定例新居浜小児科医会(平成5年3月以降)

新居浜小児科医会誌

第500回記念号 (平成22年12月1日発行
第400回記念号 (平成13年12月25日発行
平成28年(559回→565回)


第565回
新居浜小児医会
忘年会
(28年12月14日、於寿司善

平成28年12月14日(水)、忘年会が「寿司善」で開かれました。
 出席者は9名でした。(敬称略)
(前列左から)松浦章雄、鎌田ゆきえ、塩田康夫、真鍋豊彦
(後列左から)加賀田敬郎、牧野 景、山本浩一、星加 晃、加藤文徳

第564回
日時
平成28年10月12日(水)
特別講演 「小児の漢方診療」 松山赤十字病院小児科副部長  上田 晃三先生

特別講演

「小児の漢方診療」

     松山赤十字病院 成育医療センター 小児科  上田 晃三 先生

 「漢方薬」というと、「苦い」・「臭い」・「聞くまでに時間がかかる」・そもそも「本当に効くの?」といったイメージがある(と思う)。また、用語が難解であったり、聞いたこともない薬の名前であったりと、とっつきにくい印象があるのではと感じる。ただ、西洋医学に基づいた診療体系では治療が困難な体調不良に対して、漢方治療が良い適応となる場面があるのは事実である。
 ロタウイルスによる嘔吐下痢症に、五苓散が著効するのは有名である。五苓散は、その他にも「めまい」や「頭痛」(二日酔い?)など、病態に「水毒」が関与している場合には即効/著効することが多い。ただ、症例を重ねるうちに、五苓散が効かない嘔吐下痢症の存在に気づかされる。一見すると「急性胃腸炎」としてまとめられる疾患でも、実は「陽証の下痢」「陰証の下痢」「水毒の関与の有無」などがあり、漢方の見方からすると、様々な病態/治療法が存在する。
 日常診療にて、よく経験される反面、西洋医学的には治療法がはっきりとしない場面に出くわすことが多々存在する。「小児の慢性頭痛」に対する「小建中湯」、「起立性調節障害」への「苓桂朮甘湯」など、漢方方剤でなければ症状の改善が得られない病態がある。さらに、漢方診療の手技を用いることで、その体調不良の背後に潜む根本的な要因、特に心理的要因の存在を認識することができる。
 漢方診療を行う上で、本来は陰陽・虚実・気血水・五臓などを理解した上で病態を把握することが勧められはするが、効く・効かないは後から評価を行うとして、日常診療に困った際には「漢方方剤」が有効かもしれない、と試みて、そして「効く」場合と「効かない」場合の違いを実感することで、皆さんの診療が広がること、そして、全ての体調不良で困っている「こども達」が、元気に過ごせるようになることを期待したい。
 とりあえず、「気軽な気持ちで、漢方を試してみては?」。


第563回

日時
平成28年9月14日(水)
症例提示 末梢静脈カテーテルにより血流感染をきたした姉弟例 愛媛県立新居浜病院小児科 浅見 経之
話題提供   「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業について~慢性疾病をのりこえていく子どもたちのジョブプロジェクト~ 愛媛県立新居浜病院小児科 大藤 佳子

症例呈示

末梢静脈カテーテルにより血流感染をきたした姉弟例

     愛媛県立新居浜病院小児科 浅見経之

 血管内カテーテル関連感染症は主に中心静脈において問題とされる。今回ヘルパンギーナの診断で入院し、軽快後に再発熱し、末梢静脈カテーテル及び血液から培養陽性であった姉弟例を経験した。起炎菌としては稀なK.pneumoniaeが両者で検出され、同時期に発症した経緯から感染源は同じものと推察した。保護者の観察により感染源同定に至ったが医療従事者からはpitfallであり、稀有な症例と考えられたため報告した。

