分離している。しかし、分離が難しいウイルスがあるのも確かであり、最近ではPCR法も積極的に取り入れてサフォードウイルスなどの検出に成功している。この辺りの経緯は病原微生物検出情報IASR(2011年10月号)に速報されている。
ヒトメタニューモウイルスの流行時期と臨床像について
症状の似ている呼吸器ウイルス感染症を臨床診断するのは容易なことではない。それぞれのウイルスの流行時期、患者の年齢、臨床症状の3つを参考にある程度絞り込むことが肝要かと思う。山形県で7年間に分離された422株のhMPVの月別分離数をみると、hMPVは3月がもっとも多く、秋に沈静化する。毎年流行のピークがあり、12月から6月までのどこかにそのピークが来ている。RSの流行が一段落したあとにインフルエンザと重なりながら流行するのがよく見られるパターンである。後半にはパラインフルエンザ3型の流行も始まってくる。その他に偶数年にはC型インフルエンザも同時期に流行する。
hMPVの患者の年齢は1-2歳にピークがあり、下気道感染症は4歳児までの頻度が高い。RSに比べると明らかに年齢が上になる。ただし、6か月未満の患者がいない訳ではない。6か月未満では発熱のある子が15.4%と6-11か月の子の発熱のある割合(83.3%)に比べて有意に低かったので、軽症に経過するものと考えられる。しかし鼻閉による呼吸苦や気管支炎を起こしているケースもあるので過信はできない。
hMPV感染症は発熱と咳と鼻汁が主症状で、1歳から3歳までの児では38-39℃の熱が4-5日間続くのが典型的である。発熱の前日に咳が出始めたと訴えるケースが全体の65%あり、突然の発熱で発症するインフルエンザと異なっている。年齢が上がると発熱期間も短くなり、6歳以上では1-2日間で収まっている。鼻汁や咳は年齢に関係なく1週間以上続くことが多い。5日以上発熱が続く症例では下気道炎の可能性が高くなる。
同じ時期に同じ小児科医院で診断された6歳までの症例で下気道炎と診断された割合を他のウイルスと比較すると、RSが47%、hMPVが38%、パラ3型が13%であり、hMPVがRSよりは少ないものの下気道炎を起こしやすいウイルスであることがわかる。山形市立病院済生館小児科で6か月間(12月-5月)に呼吸気感染症で入院した小児に占める割合をみると、RSが30%でhMPVが17%でありhMPVは2番目に多い。両者の比較では平均年齢が1歳以上高い他は、喘鳴を伴う割合がRSに比べて若干低かった(68%)程度であり、鑑別が難しいことがわかる。時期と年齢である程度絞り込んだあとは、迅速診断キットが有用になる。
hMPVの迅速診断キットについて
2007年の12月から2008年の7月までの8か月間に、3か所の小児科医院で224名を対象に鼻咽頭拭い液でチェックhMPVの治験を行った。12月から4月までhMPVの流行があった年であり、流行期間中のキットの陽性率は30%を超えた。症状からhMPVを疑ってキットを使用した患者の3人に1人が陽性になったことになる。山形大学で実施したリアルタイムPCRと比較した感度は82.3%、特異度は93.8%であり、チェックRSVの治験実施時の成績とほぼ同じであった。PCRが陽性でキットが陰性になった検体のウイルス量は104コピー/mlよりも少なかった。それよりも多いウイルス量を採取するには、検体採取を発熱から4日内に行うことが望ましい。発熱から5日以上たつと103コピー/ml以下になることは、同一人で経過を追って採取した検体のウイルス量から推測できる。有熱期間が4-5日であることを考えれば、あまり待つことなくキットを使うのが良いのかもしれない。入院患者177名を対象にキットを使用した際は鼻腔吸引液を使用したが、感度は95.8%と非常に良い成績であった。発熱から検体採取までの日数が5日以上の小児も多数いたが、熱が遷延する入院症例ではウイルス排泄も長くなる可能性がある。
おわりに
hMPVは保育園や幼稚園に通う年齢での罹患が多く、施設内での集団感染に遭遇する場合が多い。家族内感染例を検討したところ、発端者が保育園や幼稚園児で、2次感染者が家庭内の乳児であるケースが多く見られた。重症心身障害児病棟での集団感染も報告されている。地域の流行状況に目を配り、迅速診断キットをうまく利用して、診療の助けとしていただければ幸いである。
第535回
日時 |
平成25年4月10日(水)
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場所 | 新居浜市医師会館 | ・ | ・ | |