話題提供

   小児慢性特定疾病児童等自立支援事業について 
     ~慢性疾病をのりこえていく子どもたちのジョブプロジェクト~


           愛媛県立新居浜病院小児科 大藤 佳子

小児がんや先天性心疾患など慢性疾病をもつ子どもたちが、小児期の疾病を乗り越えて成長し、社会的に自立できるようになることは、小児医療に携わる者の願いであり使命でもあります。
 小児医療の進歩により、慢性疾病をもちながら在宅で療養する子どもや成人した患者が増加していますが、長期にわたる治療や生活制限の影響により、学習の遅れや社会経験の不足が生じ、将来仕事ができる能力を養い社会に適応してくことが難しい成人患者も増加しているのが現状です。
 201511日児童福祉法(第19条の22、第53条)が改正され、「幼少期から慢性的な疾病にかかっているため、学校生活での教育や社会性の涵養に遅れが見られ、 自立を阻害されている児童等について、地域による支援の充実により自立促進を図る」ことを目的とした「小児慢性特定疾病児童自立支援事業」が始まりました。都道府県および中核市は、慢性疾病児童地域支援協議会を開催し、地域の現状と課題の把握、地域資源の把握、支援内容の検討、課題の明確化等を図るよう関係者が協議し、その検討内容を踏まえて自立支援事業を実施していくことになったのです。
 特定非営利活動法人ラ・ファミリエ(理事長:檜垣高史(愛媛大学大学院医学系研究科地域小児・周産期学講座教授))は、20154月より、愛媛県と松山市から委託を受け、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業を開始しました。
 「慢性疾病をのりこえていく子どもたちのジョブプロジェクト」として、自立支援員による相談事業(必須事業)を愛媛大学病院などの医療機関やジョブサロンで行い、任意事業である学習支援や就職支援、きょうだい支援、交流事業なども行っています。医療的ケアが必要な子どもも増えていますが、東予地域にはレスパイト先がほとんどなく、療養生活支援や介護者支援(通院の付き添い支援)などは今後の課題です。当院でも慢性疾病をもつ子どもや成人患者が増えており、今後は相談会を行うなど、自立支援事業の充実を図るとともに、移行期支援にも積極的に取り組む必要があると考えています。


第562回
新居浜小児医会
夏季懇親会
(28年7月13日、於てんふじ


平成28年7月13日(水)、夏季懇親会が「てんふじ」で開かれました。
 出席者は10名でした。(敬称略)
(前列左から)西村幸士、加藤文徳、松浦章雄、大藤佳子、真鍋豊彦
(後列左から)牧野 景、加賀田敬郎、山本浩一、星加 晃、浅見経之

第561回

日時
平成28年4月13日(水)
症例提示 「特異的IgE抗体検査が陰性にもかかわらずアナフィラキシーを来した魚アレルギーの2例」 愛媛県立新居浜病院小児科  西村 幸士
症例提示   「当院における重症心身障害児(者)の診療についてついて」 愛媛県立新居浜病院小児科 大藤 佳子

症例呈示

  特異的IgE抗体検査が陰性にもかかわらずアナフィラキシーを来たした魚アレルギーの2

           愛媛県立新居浜病院小児科 西村幸士

【症例1
 
2歳時にハマチの塩焼きを摂取し全身発赤、腹痛、喘鳴を認めた。26か月時にブリの照り焼きを摂取し全身発赤、喘鳴、意識障害、チアノーゼを認め他院にて点滴加療された。以後ブリは除去していた。平成261月(7歳時)に給食で誤ってブリが出て摂取3時間後に運動し、全身蕁麻疹を呈して入院加療となった。ツナ缶、サケ、マグロ、メルルーサは刺身でも摂取可能であった。血液検査(Immuno CAP)にて各種魚類は全て陰性であり、LSTも陰性であった。同年6月に負荷試験を施行し、ブリ8gで顔面発赤を認めた。以後、本人および母の希望でブリは摂取を希望せず、現在8歳で、以前軽度の症状を認めたカレイ・イワシの負荷試験を計画している。
【症例2
 
11歳男児。ハマチの刺身を摂取し30分後に蕁麻疹と腹痛が出現した。H2711月給食でブリのあんかけを摂取し30分後に全身発赤を呈して当科を受診した。他の魚は以前から普通に摂取できていた。Immuno CAPで各種魚類は全て陰性であった。確定診断のため、負荷試験を予定している。
 以上2例について、魚アレルギーに関する文献的考察を含め報告した。