症例呈示 | 「眼球運動異常をきたした早期新生児の1例」 | 住友別子病院小児科 | 竹本 幸司 | |
話題提供 | 「胃腸炎の入院症例を振り返って」 | 十全総合病院小児科 | 占部 智子 |
1.症例呈示
眼球運動異常をきたした早期新生児の1例
住友別子病院小児科 竹本幸司
新生児の眼球運動異常には、比較的頻度が多いと考えられる斜視に加え、眼振、落陽現象、眼瞼下垂、動眼神経麻痺等がある。その原因は先天性の神経麻痺や分娩障害が多いと考えられるが、眼科疾患や感染症、頭蓋内出血、脳腫瘍等の中枢神経系異常にも十分留意すべきである。
今回我々は、眼球運動異常を契機に脳腫瘍と診断された早期新生児の1例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する。
症例は日齢5の男児。在胎40週5日、分娩停止と回旋異常のため胎児ジストレスと診断され、帝王切開で出生した。出生体重3796g、身長52.0cm、頭囲33.5cm、胸囲32.7cm、Apgar score 9/10であった。日齢5に左眼が外転困難であることに気づかれた。哺乳は良好で、嘔吐、頭囲拡大はなく、理学所見でも左眼球の外転障害以外の明らかな異常は認められなかった。そのため、分娩障害と考えられ経過観察されていた。1か月健診時、体重4510g(体重増加32.4g/日)、身長55.6cm、頭囲39.0cm、胸囲36.0cmで、全身状態は保たれていたが、外転障害の改善傾向はなかった。左眼周囲の腫脹をわずかに認めたため、眼科で精査を行った。眼球突出、眼圧上昇はごく軽度で、その他の異常もなかった。しかし、頭部CTで中頭蓋底~左眼窩の腫瘍性病変を認め、脳腫瘍と診断された。生後3カ月時でも腫瘍の増大傾向や症状の変化はなく、良性の神経鞘腫と考えられ経過フォローされていた。生後3カ月半に国立成育医療センター脳神経外科で腫瘍亜全摘が施行された。奇形腫が疑われているが、術後経過は安定しているとのことである。
新生児脳腫瘍は、100万人出生児に対して0.34人、小児脳腫瘍の約1~10%の発生率の報告であり、かなり稀と考えられる。初発症状は頭囲拡大、嘔吐、眼瞼下垂等が挙げられている。巨大腫瘤形成、テント上発生7割、脳室内発生の頻度が多い、神経上皮原生が多い等の特徴を有し、病理診断では、奇形腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、脈絡叢乳頭腫等が報告されている。予後不良な例が多いようで、30~50%の死亡率という報告もある。
今回の我々の例では、中頭蓋底から左眼窩への腫瘍進展であったため、頭囲拡大や嘔吐などの頭蓋内圧上昇症状を呈さなかったのかもしれない。幸い悪性の疑いも少なく、腫瘍の明らかな増大傾向もなく亜全摘されたため、生命予後も期待される。 新生児の眼球異常では、頻度は少ないものの、脳腫瘍の可能性にも留意すべきと考えられた。
2.話題提供
胃腸炎での入院症例を振り返って
十全総合病院小児科 占部智子
2006年1月1日から2013年3月31日の間に胃腸炎のために当院に入院した症例のうち、ウイルス感染または細菌感染が明確であった症例について検討した。0歳4か月~14歳までの46例(男児30例、女児16例)であった。年齢は、0歳9例、1歳9例、2歳13例、3歳3例、4歳1例、5歳3例、6歳2例、7歳なし、8歳1例、9~11歳なし、12歳2例、13歳1例、14歳2例であった。0歳から2歳の入院が多かった。病原体はロタウイルス単独が33例で最も多く、全体の72%を占めていた。その他はカンピロバクター3例、病原性大腸菌(O-6,O-74)2例、サルモネラ菌(O-7,O-9)2例、アデノウイルス2例、ロタウイルス+病原性大腸菌(O-1,O-74)の混合感染2例、カンピロバクター+病原性大腸菌(O-8)の混合感染1例、ノロウイルス+病原性大腸菌(O-1)の混合感染1例であった。入院日数は平均2.2泊であった。最も多かったロタウイルス単独では平均2.5泊であった。入院が長かったのは、サルモネラ陽性2例の平均6.5泊、ロタウイルス陽性+病原性大腸菌陽性の混合感染2例の平均6泊であった。ロタウイルスでの入院は2~5月に多かった。主たる入院理由は、①尿量減少・脱水が22例(48%)、②経口摂取困難10例(22%)、③低血糖6例(13%)、④著しい活気低下4例(9%)、⑤虫垂炎疑い2例(4%)、⑤けいれん2例(4%)となった。