症例呈示

  当院における重症心身障害児(者)の診療について

           愛媛県立新居浜病院小児科  大藤 佳子

 当院では20154月から主に住友別子病院から移行した患者が増え、定期診療を行っている新居浜市や西条市の重症心身障害児(者)が増加した。特に医療ケアが必要な重症児(者)が増加しているが、重症児(者)や家族が在宅で安心して過ごせるためには、多くの課題がある。
 当院において定期診療している重症児(者)は合計55人で、疾患別には脳性麻痺16人、染色体異常・先天異常15人、筋ジストロフィー6人、心肺停止蘇生後・中途障害5人、重症てんかん5人、感染後脳障害4人、リー脳症2人、レット症候群2人であった。年齢別では、05歳が15人と最も多く、次いで1115歳が12人、16歳~20歳が11人、6歳~10歳が9人で、21歳以上は8人であった。在宅での医療ケアとしては、酸素16人、胃瘻15人、人工呼吸器14人、経鼻チューブ11人、気管切開11人であり、半数以上の重症児(者)は医療ケアが必要な状態で、複数のケアが必要な重症児(者)も多く、家族の負担は大きいと考えられる。人工呼吸器管理が必要な12人のうち、超重症児判定スコアが25点以上の超重症児(者)は9人であった。また、家族が高齢あるいは家族に介護を要する者が他にもいて、在宅で家族がケアすることが難しく、当院に長期入院した後に愛媛医療センターへ入所した重症児(者)は、この1年間では3人であった。
  重症心身障害児(者)の在宅生活を支えるためには、地域の様々な機関が連携する必要があるが、課題のひとつとして、東予地域には訪問診療や訪問看護を行う医療資源が少ないこと、重症児(者)が利用できる短期入所施設がないことが大きい。短期入所については東温市の施設を利用している現状であるが、この1年間で重症児(者)が利用できる放課後デイサービスや生活介護の療育施設は整備が進んでいる。また、肢体不自由児の特別支援学校も開校され、徐々に在宅生活の基盤整備が進んでいる。しかし、短期入所やレスパイト入院ができる施設や外来リハビリの充実、座位保持装置の作成など、重症児(者)医療の充実が求められている現状はかわらない。また、成人期の在宅生活を支える仕組みや災害時における支援体制や関係機関との連携などの課題もある。今後、小児在宅医療の充実を図るために、多職種でのカンファレンスや医療ケア研修、災害時の訓練などを通じて、関係機関とさらなる連携に取り組んでいく必要があると考えている。


第560回
新居浜小児医会
竹本幸司先生送別会
(28年3月16日、於照八

平成28年3月16日(水)、竹本幸司先生の送別会が「照八」で開かれました。
 出席者は13名でした。(敬称略)
(前列左から)真鍋豊彦、大藤佳子、占部智子、竹本幸司、鎌田ゆきえ、村尾紀久子
(後列左から)松浦章雄、塩田康夫、山本浩一、牧野 景、加賀田敬郎、浅見経之、加藤文徳

第559回

日時
平成28年2月10日(水)
症例提示 「脳症との鑑別を要したPanayiotopoulos症候群の2例」 愛媛県立新居浜病院小児科  鎌田ゆきえ
話題提供   「第46回全国学校保健・学校医大会報告と、タバコフリーキッズ@新居浜および第16回全国禁煙推進研究会について」 かとうクリニック 加藤正隆

症例呈示

  脳症との鑑別を要したPanayiotopoulos症候群の2

       愛媛県立新居浜病院小児科 鎌田ゆきえ

 Panayiotopoulos症候群(PS)は幼児期に好発し、自律神経症状を主体とすることを特徴とする。発作は睡眠時に好発し、初期に嘔吐などの自律神経症状が現れ、眼球が偏位し、意識が消失する。その後、片側又は全身の痙攣に移行する、又はictal syncopeと呼ばれる脱力発作を呈する。半数以上が初回発作時に30分以上重積する。しかし予後は良好とされ、成人てんかんに移行せず、77%3年以内に寛解すると言われている。このため初回発作では無投薬で経過観察し、繰り返す場合には抗てんかん薬治療を開始し、中でもバルプロ酸ナトリウム(VPA)、クロバザムが有効とされる。治療抵抗性因子は、初発年齢が低い、発症前から存在する境界領IQ、言語性IQ、動作性IQの格差、周産期の合併症、二次性全般化しやすい発作との報告がある。
 症例1は生来健康な5歳女児。主訴は嘔吐、痙攣、意識障害のため当院を受診した。臨床経過と検査からPSと診断した。初回発作であったため無投薬で経過をみた。以降痙攣はしなかった。
 症例2は発達障害のため当院に定期受診をしていた5歳女児。主訴は嘔吐、意識障害だった。臨床経過と脳波検査からPSと診断した。発達障害と以前から嘔吐のエピソードがあったためVPAの内服を開始した。以降は嘔吐はなくなった。