感染性胃腸炎は自然治癒することも多いが、嘔吐・嘔気や頻回の下痢の持続に伴って、脱水や低血糖などを合併した場合、入院加療が必要であった。
第534回
藤岡 智仁先生送別会
(平成25年3月13日、於寿司勝)
平成25年3月13日(水)、藤岡智仁先生の送別会が「寿司勝」で開かれました。 出席者は11名でした。(敬称略) (前列左から)真鍋豊彦、占部智子、藤岡智仁、手塚優子、楠目和代 (後列左から)竹本幸司、山本浩一、塩田康夫、加藤文徳、松浦章雄、矢野喜昭 追記:松浦 聡先生が3月末に転出されます。 |
第533回
日時 |
平成25年2月13日(水)
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・ | ・ | |
場所 | 新居浜市医師会館 | ・ | ・ | |
症例呈示 | 「1例から学ぶこと~学校検診心電図で不完全右脚ブロックを指摘された症例~」 | 県立新居浜病院小児科 | 村尾 紀久子 | |
話題提供 | 「新しく原因が判明した食中毒」 | 山本小児科クリニック | 山本 浩一 |
1.症例呈示
1例から学ぶこと-学校検診心電図でIRBBBを指摘された3症例-
愛媛県立新居浜病院小児科 村尾紀久子
緒言:不完全右脚ブロック(IRBBB)とは、心室内伝導障害のうち右心室への伝導障害を指す。心房中隔欠損、房室中隔欠損、Fallot四 徴症、Ebstein奇形や心室中隔欠損の術後に見られることが多い一方、正常心でも見られる。今回、学校検診心電図でのIRBBBの指摘を契機として当科を受診した症例のうち、治療を要した3症例を経験したので報告する。
症例1:13歳女児、診断:心房中隔欠損、右室内腫瘍。転帰:腫瘍摘出術。
症例2:13歳男児、診断:部分肺静脈還流異常、肺高血圧。転帰:心内修復術。
症例3:12歳男児、診断:多孔性心房中隔欠損。転帰:経皮的閉塞栓は困難であり心内修復術。
考察:心雑音や身体的所見に乏しく、学校検診における心電図を唯一の契機とし発見に至る心疾患を経験した。IRBBBのみで具体的診断に至ることは困難であるが、診察、理学所見、心臓超音波検査、単純レントゲン写真による総合的な診断の必要性とその後治療管理へとつなげる重要性を実感した症例であった。
2.話題提供
新しく原因が判明した生食用生鮮食品による「食中毒」
寄生虫による食中毒・・クドア(ヒラメ)とザルコシスティス(馬肉)について
山本小児科クリニック 山本 浩一
食中毒は必ずしも原因が判明するわけではありません。厚生労働省食中毒統計資料によると平成21年度の国内発生総数は、1,048件、そのうち病原物質が不明となっているものは100件もあります。また同年の生鮮魚介類による原因不明の食中毒に限った報告では、疫学的に原因施設が特定できても原因食品や原因物質が特定できず「食中毒」として扱うのか「有症苦情事例」として扱うのか判断が困難なため、有症苦情事例としての報告が食中毒の3倍の報告件数になっていました。
一方、原因の食材が推定されても、食中毒の原因物質が不明なものがありました。その中でも、「ヒラメと馬肉によると推定された事例」が多く報告されていました。各種検査でも食中毒の原因物質が判明せず、その多くは「ヒラメと馬肉の有症事例」として扱われてきました。なぜ今まで各種検査でも食中毒の原因物質が判明せず、有症事例として扱われてきたのか不思議です。
平成23年6月になり初めて、厚生労働省医薬食品局食品安全部長名で「ヒラメと馬肉の食中毒は、寄生虫が関与している可能性があるので注意を」との通達がでました。まだ原因物質として確定したものではありませんが、ヒラメと馬肉でそれぞれ寄生虫である「クドアとザルコシスティス」が確認できた場合は、それが食中毒の原因と考えられるので「今後は食中毒として取り扱うように」との初めての通達です。
この二つの寄生虫が、本当にヒトでの食中毒の原因になるのか確定するのに手間取った要因の一つは、「ヒトに寄生しない」ことが分かっていたことです。さらには、発症したヒトから原因物質を確認できず、食べた食材からその食材による食中毒であろうと推定するしかなかったからです。食材に感染していた寄生虫を食べることによって、ヒトが下痢や嘔吐という食中毒の症状を引き起こすのかも不明であり、行政処分(事後措置)としてどのような対応をしたら良いかも注意深く確認する必要がありました。
生鮮ヒラメでの食中毒を引き起こすと推定されたクドア・セプテンプンクタータ(粘液胞子虫類)は、魚類とゴカイなどの環形動物を交互宿主としています。ヒラメに経皮感染すると筋肉内で増えます。シュードシストを形成するだけでシスト(嚢胞)を形成しないため、肉眼での確認ができず顕微鏡検査が必要です。クドア感染の確認はPCR法で可能ですが、これは他のクドアとの交差反応があり、クドア・セプテンプンクタータであるとの確定診断ができません。このため顕微鏡での確認が必須となります。
病原性は、マウスなどの動物で嘔吐や下痢を引き起こすことや、ヒトで下痢を引き起こす可能性があることをヒトの腸管細胞培養系での実験で証明したことなどで確認されました。また冷蔵では病原性が保持され、冷凍保存や加熱処理で失活することも判明しました。
このようなことが確認され、平成24年6月に生鮮ヒラメの食中毒では「ヒラメにクドアが確認された時は、クドアが原因物質であると判断し食中毒として報告するように」との取り扱いが決定しました。また、他の人への二次感染の報告は無く、行政処分についてはヒラメの破棄で拡大を防ぐことが可能であるため、「営業禁止や停止期間の設定は不要」とされました。
臨床症状は、生鮮ヒラメを食べた後数時間で発症し、下痢、嘔気、嘔吐、腹痛など通常の食中毒症状を呈します。発症を予防するためには、冷凍して失活させた後食べれば良いのですが、ヒラメは冷凍すると味覚が落ちてしまい、日本では通常食べる前の冷凍処置をしません。ヒラメでは天然ものでも養殖ものでもクドアの感染が報告されているので、生で食べる時は症状が出ないか注意が必要です。
馬刺しの関与した有症事例では、顕微鏡検査で馬肉筋肉部へのザルコシスティス・フェアリー(住肉胞子虫)の感染が確認されました。その後国が調査した結果、この寄生虫が発症に強く関与していることが示唆され、食中毒として扱うようにと通達されました。ザルコシスティス・フェアリーは犬を終宿主とし馬を中間宿主としていて、ヒトには寄生しません。生活環が判明しているため、生産段階で犬との接触を絶てば馬への感染は防げる可能性があります。
腸管病原性は、ザルコシスティス・フェアリーのシスト(嚢胞)を含有する馬肉のすり身を用いたうさぎの腸管ループ試験で確認され、また動物実験では用量依存性があるとされています。これらのことから、ヒトで下痢を引き起こす可能性が示唆されました。その病原性は、冷凍することで失活することが判明しています。したがって馬肉では、冷凍保存してから食べることで食中毒の発生が防げます。
臨床症状は、馬肉を生食後5時間前後に下痢、嘔吐、胃部の不快感などで発症し、軽症で経過します。他の人への二次感染の報告は無く、研究成果からも二次感染の可能性は否定されています。
第532回
日時 |
平成25年1月9日(水)
|
・ | ・ | |
場所 | 新居浜市医師会館 | ・ | ・ | |
症例呈示 | 「ダウン症に合併したWest症候群に対しACTH再投与が著効した3歳女児例」 | 住友別子病院小児科 | 藤岡 智仁 | |
話題提供 | 「ムンプスの再感染について」 | こにしクリニック 小児科 | 加藤 文徳 |
1.症例呈示
ダウン症に合併したWest症候群に対しACTH再投与が著効した3歳女児例
住友別子病院別子小児科 藤岡 智仁
(表)
既往歴 |
ワクチン歴 |
IgM抗体 |
IgG抗体 |
診断 |
無 |
無 |
+~++ |
+ |
ムンプス初感染 |
無 |
無 |
-~+ |
+++ |
ムンプス再感染 |
無 |
無 |
- |
-~+ |
ムンプス以外 |
無 |
あり |
+~++ |
+ |
PVF |
無 |
あり |
-~+ |
+++ |
SVF |
無 |
あり |
- |
+ |
ムンプス以外 |
あり |
無 |
- |
+ |
ムンプス以外 |
あり |
無 |
-~+ |
+++ |
ムンプス再感染 |
PVF : Primary
Vaccine Failure
SVF : Secondary
Vaccine Failure
IgM抗体
-(陰性) :抗体指数 0.8未満
+(弱陽性) :抗体指数 1.2~2.5
++(中等度陽性):抗体指数 2.5以上
IgG抗体
-(陰性) :EIA 2.0未満
+(軽度~中等度陽性):EIA 2.0~25.8
+++(高度陽性) :EIA 25.8以上
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