 PSの発作時は他疾患との鑑別が初期には困難な場合があり、PSを念頭においた対応は過剰な検査や治療を避ける意味からも重要と考えられる。PSで痙攣重積の既往があっても寛解することが多く、投薬による副作用を考え、無投薬で経過をみることが多い。しかし症例によって日常生活への影響が大きい場合には初回からの投薬を考慮する必要がある。

話題提供

  第46回全国学校保健・学校医大会報告と第16回全国禁煙推進研究会のご案内

    かとうクリニック 加藤正隆
 

 愛媛県医師会が主催し、2015125日に松山で開催された第46回全国学校保健・学校医大会で発表する機会を頂き、第1分科会「からだ・こころ」のセッションで、普段の活動の中から「児童生徒の喫煙防止教育と禁煙治療の工夫」という演題を出させて頂きました。喫煙防止教育では、中学1年生の生徒が、「外国のタバコパッケージはリアルな直接的メッセージで、日本のパッケージとは全く違うこと」「北京の越境汚染問題等と考えられがちなPM2.5は、日本ではもっと深刻な屋内の受動喫煙問題であること」に最も高い関心を示したこと、喫煙防止教育の後に「自分はタバコなんか関係ないと思っていましたが、とても関係ないと言っていられないと思いました。今ターゲットにされている中学生であるぼくはタバコを絶対に吸いません。タバコを買おうと思えない状況にすることが大事だと思いました。決してかっこいいことではないということをもっとたくさんの人に知ってほしいです。自分の周りにタバコが無い状況をつくってくれている親にも感謝しないといけないと感じました。」等の感想が寄せられたこと等を報告しました。
 シンポジウムでは素晴らしいご講演が多数ありましたが、愛媛大学大学院医学系研究科分子・機能領域小児科学講座檜垣高史教授が、「学校循環器検診で心停止が予測できるのは半分以下。各学校に1台ずつのAEDでは有効利用は困難。松山の小中学校では34台を設置。児童・生徒を突然死から守るためには、2分以内に心肺蘇生、5分以内にAEDによる除細動が必要。そのためには、往復2分以内にAEDを事故現場へ持ち運べることが必要。」と講演されました。新居浜の小中学校でも早急な対策を求めたいと思います。
 特別講演では、松山赤十字病院胃腸センター長藏原晃一先生が「ピロリ菌検診の学校検診への導入」と題して、「中学高校でのピロリ菌抗体陽性率は約5%。二次検診は医療機関で内視鏡を行い、鏡検法・培養法を実施。除菌療法は薬剤感受性試験結果で抗生剤を選択すればほぼ100%が1回で除菌。胃癌予防に要する一人当たり費用は47万円ですむ。(胃集団検診での胃癌発見一人当たり費用は200万円)課題としては、受診率向上には一次検診は中学生までが望ましいが、除菌療法保険適用は現状では15歳以上である。」と講演されました。新居浜市でもピロリ菌検診の学校検診への早期導入が望まれます。
 第16回全国禁煙推進研究会は、今年529日に新居浜市市民文化センターで、愛媛県医師会久野悟郎会長を大会長、新居浜市医師会中山恵二会長を副大会長として、私が実行委員長を拝命して、毎年世界禁煙デーに因んで開催している「愛媛お笑い健康ライブ」の拡大版として開催されます。テーマは「愛媛国体、東京五輪、日本のスモークフリーを実現しよう!」です。超党派の東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙防止法を実現する議員連盟松沢成文幹事長(元神奈川県知事)、受動喫煙研究の第一人者である産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学研究室大和浩教授にご講演いただいた後、地元の政治家との討論や、熊本市民病院神経内科主席診療部長橋本洋一郎先生・とげぬき地蔵尊高岩寺来馬明規住職(循環器科医)による市民公開講座が予定されています。愛媛の禁煙推進ゆるキャラコンテストの発表、市内の小中学生による禁煙推進作品展と表彰式、毎年恒例のよしもと芸人さんたちによるお笑いライブ、松山在住で西日本唯一のサンドアーティストである田村祐子さんのサンドワークのパフォーマンス等も予定されています。皆様ご家族揃ってのご参加をお願い申し上げます。


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